魅了の魔法をかけられていたせいで、あの日わたくしを捨ててしまった? ……嘘を吐くのはやめていただけますか?

柚木ゆず

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第5話 だから 俯瞰視点(2)

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「…………え?」「………………え?」
「おや? 聞こえませんでしたか? 『嘘かまことか、真偽を確かめてみましょう』とお伝えしたのですよ?」

 たまらず大口を開けてしまった、ブノアとステファン。そんな二人へと丁寧に繰り返し、ヴィクトルは続けます。

うっかり言い忘れてしまっていましたが・・・・・・・・・・・・・・・・・・、過去に魅了にかかっていたか否かを確かめる方法が存在しているのですよ。ですのでそれを用いれば、瞭然となります」
「………………」「………………」
「ちなみにそちらは『魅了撲滅』に必要不可欠なアイテムでしてね、いずれ各国に贈り使用していただけるように、現在様々な国で王による承認を得ていっているのです。そして現在承認を得ている国の中には、ここハーエンムも含まれております」

 製造でき次第すぐに使用を始めてもらい、少しでも早く被害者を0にしたい。結果として祖国が撒いてしまった『悪い種』を、全て取り除きたい。
 そういった理由で『撲滅局』の局員はサンプルを携え、王からの手紙と共に各国を飛び回っていたのでした。

「正確性に関するデータを熟読していただき、その結果太鼓判を捺されたもの。ですのでそちらは、この眼鏡以上の――確固たる証拠なるのですよ」
「……………………」「………………………………」
「あいにくと現在手元にはなく、祖国から取り寄せる必要があります。行きは『鳥』、帰りは早馬を使えば、2日半もあれば届くでしょう。ブノア様、ステファン様、今しばらくお待ちを」
「まっ、待ってくださいっ! それは――」「おっ、お待ちを! それは――」
「おや? なにか困ることでもあるのですか?」
「…………い、いえ。ありま、せん」「…………いえ……。ありませぬ……」

 自分達はさっきまで、堂々と否定をしていました。そのためこう返さざるを得なくなり、2日半後の確認は確定事項となってしまいました。

「では準備が整いましたら、お伺いします。その際は、よろしくお願い致します」
「……しょ、承知いたしました」「……しょ、承知、いたしました……」

 ここでもブノアとステファンは、こう返事をするしかありませんでした。
 けれど実際にチェックが行われたら、嘘が明らかになってしまいます。ナタリーの件も含め、大問題となってしまいます。

 揃って罪人に堕ち、貴族籍どころか自由も奪われてしまいます。

((なんとしても、それは防がないと……!!))((どうにか。せねば……!!))

 そんな悲劇を回避するべく、二人は屋敷に戻るや大急ぎで対策を練り始めて――


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