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しおりを挟むぎゃ、ギャー――――――――――――――!!!!
多分ニニックに成り代わった奴の悪魔――にガン見され、ベロリと舌なめずりをされた瞬間俺は心の中で悲鳴を上げた。てか俺もこれセオドアたちに向けてやったことあるかもぉ!!ごめんねこんなに気持ち悪いんだねぇええ!!
芯にきた恐怖に右の拳に纏っていた光の魔力が霧散する。ダメ。もう、触れることすらしたくないぃいい!!!た、たしゅけて・・・・・・
って、ダメだ!俺の後ろにはシャムルちゃんがいるのだ。絶対に彼は守らないと。
そう思い、俺は先ほど溜めていた魔力をニニックのように玉にして今や悪魔に乗っ取られているニニックに向けて放つ。しかしそれはいとも簡単に弾かれ、悪魔はさも余裕だというように目を細めて手首をぶらぶらと振っていた。
ニニック単体の時よりも魔力量も増えていて、格段に強いのがわかる。正直どれほど強力な魔力を操ることができるのかはわからないが、全力を出せば勝てるだろうとは思う。だが、こいつと俺の勝負だったらいいのだが今俺の後ろにはシャムルちゃんがおり、もしこの部屋にモブ族たちが集まってくれば絶対に不利な状況だ。それにこの更衣室は狭すぎる。逃げる場所がない。
それに、久しぶりに魔法を使い魔力というものに敏感になっているのか、さっきから闇の魔力の気配が複数近づいているのを感じる。
とりあえず、モブ族たちが来る前にここを出なければ――!!
そう思った俺は、光魔法を再び玉状に膨らませそれを余裕そうな笑みを浮かべているニニックに向かって投げつけた。だからそれは無駄だって・・・・・・と馬鹿にしたように掌で弾こうとニニックが魔法を放った瞬間、光の玉は弾けて部屋中に眩い光を飛び散らせた。
「ウガッ!?」
「シャムルっ、今のうちだっ!!」
相手が目を瞑り怯んだ瞬間、シャムルの手を取り走り出した。
後ろを確認する間もなく、全力で走る。
確かこの学園の南側に馬屋があったはずと、走るより馬で逃げた方が良いと思った俺は、学園内を走りながら南側へ向かった。走りながら連絡機で緊急通報をする。俺の居場所などは連絡機で特定できるため、すぐに隊員が駆けつけてくれるだろう。それにさっきは突っ込む間もなかったが、ニニックの攻撃でビビって逃げていった奴たちも本部に連絡しているだろうから、応援は早いだろうと期待を持つ。
申し訳ないが一刻を争うため馬屋の鍵を壊し、一頭拝借することにした。見たくはないが、絶対にキレながら追っかけてきているのがわかるため、もう全力で逃げる。
実はマジで乗馬は初体験。そんなこと知るか!とシャムルを先に乗らせ、その後ろに跨がり、すぐに踵で馬の尻を叩くと一声鳴いて走り出した。
ごめんね馬ちゃん・・・お尻蹴っちゃって・・・・・・!!後で仕返してもいいよ・・・・・・って、やられたら俺死ぬから仕返しはニニックさんにお願いします。というか、今の悪魔に乗っ取られているニニックって、何か見たことあるんだよな。・・・・・・
あっ、そうだ。漫画に出てきた『モブキング』じゃん!
そうか、モブキングが最終形態だったんだな・・・・・・。ニニック、モブキングになっちゃったんだ。
俺がならなくて良かったぁ~~・・・・・・!!!
ふぅ、と安堵の溜息を吐くが、初めて馬に乗る俺の下半身はバラバラになりそうな程の衝撃を受けている。それに、無視しているが後ろからビュンビュン飛んでくる闇魔法も怖いね。こんっなに激しいんだね、馬の上って・・・・・・。騎乗位に慣れてるアカとかは上手に乗りこなせそうだけど・・・・・・っと、ダメダメ変なことを考えちゃ。集中しろ!っといいつつも、それにしてもアカは静かだなー。俺のピンチだというのに。俺の中で沈黙したまんまだ。俺の中の、弱々しい闇の魔力に若干の不安が立ち上る。
う~~ん、結構意識を他のことに向けていたけど、背後はどのような状況なのでしょうか・・・・・・。チラリと後ろを覗き、そのまますぐに前に顔を向ける。
うん。ヤバいね。
学園から走り出した馬だが、さすがに市街を走り回ったら市民の迷惑になるし、危険行為だ。それに後を追ってくるモブ族たちによる被害も起こるかもしれない。だから市街地への道ではなく、学園の少し行った先にある、侵入禁止の森の中へと馬を走らせたのだ。
禁止を示す古い門を吹き飛ばし、森に向かって一直線。俺と同じく乗馬初体験のシャムルちゃんはあわあわとしていたが、俺がシャムルちゃんを抱きしめる形で手綱を握っているためそこらへんは大丈夫!日中なのに薄暗い林の中を走り抜け、どんどん森の奥深くへと向かっていく。この先がどこに繋がっているのか、何故この森が禁じられているのかはわからないが、今はそんなことはどうでもよかった。
さて、後ろからはニニックを先頭に大人数のモブたちが俺たちと同様に馬に乗って追ってきている。クソっ!お前らが乗ったら馬が潰れちゃうだろうがっっ!!と叱ってやりたいところだが、彼らが放つ魔法が木々にぶつかり倒れてくるのを避けながら走るため口を開いたら舌を噛んでしまいそうだ。
ヤバいなこの状況・・・・・・と汗がたらりと額を流れた時、モブたちの後ろの方からボンッという音がした。目をこらしてみると、それは捕縛隊たちが使う硝煙だった。薄い赤色の煙が木々の隙間から見える空に淡く広がる。するとモブたちの後ろに数人の馬に乗った男たちが駆けてくるのが目に見えた。モブに対して攻撃していることから、応援が来てくれたのだろう。
まだまだ距離は遠いが、有り難いと思い、とにかく今は逃げよう、と思った。
「ヒェッヒェッヒェッ・・・。オレから逃げられるかよぉ。あぁ甘ぇ匂いがぷんぷんするぜぇ。そこのちっこい坊主からかぁ?美味そうだぁ・・・・・・。いいかぁお前ら、絶対に逃がすんじゃねぇ!!あいつを仕留めたら、お前らも好きにしていいぞぉ!!」
よく舌を噛まずにいられるものだと関心しつつ、奴の発した言葉に気分を害す。奴の言葉に身体を震わせたシャムルの耳に顔を寄せ、『大丈夫だ』と伝えると、怖いだろうに力強く頷いてくれた。
前の方に淡い光が見え、もう少しで林を抜けることがわかる。
さぁどんな場所に繋がっているのか、そう思って前を見据えていると、林を抜けたところで馬が急に足を止めた。
おっとっとっ!!と焦りながら必死に馬にしがみつく。
「一体どうしたんだよっ!?って・・・・・・え、崖なの・・・・・・?」
俺たちの前には、途中で途切れた道――つまり、行き止まりだったのだ。
「ヒッヒッヒッヒッ!!行き止まりだぁ。さぁ、観念しな!!」
そう言って気持ち悪い顔が近づいてくる。
今更だが、魔力は玉以外にも自分の好きな形にできる。でも大半は作るのが楽だし命中率も良いので玉を作るが、俺は奴を睨み付け手の平から魔力をひり出しそれを弓の形状にした。
片手で光で作られた弓を持ち、もう片方の手で光の矢を形成する。
どうでもいい情報だと思って言ってなかったけどっ、俺っ、前世高校生だった頃弓道部に憧れてたんじゃぁあああ!!!(注意:憧れてただけでやってはいない)
そう心の中で叫び、全力で引いた矢をニニックの心臓に向かって放つ。そのとき、何か俺の中の大事な物がごぼりとなくなったかのような、そんな感覚に捕らわれくらりと目眩が起こった。
そして矢が奴に向かって放たれたと同時に、奴の放った魔法が俺たちの乗っている馬の足に命中し、それに驚いた馬が鳴きながら前足を上げたことで、俺とシャムルは空中に投げ出された。
俺たちの後ろは崖。
俺たちは、崖の下に向かってその身体を放り出されたのだ。
崖の上では胸を押さえているモブキングの姿と、追いついたのだろう、セオドアとヴェータの姿もあり、彼らは信じられないような顔をしてこちらを凝視している。
彼らの姿が見えなくなり、その代わりに『せんせいーーーー!!!』『シャムルーーーー!!!』という二人の叫びが聞こえた。
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