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89 強い男
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「おー……思ったより本格派だ」
「本格派?」
「いかにも神社ってこと! なんか雰囲気あるじゃん?」
「本物の神社だからな……」
知ってるわ! その小馬鹿にした目をやめろ。
あるだろ、なんか重々しい雰囲気の神社と、そうでもない感じのトコ。
なんて、いかにも神社を前にしたかのように言っているけれど、まだ車中。
窓の外は都会の車道から一変、畑なのかそうでないのかよく分からない緑と茶色の景色になっている。
1時間やそこら走るだけで、都会からこんなネイチャーな雰囲気になるのが驚きだ。
そして、窓に貼りつくようにして見ている、こんもりした濃い緑。多分、この中に神社があるんだろう。ほら、いかにもご利益がありそうな気がしてくる。
ばりばりばり、やかましい音をたてる狭い砂利道に入ってほどなく、簡素な駐車場に車を停めた。それなりに広い駐車場に、ぽつんと一台。
「着いた! なんか、すげえ遠くまで来たような気がする!」
サイドブレーキを引くのももどかしく、扉を開けて滑るように外へ出ると、冷たい空気の中でうんと伸びをした。
ちょうどよく腹も落ち着いて、冷えた空気に眠気も余計な考えも吹っ飛んで行くよう。吐いた息が、空の中に白く見えた。
昼を過ぎたばかりだというのに、気の早い冬空は既に夕方の準備をしている気がする。
じゃ、じゃ、と鳴った音に振り返って、寒空も似合う男を見上げた。
「なあ、『出かけた』って感じ、しねえ?」
「ああ」
すげえ言わせた感あるけど、いいだろ。
にっと笑うと、釣られるように朝霧の顔が少し緩む。
俺は慌てて視線を逸らして、賑やかな音をさせながら参道の方へ向かった。
黒々した低い段差の石段が半ば苔むして、両脇には赤い献灯篭が並んでいる。
「本格派、か」
ゆったりした足音が隣に並んで、笑みを含んだ声が降って来た。
「そう。本格派、だろ?」
「ああ」
視線を交わすと、なんとなく口を噤んで石段を登っていく。
雨は降っていなかったはずなのに、しっとり水気を含んだ空間が、確かに水の神様がいるんだって気にさせてくる。
朝霧の長い脚が、悠々と幅の広い石段を上る。次の段に掛けた足が止まって、その間に俺の足がひとつ段を上る。
何段上っても、朝霧の気配が隣にある。
俺は少し笑って、石段の割れ目に生える草を見つめながら上った。
「あ……これ、手水? なんかお作法とかあったよな?」
「そこ、書いてあるぞ」
「本当だ! 朝霧、撮ってやるよ」
「俺が撮る」
石段を上り終えた先、静かに水を湛える手水舎。
場違いな押し問答の末、交代で撮るという建前にしてカメラを向けた。
真剣に作法を読みながら、大きな手が細い柄に添えられる。伏せた視線の先で、つうと流れた水が、朝霧の手を伝って石の上に跳ねた。
……なんか、撮っちゃいけないもののような気がしてくる。凛とした静かな空気の中に感じる、禁欲的な雰囲気。朝霧にあまりによく似合って。
手順を終えた朝霧が濡れた手の行く先を考えているうちに、俺もさっさと一礼してひしゃくを取った。
少し袖をまくると、途端にふるりと震えが来る。
「つめた……」
石段を上って少し気温に馴染んでいた体が、冷えた水に負けて首を竦めた。
シャッター音が聞こえて顔を上げると、もう一度。
撮られんのは、やっぱ慣れない。どんな顔をしていいか分からない仏頂面で、スマホを構える朝霧を見上げた。
しっかりまくりあげられたままの袖が、見ているだけで寒々しい。
「お前、寒くないの? 水、冷たいだろ」
「冷たい水は、慣れてる」
そういうもん……か? 多分、そんなのお前だけじゃねえ?
冷え切った指先を拭って、じんと赤く染まった指に息を吐きかけつつ、奥に見える拝殿に足を向けた。
ふいに、ぐっと腕を引かれたかと思うと、朝霧のデカい両手が俺の手を包み込んだ。
「……何やってんだよ」
「寒いんだろ」
「あのな、お前の手も今あったかくねえから」
「……じきに温かくなる」
「その頃には俺の手もあったかいわ! ほら、離せ」
ばーか、と笑って俺の手を取り返すと、むっと唇を引き結んだ朝霧が、ぐっぐっと何度か手を握ったり開いたりしている。
「俺の方が早い」
「そんな簡単にあったかくなるか――うわ、マジで?!」
再び持って行かれた右手が、温かい。
得意げな顔が可笑しくて、つい毒気を抜かれてしまう。
「すげー……けど、いらねえんだって! 離せ離せ」
不服そうな朝霧の手を振り落として、人がいなくて本当に良かったと思う。お前はもう少し、人との距離感を学ぶべきだと思うぞ。
ほのかに温かくなった右手をポケットに突っ込んで、朝霧に肩をぶつけた。
「ほら、早く行けよ。水の神様だぞ、何てお願いするんだ?」
「さあ……」
「さあって何だよ、タイムが早くなりますように、とか、メダル取れますように、とかじゃねえの?」
目指せ金メダル! 的な何かじゃねえのかな? 安直な俺はきっとそうだと思っていたのだけど。
「タイムを速くするのも、メダルを獲るのも、俺だ」
「え? そりゃそうだけど、神頼みってそういうもんじゃねえ?」
「人に頼む意味が分からん」
「人じゃねえよ?! 神様だろ!」
腑に落ちない顔をしている朝霧の方が、よっぽど分かんねえよ!
普通、そういうもんなの! そんな深く考えたことねえよ!
憮然とした顔を見上げて、呆れと共に何か言おうとして――
「それでタイムが上がったら、腹が立つ」
息が、止まった。
精悍な顔。
微かに寄せた眉根と、結んだ唇。
強い意思をはらんだ瞳が、まっすぐ拝殿を見ていた。
ああ、きっと神様は、この男が好きだ。
「本格派?」
「いかにも神社ってこと! なんか雰囲気あるじゃん?」
「本物の神社だからな……」
知ってるわ! その小馬鹿にした目をやめろ。
あるだろ、なんか重々しい雰囲気の神社と、そうでもない感じのトコ。
なんて、いかにも神社を前にしたかのように言っているけれど、まだ車中。
窓の外は都会の車道から一変、畑なのかそうでないのかよく分からない緑と茶色の景色になっている。
1時間やそこら走るだけで、都会からこんなネイチャーな雰囲気になるのが驚きだ。
そして、窓に貼りつくようにして見ている、こんもりした濃い緑。多分、この中に神社があるんだろう。ほら、いかにもご利益がありそうな気がしてくる。
ばりばりばり、やかましい音をたてる狭い砂利道に入ってほどなく、簡素な駐車場に車を停めた。それなりに広い駐車場に、ぽつんと一台。
「着いた! なんか、すげえ遠くまで来たような気がする!」
サイドブレーキを引くのももどかしく、扉を開けて滑るように外へ出ると、冷たい空気の中でうんと伸びをした。
ちょうどよく腹も落ち着いて、冷えた空気に眠気も余計な考えも吹っ飛んで行くよう。吐いた息が、空の中に白く見えた。
昼を過ぎたばかりだというのに、気の早い冬空は既に夕方の準備をしている気がする。
じゃ、じゃ、と鳴った音に振り返って、寒空も似合う男を見上げた。
「なあ、『出かけた』って感じ、しねえ?」
「ああ」
すげえ言わせた感あるけど、いいだろ。
にっと笑うと、釣られるように朝霧の顔が少し緩む。
俺は慌てて視線を逸らして、賑やかな音をさせながら参道の方へ向かった。
黒々した低い段差の石段が半ば苔むして、両脇には赤い献灯篭が並んでいる。
「本格派、か」
ゆったりした足音が隣に並んで、笑みを含んだ声が降って来た。
「そう。本格派、だろ?」
「ああ」
視線を交わすと、なんとなく口を噤んで石段を登っていく。
雨は降っていなかったはずなのに、しっとり水気を含んだ空間が、確かに水の神様がいるんだって気にさせてくる。
朝霧の長い脚が、悠々と幅の広い石段を上る。次の段に掛けた足が止まって、その間に俺の足がひとつ段を上る。
何段上っても、朝霧の気配が隣にある。
俺は少し笑って、石段の割れ目に生える草を見つめながら上った。
「あ……これ、手水? なんかお作法とかあったよな?」
「そこ、書いてあるぞ」
「本当だ! 朝霧、撮ってやるよ」
「俺が撮る」
石段を上り終えた先、静かに水を湛える手水舎。
場違いな押し問答の末、交代で撮るという建前にしてカメラを向けた。
真剣に作法を読みながら、大きな手が細い柄に添えられる。伏せた視線の先で、つうと流れた水が、朝霧の手を伝って石の上に跳ねた。
……なんか、撮っちゃいけないもののような気がしてくる。凛とした静かな空気の中に感じる、禁欲的な雰囲気。朝霧にあまりによく似合って。
手順を終えた朝霧が濡れた手の行く先を考えているうちに、俺もさっさと一礼してひしゃくを取った。
少し袖をまくると、途端にふるりと震えが来る。
「つめた……」
石段を上って少し気温に馴染んでいた体が、冷えた水に負けて首を竦めた。
シャッター音が聞こえて顔を上げると、もう一度。
撮られんのは、やっぱ慣れない。どんな顔をしていいか分からない仏頂面で、スマホを構える朝霧を見上げた。
しっかりまくりあげられたままの袖が、見ているだけで寒々しい。
「お前、寒くないの? 水、冷たいだろ」
「冷たい水は、慣れてる」
そういうもん……か? 多分、そんなのお前だけじゃねえ?
冷え切った指先を拭って、じんと赤く染まった指に息を吐きかけつつ、奥に見える拝殿に足を向けた。
ふいに、ぐっと腕を引かれたかと思うと、朝霧のデカい両手が俺の手を包み込んだ。
「……何やってんだよ」
「寒いんだろ」
「あのな、お前の手も今あったかくねえから」
「……じきに温かくなる」
「その頃には俺の手もあったかいわ! ほら、離せ」
ばーか、と笑って俺の手を取り返すと、むっと唇を引き結んだ朝霧が、ぐっぐっと何度か手を握ったり開いたりしている。
「俺の方が早い」
「そんな簡単にあったかくなるか――うわ、マジで?!」
再び持って行かれた右手が、温かい。
得意げな顔が可笑しくて、つい毒気を抜かれてしまう。
「すげー……けど、いらねえんだって! 離せ離せ」
不服そうな朝霧の手を振り落として、人がいなくて本当に良かったと思う。お前はもう少し、人との距離感を学ぶべきだと思うぞ。
ほのかに温かくなった右手をポケットに突っ込んで、朝霧に肩をぶつけた。
「ほら、早く行けよ。水の神様だぞ、何てお願いするんだ?」
「さあ……」
「さあって何だよ、タイムが早くなりますように、とか、メダル取れますように、とかじゃねえの?」
目指せ金メダル! 的な何かじゃねえのかな? 安直な俺はきっとそうだと思っていたのだけど。
「タイムを速くするのも、メダルを獲るのも、俺だ」
「え? そりゃそうだけど、神頼みってそういうもんじゃねえ?」
「人に頼む意味が分からん」
「人じゃねえよ?! 神様だろ!」
腑に落ちない顔をしている朝霧の方が、よっぽど分かんねえよ!
普通、そういうもんなの! そんな深く考えたことねえよ!
憮然とした顔を見上げて、呆れと共に何か言おうとして――
「それでタイムが上がったら、腹が立つ」
息が、止まった。
精悍な顔。
微かに寄せた眉根と、結んだ唇。
強い意思をはらんだ瞳が、まっすぐ拝殿を見ていた。
ああ、きっと神様は、この男が好きだ。
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