今宵、薔薇の園で

天海月

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34.それは遠くへ

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シャーロットはキースからの手紙を受け取った。

内容を読むと、彼は色々誤解をしていると感じたが、今となってはもう訂正する必要も無いだろうと彼女は思った。

彼が自分から離れていくのは寂しかったし、自分の気持ちにも整理をつけ切れた訳でもなかったが、こうなる事は自分の意図した結果なのだから、これで良かったのだ、そうシャーロットは自身に言い聞かせた。

これで、彼は自由だ・・・。





キースから書類を受け取った上司のレオナルドは、素っ頓狂な声をあげた。

「異動願い?!」

「はい」

「しかも、騎士団って・・・お前、あれほど遠征が嫌だとか何とか言ってたのに、急にどうしたんだ」

「敢えて内勤にこだわる理由も、もう無くなりましたから・・・」

キースは無表情で呟いた。

「悩み事なら相談に乗るぞ?」


ぱっと笑顔になったキースは言った。

「そんなもの何もありませんよ。ただ、あなたの忠告を聞いて派手な仕事に鞍替えしてみるのも悪くないと思っただけですから」

無理に明るさを装っているような彼を見て、レオナルドは心配になったが、何も返せなかった。





以前から勧誘を受けていた事もあり、彼の騎士団への異動願いは直ぐに受理された。

騎士になったキースは、遠征部隊を希望した。

辺境を移動しながら魔獣と戦うのが主な任務だった。


王都を離れた彼は身を削るように働き、数々の武勲を挙げた。

元々、剣の腕は優れていたキースだが、それに魔術を併用することで格段に能力を底上げしていた。

魔力は使い過ぎればその生命を減ずるというが、後先考えず先陣を切り、魔術を連発する彼の戦い方は捨て身に近かった。

まるでいつ終わっても構わないとでも言うような。

彼の群青色の瞳はいつもどこか遠くを見ていて、どこか死に場所を探しているようだった。

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