29 / 54
4 優しくしなくていい
第六話
しおりを挟む
言葉は返ってこなかった。
代わりにシャワーの中に飛び込んできた來が聖利の身体を抱き寄せる。降りそそぐ湯など構っている暇はないとばかりに強引に口づけられた。
「うっ、んんっ」
最初から奥深くまで差し入れられる舌は熱く、生物のようにうねって聖利を蹂躙する。内側がじんと滲むような感覚。いきり立ち、限界の近かったペニスが震え、キスだけでびゅくびゅくと白濁を巻き散らした。
「甘ったるい匂いさせやがって。鍵くらいかけろ、この馬鹿」
怒りながらも聖利の肌を指と舌でたどる來。耳朶を噛まれて聖利はびくんと身体を跳ね上げさせた。
「匂いなんか……! 抑制剤は効いてる……」
「じゃあ、なんで俺にはここがわかった? おまえの匂いをたどってここに来たんだぞ?」
來が狂おしく唸り、聖利の首筋をべろりと舐め上げた。噛みついてしまいたいという情念が伝わってくる。吐精したばかりなのに、來の香りに反応して聖利の中心はすで硬く勃起していた。隠したいけれど、一糸まとわぬ状態では隠すことができない。
「聖利だって反応してる。欲しくて欲しくてたまらないって身体は言ってんじゃねえか」
「これは……!」
「誰のこと考えて抜いてた? なあ。聖利は誰を想像してするんだ? こんなに大きくして」
來の手が聖利の腹をたどり下腹部の柔らかな繁みに到達する。薄い毛の流れをなぞり、そのままペニスの先端に指先が触れた。
「あっ! ああっ!」
激しくのけぞり叫ぶ聖利を逃すまいと來が抱きとめた。さらに大きく骨ばった手でペニスを包み込み、上下に扱きだす。
「ああっ、いやっ、いやだ! 來っ!」
「なあ、誰のこと考えて擦んの? あの顔の綺麗な生徒会長か? それとも男っぽい高坂寮長か? おまえの好みはどのアルファだよ。誰に抱かれることを想像してんの?」
「やめ、……何も、そんなことっ!」
「教えろよ、聖利。なあ、ほら、そいつの名前呼んでいいから。目をつぶって、そいつにされてると思えよ」
意地悪な言葉に涙が滲んできた。追い詰められ、勝手にどんどん反応していく身体。何も知らないのに、聖利を貶める來。ひどい。こんな男のことをどうして好きなんだろう。
「聖利、言えよ。誰のこと考えてた?」
「らい……」
意趣返しだ。こうなったらとことんやってやろう。涙の滲む目で聖利は來を見つめる。
「來のこと、考えて……してた」
來が動きを止める。切れ長の美しい瞳が見開かれ、口元も呆けたように薄く開いた。
次の瞬間、來の顔がぶわっと赤くなった。見たことのない表情は、あきらかな狼狽。
聖利は潤んだ目を細め、いやいやするように首を振って訴える。
「意地悪だ、來……。僕は、おまえにしか触れられたことがない……。それを思いだしてしまうのはおかしいか?」
「いや……」
焦ればいい。気まずくなればいい。そして、この一撃で正気に戻ってほしい。
本格的なヒートではないのだ。來はきっと正常な判断ができる。好きでもないオメガと、こんなことをするのは違うと気づける。
來の胸をどんと押す。涙がこぼれた。
「僕だってオメガである前に普通の男だ。処理くらいするし、おまえに迷惑はかけてない。わかったら行ってくれ」
しかし、來は動かない。シャワールームから押し出そうとさらに強く胸を押すと、來が聖利の腕を掴んだ。開いた片手でシャワーの湯を止め、聖利をバスルームの壁に追い詰める。そして、再び抱きすくめた。
「來!」
「……処理、手伝ってやる」
耳元に響く低くかすれた声。來がどんな顔をしているのかわからない。
代わりにシャワーの中に飛び込んできた來が聖利の身体を抱き寄せる。降りそそぐ湯など構っている暇はないとばかりに強引に口づけられた。
「うっ、んんっ」
最初から奥深くまで差し入れられる舌は熱く、生物のようにうねって聖利を蹂躙する。内側がじんと滲むような感覚。いきり立ち、限界の近かったペニスが震え、キスだけでびゅくびゅくと白濁を巻き散らした。
「甘ったるい匂いさせやがって。鍵くらいかけろ、この馬鹿」
怒りながらも聖利の肌を指と舌でたどる來。耳朶を噛まれて聖利はびくんと身体を跳ね上げさせた。
「匂いなんか……! 抑制剤は効いてる……」
「じゃあ、なんで俺にはここがわかった? おまえの匂いをたどってここに来たんだぞ?」
來が狂おしく唸り、聖利の首筋をべろりと舐め上げた。噛みついてしまいたいという情念が伝わってくる。吐精したばかりなのに、來の香りに反応して聖利の中心はすで硬く勃起していた。隠したいけれど、一糸まとわぬ状態では隠すことができない。
「聖利だって反応してる。欲しくて欲しくてたまらないって身体は言ってんじゃねえか」
「これは……!」
「誰のこと考えて抜いてた? なあ。聖利は誰を想像してするんだ? こんなに大きくして」
來の手が聖利の腹をたどり下腹部の柔らかな繁みに到達する。薄い毛の流れをなぞり、そのままペニスの先端に指先が触れた。
「あっ! ああっ!」
激しくのけぞり叫ぶ聖利を逃すまいと來が抱きとめた。さらに大きく骨ばった手でペニスを包み込み、上下に扱きだす。
「ああっ、いやっ、いやだ! 來っ!」
「なあ、誰のこと考えて擦んの? あの顔の綺麗な生徒会長か? それとも男っぽい高坂寮長か? おまえの好みはどのアルファだよ。誰に抱かれることを想像してんの?」
「やめ、……何も、そんなことっ!」
「教えろよ、聖利。なあ、ほら、そいつの名前呼んでいいから。目をつぶって、そいつにされてると思えよ」
意地悪な言葉に涙が滲んできた。追い詰められ、勝手にどんどん反応していく身体。何も知らないのに、聖利を貶める來。ひどい。こんな男のことをどうして好きなんだろう。
「聖利、言えよ。誰のこと考えてた?」
「らい……」
意趣返しだ。こうなったらとことんやってやろう。涙の滲む目で聖利は來を見つめる。
「來のこと、考えて……してた」
來が動きを止める。切れ長の美しい瞳が見開かれ、口元も呆けたように薄く開いた。
次の瞬間、來の顔がぶわっと赤くなった。見たことのない表情は、あきらかな狼狽。
聖利は潤んだ目を細め、いやいやするように首を振って訴える。
「意地悪だ、來……。僕は、おまえにしか触れられたことがない……。それを思いだしてしまうのはおかしいか?」
「いや……」
焦ればいい。気まずくなればいい。そして、この一撃で正気に戻ってほしい。
本格的なヒートではないのだ。來はきっと正常な判断ができる。好きでもないオメガと、こんなことをするのは違うと気づける。
來の胸をどんと押す。涙がこぼれた。
「僕だってオメガである前に普通の男だ。処理くらいするし、おまえに迷惑はかけてない。わかったら行ってくれ」
しかし、來は動かない。シャワールームから押し出そうとさらに強く胸を押すと、來が聖利の腕を掴んだ。開いた片手でシャワーの湯を止め、聖利をバスルームの壁に追い詰める。そして、再び抱きすくめた。
「來!」
「……処理、手伝ってやる」
耳元に響く低くかすれた声。來がどんな顔をしているのかわからない。
192
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
王道学園に通っています。
オトバタケ
BL
人里離れた山の中にある城のような建物。そこは、選ばれし者だけが入学を許される全寮制の男子校だった。
全寮制男子校を舞台に繰り広げられる様々な恋愛模様を描いた短編集。
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
【本編完結】完璧アルファの寮長が、僕に本気でパートナー申請なんてするわけない
中村梅雨(ナカムラツユ)
BL
海軍士官を目指す志高き若者たちが集う、王立海軍大学。エリートが集まり日々切磋琢磨するこの全寮制の学舎には、オメガ候補生のヒート管理のため“登録パートナー”による処理行為を認めるという、通称『登録済みパートナー制度』が存在した。
二年生になったばかりのオメガ候補生:リース・ハーストは、この大学の中で唯一誰ともパートナー契約を結ばなかったオメガとして孤独に過ごしてきた。しかしある日届いた申請書の相手は、完璧な上級生アルファ:アーサー・ケイン。絶対にパートナーなんて作るものかと思っていたのに、気付いたら承認してしまっていて……??制度と欲望に揺れる二人の距離は、じりじりと変わっていく──。
夢を追う若者たちが織り成す、青春ラブストーリー。
真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉
小池 月
BL
☆ファッティ高校生男子<酒井俊>×几帳面しっかり者高校男子<風見凛太朗>のダイエットBL☆
晴青高校二年五組の風見凛太朗は、初めて任された学級委員の仕事を責任を持ってこなすために日々頑張っている。
そんなある日、ホームルームで「若者のメタボ」を注意喚起するプリントが配られた。するとクラス内に「これって酒井の事じゃん」と嘲笑が起きる。
クラスで一番のメタボ男子(ファッティ男子)である酒井俊は気にした風でもないが、これがイジメに発展するのではないかと心配する凛太朗は、彼のダイエットを手伝う決意をする。だが、どうやら酒井が太っているのには事情がありーー。
高校生活の貴重なひと時の中に、自分を変える出会いがある。輝く高校青春BL☆
青春BLカップ参加作品です!ぜひお読みくださいませ(^^♪
お気に入り登録・感想・イイネ・投票(BETボタンをポチ)などの応援をいただけると大変嬉しいです。
9/7番外編完結しました☆
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる