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生産国アムス編 火竜との出会い

空腹な出会い

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 フォージングを出発したタクマ達は順調に次の町を目指して進んでいた。通常の移動方法とは違いまっすぐ行けばもっと早く移動できるのだろうが、ヴァイス達は膨大な体力とスピードがあるし、タクマもバイクと言う反則的な移動方法がある為、寄り道しながらでも早い移動速度を維持していた。フォージングから次の町までは途中に目ぼしい町がない上に、相当な距離があったので、タクマ達は野営をしつつ景色の良い場所に寄りながら進んで行く。
 今タクマ達が野営をしている場所は、フォージングから4日ほど移動した場所なのだが、美しい山々に囲まれた渓谷だ。テントとテーブルを準備した後は、ヴァイス達は狩りに出掛け、タクマは皆の為にせっせと食事の準備を行なっていた。

「さて、こんなもんかな?」

 育ち盛りのヴァイス達の為に沢山の食事を作ったタクマは椅子に座って一服していた。一息ついたところで、先ほどからこちらを窺っている気配を感じていた。

(さて、さっきから離れた所からこっちを見ているが、何か用なのか?気配に敵意や殺気はないから危険ではないんだけど、見られているのは好ましくないな。)
(マスター、とりあえず捕獲してみたらどうでしょうか?)
(そうだな、そうしようか。)

 タクマは立ちあがり、こちらを窺っている気配の真後ろへ空間跳躍を行い、気配の本人に話しかけた。

「何か用かな?」
「!!」

 その気配はタクマが消えたと思ったら、真後ろに居て話しかけられた為飛び上がって驚いていた。

「キュル!?」

 その気配はファンタジーのお約束であるドラゴンだった。まだ幼いらしく体長は50cmに満たないくらいだった。

(まだちっちゃいのに一人?でこんなところに居るなんて迷子なのか?)
(分かりませんが、小さくてもドラゴンですよ?少しは警戒してくださいね。)
(ああ、すまん。そうだな。)

 ナビに警戒しておけと注意されたタクマは、警戒しつつ話しかけてみる。

「どうした?俺らの事を窺っていただろう?何か用があるんじゃないのか?」
「キュル・・・キュキュ。」
「うん。分からんな。」

 意思の疎通に苦労していると、ドラゴンのお腹から可愛い音が響いた。

「ああ・・・。腹が減っているのか。」
(どうする?こいつ腹が減ってるだけの様だぞ?)
(そうですね。危険はないようですね。どうしてここに居るか分かりませんが、とりあえずは食事を与えてみたらどうでしょうか?)
(そうだな。危険もないみたいだし、誘ってみるか。)
「なあ?腹が減っているなら来るか?」
「キュル?キュー!」

 どうやら、本当?食べる!的な返事が来たのでドラゴンへ両手を差し出してみると、大人しく抱かせてくれた。感触は表面は固く丈夫な鱗に覆われているが中身が柔らかいので気持ち良い触り心地だった。抱き上げたまま野営地へ戻ると、ヴァイス達が獲物をゲットして戻ってきていた。ヴァイス達にクリアを掛けてやった後に、もしかしたらと思ってヴァイス達にドラゴンと話して貰う事にした。

「スマンがこの子が一人?でこっちを見ていて腹が減っていそうだから連れて来たんだが、話が通じない。ちょっと話を聞いてみてくれないか?」
「アウン!(わかったー!)」「ミアー。(話してみるー。)」
「ピュイー。(お任せください。)」「キキ!(任せてー!)」

 ドラゴンをヴァイス達に任せたタクマはドラゴンの分もテーブルに用意していると、話が終わったらしく、ヴァイスが代表で報告に来てくれた。

「アウン。アン、アン。(父ちゃん、迷子だってー。何か獣追いかけてたら、見た事ないとこに来ちゃってお腹減ってたんだって。)」
「やっぱり迷子か。で、あの子の親と住んでいる所は聞けたか?」
「アン、アウン。(えっとねー、母ちゃんと一緒に住んでて火の山に住んでたんだって。)」
「火の山?火山か何かか?」
「アウン。(何か、赤い水が燃えてるとこだって。)」
「そうか。大体わかった。先ずは、みんなを呼んでご飯にしよう。」

 ヴァイスがみんなを呼びに行き、戻って来ると食事が始まった。ドラゴンの子は余程おなかが空いていたらしく貪る様に食事を食べていた。一時間ほどで食事も終わり、ヴァイス達はいつも通り食後は寝てしまうので、アフダルに通訳をして貰いながらドラゴンの子と話をしていた。

「なるほど。狩りの練習をしていたら、行った事のない場所まで追って来たのか。」
「キュル・・・。」
「ピュイー。(迷子になってから食事も摂れなくて、困っていたら人間がご飯を作っていたので見入ってしまった様です。)」
「なるほど。とりあえず、親は心配しているだろうし連れてってやるか。」
「キュル?」
「ピュイー。(帰れるの?だそうです。)」
 
 タクマはドラゴンの子を安心させてやるように撫でながら大丈夫だと言ってやると、ドラゴンの子は張り詰めた糸が切れた様に泣き出してしまった。ドラゴンの子を抱き上げてあやしてやりながらスマホを起動した。火山があり、そこに大きな気配が無いか検索すると、一件だけヒットした。そこは、タクマ達の移動速度でも5日ほど掛かる場所にあった。大きな気配は親なのであろう、火山の周辺をひっきりなしに飛んで子供を探しているようだ。

(あー、これは相当心配しているな。どうするかな。このまま連れて行ったら戦闘になりかねん。)
(でしたら、あの方に力を貸して貰ったらどうでしょうか?)
(あの方?・・・ああ、エネルか。)

 そういえばエネルが居る事を思い出したタクマは早速エネルに念話を送ってみる。

<エネル、エネル聞こえるか?>
<おお、タクマか?どうしたのだ?>
<上手くいったようだな。実はドラゴンの子が迷子になっていて保護したんだが、親を検索したらかなり探し回っている様なんだ。このまま連れて行くと誤解を受けて戦闘になる可能性がある。何とかならんか?>
<ちょっと待て。・・・・そのドラゴンは火山に住んでいる者か?>
<わかるのか?>
<ああ、人里に近い所に住んでいるドラゴンに関しては把握している。お主らが居る場所から一番近くにいるドラゴンは火山に住み着いている者しかおらん。では此方から連絡をしておくので、送って行ってくれるか?>
<ああ、余裕を見て6日くらいで送っていけるからそう伝えて貰えるか?>

 伝言を快く引き受けてくれたエネルはそのまま念話を切った。

「さて、お前の住んでいる所は分かったから、家まで一緒に行こう。」
「キュル!」
「ピュイー。(ありがとうだそうです。)」

 ドラゴンの子は家に帰れると分かり、嬉しそうな声を上げて喜んでいた。明日からドラゴンの子を送る為に移動を開始するので早めに休むことにしたタクマ達は、アフダルとドラゴンの子と共にテントへと入るのだった。
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