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服飾の町ファッシー

忠告

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 翌日、いつも通り早く起きたタクマ達は庭で朝食を食べていた。ヴァイス達は部屋で大人しくさせるのはかわいそうなので外で食べる事にした。外からは中の様子が分からないイメージで遮音と結界を掛けてあるので、賑やかに食事をしていた。すると、商業ギルドからこちらへ移動する気配があったので、タクマは門の方へ移動した。

「おはようございます。サトウ様。」
「こんな早くに何かな?」
「サトウ様にお客様が来ております。住んでる場所が分からなかった為ギルドを通してきたようです。」
「家を借りるのを知ってるのは門番位なんだが・・・。リークした謝罪にでも来たのか?」
「あの?どうしますか?お会いになられますか?お会いになるならばお連れしますが・・・。」

 タクマは少し考えた後に了承して連れて来てもらう事にした。ヴァイス達には庭で寛いでいてもらう事にした。少し待っていると、商業ギルドの使いと共に昨日の門番が来た。

「お連れしました。では私は戻りますので。」

 使いの女性に感謝をしてから門番を家の中へと案内した。備え付けのソファーに座らせ早速話を聞くことにした。

「外がうるさいのは許してくれ。まだやんちゃな子ばかりでな。ちゃんと外には漏れないようになってるから。」
「ええ、問題ありませんが、敷地全体に魔法ですか・・・。流石はSランク・・・。」
「そんな話をしに来たんじゃないだろう?俺らの事を厄介な奴に話したりでもしたか?」

 タクマは駆け引きを無視して直球な質問を投げかける。

「何故それを・・・。」
「分かるのかって?昨日の夜に、この町で俺達に対しての敵意と殺意が生まれるのを感じたんだよ。町で商業ギルド以外で接触した人間はアンタ以外に居ないんだ。だからリークしたのはアンタしかいない。」
「・・・。」

 タクマのツッコミに絶句している門番をスルーして畳みかけていく。

「で?厄介事を発生させたアンタはどこの誰だ?俺はアンタの名前も知らんぞ。」
「え、ええ。名乗りが遅くすいません。私はこの町で門番をしているデイモートと言います。」

 デイモートは最初のタクマの口撃で既に飲まれてしまっていた。忠告に来たつもりだったのだが、意に反してタクマからは警戒されると共にリークした犯人として敵意まで持たれていると感じていた。

「俺達の事をリークした癖に、ここに来れるなんて良い度胸をしているな?それとも俺は舐められているのかな?」

 タクマはあいさつ代わりにちょっとだけ威圧をしていく。見る見る顔色が青くなっていくデイモートに対して、更に質問をする。

「ここに来た理由と、俺らの事をリークした相手を言って貰おうか?もちろん相手の目的もだ。」
「も、も、も、もちろん、そのつもりで来ましたので正直に言いますから、どうか威圧を止めていた頂けませんか?」

 デイモートは威圧に耐えきれないらしく真っ青な顔で懇願してきた。

「・・・分かった。では話して貰おうか。」

 デイモートは昨日報告した内容をタクマに包み隠さず話していく。そして相手が所持している魔道具のせいで正直に言わざるを得なかった事を詫びた。

「なるほど。領主ねぇ、本当にこの国は腐っているみたいだな。」
「確かにこの国の貴族や王族は腐っていると思いますが、全員が腐っている訳ではないのです。中には・・・」
「中には良い貴族もいるってか?そんな貴族、この国で見た事ないが?それに親の居ない不幸な孤児を何もせずにのうのうと良い生活してる奴らの何を信じれば良いんだろうな?」
「で、ですが・・・」
「まあ、今はそんな事を話してるんじゃないしいいや。狙いがヴァイスとゲールなのは分かったし、早く町を出るように警告に来てくれたのも分かった。だが、それは無理だ。俺にはこの町でやらないといけない事があるからな。」

 タクマは多少の危険があったとしても、この町の孤児たちを救う目的を中止する気はなかった。

「そのやらないといけない事とは何でしょうか?」
「アンタに言ってもしょうがないだろう。とりあえず俺から言えるのは、売られた喧嘩は買うって事だな。ましてや、俺の家族に手を出すって言ってるんだろ?だったらアンタがしなくちゃいけないのは、関係ない使用人を避難させる事じゃないか?ちょっかい出されるまでは何もしないが、出された時点で領主の館とそこにいる人間は消える事になるぞ?Sランクの冒険者とその連れが戦闘したらどうなるか分かってるのか?」

 初めから関係ない人間を避難させとく様に、わざと脅したタクマは早く戻って準備をするようにデイモートを促した。慌てて席を立って部屋を出ようとしたデイモートは、タクマにもう1つ報告をする事を思い出し振り返った。

「あ、あと一つ。本当の私は門番ではなく領主邸に潜入しているスパイです。仕えているのは・・・」
「言わんでいい、めんどくさい。どうせ本当の主に会ってくれとかだろ?」
「はい・・・。私は仲間達と使用人達に何かあった場合は即避難する様に言っておきます。どうかサトウ様も気を付けてください。」

 そう言ってデイモートは帰って行った。タクマはため息を付きながら庭で寛いでいるヴァイス達の許へ向かった。

「みんな、昨日も言ったが、厄介事がやってくるのは決定した。狙いはヴァイスとゲールだそうだ。もし襲ってきたら、家族に手を出すものがどうなるか身を以て経験してもらおう。」
「アウン!(やっつけるー!)」「ミアー(負けないもん!)」
「ピュイー!(家族には手を出させません!)」「キキキ!(後悔させちゃうぞー!)」
「キュル?(食べちゃう?)」
(私も及ばずながらお手伝いします!)
「いやいや、食ったらだめだろ。」

 ジュードのボケた答えに脱力したタクマ達は、顔を見合わせて笑うのだった。この町の領主の破滅は着々と進んで行くのである。
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