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服飾の町ファッシー

成敗

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 タクマ達は夜になるまで、家でゆっくりとしていた。辺りが暗くなり始めた頃、家の門に向かって来る気配を感じた。門まで出迎えに出てみると、デイモートが息を切らせてやってきた。

「デイモートか。」
「え、ええ。屋敷の無関係な人間は全て避難しています。領主邸には領主と客だけになっています。」
「そうか。」
「で、ですがどうするおつもりなのでしょうか?」
「とりあえず俺に喧嘩を売った上に、かなり悪事を働いているようでな。そいつらが集まっているから、まとめて地獄に落ちて貰う予定だ。」
「それはどんな悪事なのでしょう?」

 デイモートは、タクマが領主の悪事の証拠をつかんでいる事を感じた。

「それは殲滅が終わった後に、証拠と一緒に持って行ってやる。」
「できれば・・・。」
「身柄はやらんぞ。アレは俺の獲物だ。」
「・・・・。」

 タクマはデイモートに伝言を頼むことにした。

「お前の主人にこう伝えておけ。明日の朝、そちらに行く。今回の後始末位は出来るだろう?と。」
「必ず伝えます。それでは・・・。」

 デイモートは再び走ってその場を離れていった。見送ったタクマは家に入ると、ヴァイス達に語り掛けた。

「さあ、行くか。」
「アウン!(退治だー!)」「ミアー!(たおすよー!)
「ピュイー。(地獄へ送りましょう。)」「キキ!(やるよー!)
「キュイ!(丸焼きにするー!)」

 準備が整ったタクマ達は暗くなった夜空へと飛び出していった。領主邸の上空に到着すると、気配察知でカリオを探す。

「よう。どうだ?集まってるか?」
「!!だから、気配なしで後ろに立つなって・・・。」
「まあまあ、どこかのスナイパーみたいなセリフは良いから。」
「ったく!まあ良い、全員集まっている。使用人たちは先ほど全員いなくなった。で?これからどうするんだ?」
「とりあえず、お前も一緒に来いよ。」

 タクマはそう言うと、カリオの方に手を置きヴァイス達が待っている上空へと跳んだ。

「あんた・・・。やる事がめちゃくちゃだな・・・。」
「まあな。常識はずれなのは分かってる。んじゃやるぞ。」

 タクマは領主の館全体を強い結界と遮音を掛ける。邪魔が入っても面倒なので外からも見えないように細工してある。

「ここまでの結界魔法を使えるとは・・・。って、1つ聞いていいか?」

 カリオはタクマの常識はずれな結界ももちろん驚きなのだが、それよりも聞きたいことがあったのだ。

「この動物たちは一体なんだ?全員が途轍もない力を持っているだろう?」
「俺の家族だ。ただの動物扱いは止めろ。それよりも今は決着だ。」
「はあ?どうやって?」
「まあ、このまま姿を見せずに消し飛ばす事も可能なんだがな。だが、今回は他の勢力も領主を狙っていたらしくてな。そいつらに貸しを作ろうと思ってるから消し飛ばす事は出来ないんだなこれが。」

 タクマ達は上空から結界内へと入ると、庭で30人位の男たちが騒いでいた。

「なんだこれは!」
「どういう事だ!」

 騒いでいる奴らに屋根の上から話しかける。声を張るのも面倒なので、ヴァイスに風魔法を使ってもらい声を届けてもらう事にした。

「やあ、悪人の諸君。君たちの人生はここで終わりになる。」
「誰だ!」

 騒いでいる奴らの中で一番金持ちそうな奴がこちらに気が付いて声を上げると、一斉にタクマの方に目を向けた。

「誰だ、おまえは!?」
「アンタが領主か?」
「そうだ!誰の屋敷に侵入していると思っているのだ!」
「俺に喧嘩を売ってるんだろう?こいつらを手に入れるために俺を殺す、だったか?」
「お前が例の冒険者か!私にその獣をよこせ!」

 タクマはその言葉を聞いた瞬間、アイテムボックスから刀を取り出し領主に向けた。

「俺の家族を獣だと?しかもよこせ?寝言は死んでから言え。」

 タクマは殺気を開放する。すると今まで元気に騒いでいた奴らはガタガタと震えだすのだった。

「まあいい。俺に喧嘩を売ったんだ。覚悟はしているな?お前らは、全員悪事を首謀したか共犯だ。証拠もある。お前らはもう終わりだ。」

 そう言うと、タクマは一瞬で取り巻きの1人に接近し、首を刎ねた。

「「「ひい!」」」

 タクマが1人の首を刎ねると同時に、ヴァイス達も次々に取り巻きの首を刎ねて行く。気が付けば、領主以外は絶命していた。タクマは、領主を怯えさせるために、敢えて返り血を避けなかった。そして、血に染まったタクマはゆっくりと歩き出す。

「やめろ!これ以上近づくな!おい!聞こえてるのか!?そうだ!金が欲しいのだろう?いくらでもやるぞ!だか・・・。」
「黙れ。」

 領主の目の前まで来たタクマは、躊躇なく刀を水平に振り首を落とした。ヴァイス達の体と自分の体、刀にクリアを施し浄化したタクマは、落とした首をアイテムボックスに収納して行く。そして、すべてを収納し終わると、全員で空に上がって行くのだった。

「ついでに、結界内を消し飛ばすか。ゲール、頼む。」

 タクマに促されたゲールは結界内に特大の青白い炎を放つ。すると、蒸発する様に遺体と建物が燃え尽き、結界内は更地と化すのだった。

「こんなにあっさりと殲滅するとは・・・。」
「時間かけても同じだろう?これでお前を苦しめていた者は消えた。それで良いんじゃないか?」
「そうだな・・・。」

 やるべき事は済んだので結界を解除したタクマ達は家へと戻って行った。

「これで終わったと言いたいところだが、まだやる事がある。」

 家のリビングで一息ついたタクマは、カリオにそう切り出した。ヴァイス達は既に寝室で夢の中である。

「明日、領主を狙っていた別勢力と話をしなければならない。カリオはデイモートを知っているか?」
「ああ、今は門番をしているんだっけ?あいつは前領主の衛兵だった男だ。・・・まさか。」
「そうだ。別勢力はデイモートの新しい主人だ。」
「そうか・・・。あんたはその主人に会った事があるのか?」
「いや、明日が初めてだな。」
「そうか・・・。」
「明日は一緒に行って貰うからそのつもりでいてくれ。証拠を持って、朝一で来てくれれば良い。」
「分かった。明るくなる前に来る。」

 カリオは席を立ち家を出て行った。タクマはカリオが家から離れたのを気配察知で確認した後、1人でトーランへと跳んだ。自宅の執務室へ跳んだタクマは、椅子に座ると深いため息を吐く。

「おかえりなさいませ。」
「ああ、アークスか・・・。」
「お疲れの様ですね。大丈夫ですか?」
「ああ、体力的には全く疲れていないんだがな。それより、被害者たちの名前のリストは出来ているか?」
「はい、これです。」
「ありがとう。じゃあ、あっちに戻るよ。」

 タクマは席を立ちファッシーへ戻ろうとすると、アークスが話しかけてきた。

「タクマ様。今回の件が終わり、ファッシーの孤児を引き取った後は少しゆっくりされては?」
「ん?どうした急に?」
「いえ・・・。何となくですが、生き急ぎ過ぎだと思いまして。時には休むことも必要です。孤児たちの保護も大事ですが、先ずはご自身の心の安定も必要です。」
「心の安定か・・・。そうか、そうだな。ファッシーの件が終わったら、しばらくゆっくりするか。気にしてくれてありがとう。」
「いえ、執事として当然の事なので。」

 アークスに見送られ、トーランから跳んだタクマはファッシーに戻って行った。

「タクマ様はもう少しゆっくり過ごす事を覚えて頂けたら・・・。」

 アークスは、誰もいない執務室で呟くのだった。




 
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