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王都パミル

王都パミル

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 襲撃の後の旅路は実に順調だった。途中でモンスターを倒したりなどはあったのだが、接近する前にヴァイス達が倒してしまっている。その為、戦闘の為に止まると言う事は無かった。黙々と移動を続けていると街道の先に王都を守る壁が見えて来た。

「タクマ殿。あれが王都パミル、この国の中枢だ。」

 タクマの対面に座っていたコラル侯爵は誇らしげに語っている。王都には沢山の魔道具が売っているとか、沢山の種類の食材が売られている等、丁寧に説明してくれた。

「到着したら、私の家があるのでそこに泊まってくれ。もちろんヴァイス達も同じ部屋で大丈夫だ。」
「いや、俺達は宿屋にでも・・・。」

 タクマは到着したら宿に泊まるつもりだったので断ろうとしたのだが、途中で遮られてしまった。

「恐らく王都の宿はヴァイス達は一緒には泊まれないぞ。それに、下手な所に泊まればヴァイス達を奪おうとする者も出るだろう。厄介事は困るから、私の家に泊まってくれ。もちろんファリンさんも家に泊まってもらう。」

 そこまで言われてしまうと断りようが無かったので、素直に提案を受け入れる事にした。会話の間も馬車は進み続け、貴族専用の門に到着する。

「止まれ!この魔獣はなんだ!」

 ヴァイス達を見た衛兵たちは剣に手を添え警戒していた。タクマが降りて説明しようとしたのだが、コラル侯爵が先に降りて説明をしてくれた。

「・・・と言う訳で、この子達は私の護衛をしている冒険者の従魔で安全だ。」
「なるほど・・・。しっかりと調教されているなら良いのですが・・・。すいませんが、その従魔たちの主人はどなたでしょうか?」

 呼ばれたようだったのでタクマが馬車を降りようとすると、ファリンが小声でアドバイスをくれた。

「タクマ様。商業ギルドのカードではなく、冒険者カードを使ってね。護衛なんだから。」
「了解だ。」

 タクマは馬車を降り、衛兵の前へ近寄って行く。

「驚かせたみたいですまんな。みんな俺の大事な従魔たちだ。ほら、よく見てみると可愛いだろう?」

 ヴァイス達を呼び寄せて撫でて見せると、ようやく理解をしてくれたようだ。

「確かに、とても可愛がっているみたいですね。毛並みもとても綺麗ですし・・・。あ、すいませんが身分証を確認させていただいて良いでしょうか?」

 タクマは言われるがままに冒険者ギルドのカードを提示した。すると、カードを受け取った衛兵が目を見開いて、驚きの表情を見せる。

「エ、エ、Sランク・・・。」

 カードとタクマの顔を行ったり来たりさせながらオロオロしていたので早く手続きをするように促した。

「申し訳ありません。すぐに終わりますのでお待ちください!」

 すぐに行動を開始した衛兵は、迅速に手続きを終わらせて戻って来た。

「お待たせしました。従魔たちの情報もしっかりと登録されていました。入って貰って大丈夫です。」

 タクマはヴァイス達が居た為に身分証提示と言う手続きが必要になってしまったが、そのほかの人たちはコラル侯爵のお付きと言う事で、顔パスで入る事が出来ていた。もちろんコラル侯爵は手続きを行っていたのだが。タクマ達が入った出入り口は貴族専用で、そのまま貴族街へ直行できるようになっているようだ。

「さあ、手続きも終わったし、家へ移動しよう。」

 無事に王都へ入る事が出来た一行は、まっすぐ家に向かって行った。

「でかいな・・・。」「大きいわね・・・。」
「アウン!(おっきいねー!)」
「ミアー?(おっきい庭あるかなぁ?)」
「ピュイー。(人の家ですから暴れてはいけませんよ。)」
「キキ!(そんな事しないよー。ちょっと遊ぶだけ!)」
「キュイ?(美味しいものある?)」

 ヴァイス達はこの大きい家を見ても全く変わらない反応だった。

 コラル侯爵の家に到着した一行は、馬車から降りて各自の仕事を始めている。タクマとファリンはお客様らしいのでそのまま応接室へと案内された。この家を管理していたらしい使用人はヴァイス達が庭の方を見ていた事に気が付いていたらしく、彼らを庭へと連れて行ってくれた。

「さて、ようやく落ち着けるな。どうだ?私の王都での家は?」
「規模が凄いですね。若干、広過ぎではないかとも思ってしまいますが・・・。と言うか、家じゃなく豪邸ですね。」
「はっはっは。確かにな!俺もこんなに大きいのはいらないな。」
「でしたら・・。」
「タクマ殿。この国での私の身分は侯爵だ。だから見栄と言うのも必要なんだ。」
「なるほど。」
「さて、今日は到着したばかりだからゆっくり休んでくれ。私は明日城へ行く。謁見の手続きと報告を済ませねばならないからな。タクマ殿たちは、謁見の日取りが決まるまでは自由に過ごしてくれ。」

 どうやら、自由時間があるようなので、ファリンとヴァイス達で遊びに行こうかと考えていると、コラル侯爵は釘を刺してくる。

「ただし、謁見が終わるまでは、この敷地内で自由にしてくれ。これは、安全の為の措置だから順守してくれ。」

 ファリンとタクマは顔を見合わせ、大きなため息を付くのだった。話も終わり、各自の部屋に案内されたタクマは、ソファーに座って自分で淹れたコーヒーを飲んでいた。

「ふー、ようやく本番になる感じか・・・。さて、あいつらは王都に到着したのかな?」

 あいつらとは襲撃者の指揮を執っていた4人の事だ。彼らにはしっかりとマーキングをしておいたので、PCを取り出しマップに反映させてみた。すると、コラル侯爵の邸宅から1km程離れた場所に反応があった。

「なるほど。そこが黒幕の住んでいる所かな?」

 タクマはPCのマークを見ながら不敵に笑みを浮かべながら、ゆっくりとコーヒーを啜るのだった。
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