上 下
87 / 280
王都パミル

本当の目的

しおりを挟む
 謁見の間に戻って来たタクマは良い子で待っていたヴァイス達を褒めてやった後に、王とコラル侯爵に報告を行った。

「そうか、あの者は助かったか。それにしても足を繋げるなど、ウチの宮廷魔導士でも無理な事なんだがな。それをいとも簡単に出来てしまうとは・・・。」
「タクマ殿はこの世界の神以外にも祝福を受けているみたいですので、こちらの常識を当てはめるのは無理があるのでしょう。」
 
 タクマの非常識さに呆れている2人にタクマは本題に入ろうと促す。

「そうだな。だがその前に私の名乗りがまだだったな。私はパミル王国の現国王、アルダイ=パミルだ。よろしく頼む。さて、今回タクマ殿をお呼びしたのは君達と不可侵条約を結びたいと思っているのだ。コラルにも言っておいたが、我が国としては君と敵対する事は絶対にしたくない。こちら側からちょっかいを出す事は絶対にしないと約束しよう。もし今回の様な事が再発した場合は、貴族であろうが容赦なく対応してもらって結構だ。そのような馬鹿を出すつもりはないが、万が一の場合は殲滅も私の名で許可しよう。それと、私個人として君と友好を深めたいと思っておる。」
「随分とこちらに有利な条件を提示していますが、何か目的が?」

 王の出した条件はかなりタクマに有利な物だった。国として個人と不可侵条約を結ぶなど、ありえない事だろう。それに、手を出して来たらタクマの判断で殲滅も許可するとなると相当譲歩した条件なのが分かる。

「君の力を私たちに向けられたら、一瞬でこの国は滅ぶ。そうならない為には君に必要以上のちょっかいを出さないのが一番だろう?友好についてはただ単に君と仲良くなりたいのだ。」
「なるほど。」

 王は懐から契約書を取り出した。内容は先ほど話された内容がそのまま記載されている感じだった。

・パミル王国はタクマ=サトウに対し、敵に回る事を絶対にしない。
・王国の意思を無視してタクマ=サトウに手を出した場合、いかなる身分の者であっても国が守ることは無い。
・この契約はタクマ=サトウが家族として認定した者にも同じ条件が付与される。
・万が一、敵対した場合は、タクマ=サトウの判断で敵を殲滅する事を王の名において許可するものとする。
・タクマ=サトウが異世界からの転移者であることは国家機密にする。それに付随して、タクマ=サトウの能力も同じ扱いとする。

 タクマは契約書の内容をしっかりと読み込んだ。紙にも小細工が無いか確認したが余計な心配だった。書類にも問題はなさそうだったので、その場でサインをしようとしたのだが、それはコラル侯爵が止める。

「タクマ殿。不備があるとは思わないが、一旦持ち帰ってファリン殿にも確認してもらった方が良いだろう。彼女はそのために来たのだろう?」
「・・・・・そうですね。では、こちらは一旦持ち帰ってファリンに見直して貰ってからでよろしいでしょうか?」
「うむ。こちらとしても不備があっては困るのでな。それで頼もう。不可侵の話はこれで終わりだが、私個人の話が残っているな。どうだろう?私の友になってくれんか?」
「友ですか・・・・。先ずは知り合いからではないでしょうか?お互いの人となりも分かっていませんから。」

 タクマは友達付き合いをするには時間が足りないと断った。それは王が何を考えているかが分からなかったのだ。なので当たり障りのない知り合いを提案した。

「・・・確かに君も私の事が分からないだろうから、いきなりは失礼だったな。知り合いからで頼む。そうだ、先ずは名前で呼び合う事にしよう。よろしくタクマ殿。」

 そう言って手を差し出された。コラル侯爵の方を窺うと、頷いていたので握手を交わす。

「では、話し合いも終わって、知り合いになれた事ですし私からお近づきの印を献上しましょう。」

 タクマはアイテムボックスからこの時の為に購入してあったジャッ〇ダニエ〇を取り出した。

「これは・・・。」
「私の世界で飲まれている酒です。お口合うか分かりませんがどうぞお納めください。」
「おお!君の世界の酒か!先日コラルから献上された酒とは違うようだが・・・。」
「種類としては同じものですが、味わいは少し違いますね。晩酌にでも飲んで頂けたら。」
「そうか。前に飲んだ酒も最高な味だったが、これも楽しみだ。ありがとう!」

 献上した酒を近衛が片付けた後は、外が明るくなるまで話を続けた。タクマがこの世界に来た時の事とか、異世界はどんな所なのかと2人は興味深々に聞き入っていた。

「国王様。そろそろ、朝になります。少し休まれませんとお体に触ります。」
「おお、そうか。まだまだ話したいが、今日はこれで終わろう。この続きはまた今度だな。今回の事件の結果を知らせないとタクマ殿も安心できんだろうから、日を改めて来てもらう事になると思う。」

 そう言って王は謁見の間から退室していった。

「では私たちも帰ろうか。」

 コラル侯爵とタクマ達は城を出て邸宅へと帰って行くのだった。

しおりを挟む

処理中です...