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王都パミル 新家族編

帰宅と子供達

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 騎士たちと手合わせを行い、全員を凹ませた翌日。城からの使いが来て土地の譲渡書類を渡された。そこからコラル侯爵の用事が終わるまでの数日は、騎士の手合わせの申し出を受けている。

「おーい、相手は人間じゃないんだ。同じ戦い方で通用するわけがないだろ。」
「くっ!動きが良すぎる!」
「ミアー!(よわ!)」

 騎士数人を同時に相手しているゲールはあまりの弱さに欠伸をしながら騎士たちの攻撃を避けていた。数分後、体力の限界で動けなくなっている騎士を前足でノックアウトしたゲールはタクマの許へ戻って来た。

「ミアー。(お父さん。あの人たち無駄な動きが多いね。」
「そう言うな。あれでも俺達と手合わせする前よりも進歩してるんだから。」

 身も蓋もない事を言うゲールを撫でながら騎士たちに向けて、少しは成長している事を話してやる。

「ここ数日で大分動けるようになったじゃないか。武器の特性も考えて戦っているみたいだしな。」
「あ、ありがとうございます・・・。」

 騎士たちとの鍛錬を終わらせたタクマは執務室へと移動した。

「タクマ殿か。すまんな、騎士たちの相手をして貰って。」
「構いませんよ。どうせ帰る迄暇ですから。それにヴァイスたちの遊び相手にはちょうど良いです。」
「騎士たちにとっては辛い鍛錬でも、ヴァイスたちには遊びとしか思われていないのか。」
「まあ、それで騎士たちが強くなれば幸運だ位に思っておけばいいと思いますけど。」
「そうだな。良い鍛錬相手だと思ってもらうしかないな。それはそうと、王都での私の用事は全て終わったぞ?早く帰りたいようだし早速準備をしようか。」

 どうやら王都での用事は終わったらしく、準備が終わればすぐに帰る事が出来るそうだ。コラル侯爵は使用人を呼び出し、すぐに準備をすように指示を出した。

「さて、準備が終わるまで話でもするか。」

 侯爵はグラスに水を注ぎながら話を始める。

「王都はどうだったのだ?あまり繁華街には行っていなかったみたいだが。」
「人が多くて街中に行く気にはなりませんね。王都の外に出てゆっくりした方が楽です。」
「そうか。では早く帰らないとな。」

 二人でくだらない事を話していると、使用人たちが報告にやって来た。準備が終わったそうなので早速庭へ移動して、トーランへ戻る事にした。全員が集まっていたので素早く範囲を指定し、魔法を行使する。

「おかえりなさいませ。」

 トーランの侯爵邸に跳んだタクマの目に映ったのは、アークスの姿だった。

「どうやって帰るのが分かったのか知らんが、ただいま。」
「偶々用事がありましてこちらに来ていたのですが、良いタイミングでしたね。」

 タクマはコラル侯爵に挨拶をし終わると、アークスと共に自宅へと戻っていく。自宅の門をくぐると、タクマ達に気が付いた子供達に囲まれてしまった。

「タクマおとーさんだー!」
「おかえりー!」
「僕達いい子にしてたよ!」
「ヴァイス達だー!」

 次々にタクマに話しかけてくる。ヴァイスたちも子供達に囲まれ撫でられていた。

「あれー?おとーさんの頭に白いのが乗ってるー!」
「ウサギさんだー!」
「可愛いねー!」
「触っていいい?」
「この子と腕に居る蛇はまだ人に慣れていないんだ。遊べるようになったら撫でてあげてな。」
「「「「はーい!」」」」

 ヴァイスたちに子供達を任せ、タクマは執務室へと移動する。ソファーに座って一息つくと、アークスがお茶を持ってきてくれた。

「改めておかえりなさいませ。お疲れでしょう?」
「空間跳躍で一瞬だから、そんなに疲れてはいないぞ?」
「いえ、精神的な方です。」
「ああ・・・。そういう意味では疲れているな。」
「では今日は休んでください。話は明日でも良いでしょう。こちらも報告する事がありますから。」

 そう言ってアークスは退室していった。

(さすが出来る奴は違うな。それにしても子供達は元気だったな。この家にも慣れたみたいだし。)

 子供達の笑顔を思い出しながらボーっとしていると、ドアの外にヴァイスたちと子供達の気配を感じた。部屋に入る訳ではなく、ドアの前をウロウロとしている。ドアを開けてやると、子供達は申し訳なさそうな顔でタクマを見上げていた。

「どうした?ヴァイスたちと遊んでいたんじゃないのか?」

 タクマは目線を子供達に合わせて聞いてみると、何故かモジモジしている。

「キキ。(ご主人。みんなご主人とお話ししたいんだってー。)」

 ネーロが理由を教えてくれたので、皆を中に入れてあげた。子供達は執務室には入らないように言われていたらしく、初めて入る部屋にソワソワしていた。

「そうか、初めて入るのか。俺が居る時は、話がしたかったり聞きたい事があれはいつでも来て良いんだぞ?」
「良いの?お仕事してるんでしょ?」

 子供なりに気を使ってくれているらしく、遠慮気味にしている。

「大丈夫だ。お前たちが話したい時はいつでもおいで。」
「「「分かったー!」」」
「で?何か話したかったんだろう?」
「あのね?お父さんとお話ししたかったの。お仕事でいなかったからお話しできなかったから・・・。」

 子供達はタクマが居ない間、寂しかったらしい。なので、久しぶりにタクマが帰って来たので沢山話したいのだそうだ。

「そうか・・・。良い子で待っていてくれたみたいだし、ゆっくり話そうか。」

 タクマがそう言うと、子供達は目を輝かせて話を始める。子供達との話は、アークスが呼びに来るまで続くのだった。
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