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新生活

新店舗の商品を考える。

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 無事にアルテも名前を得る事が出来て、タクマ達は湖の自宅へと戻って来ていた。アルテはタクマと契約を行った事で、祠から離れても消耗をする事が無くなっていた。タクマは気が付いていなかったのだが、教会に向かっている時のアルテは湖からトーランへと移動した時は、どんどんと魔力を消耗していたそうだ。タクマからあふれ出ている魔力を吸収して何とか存在を保つことが出来ていたと言っていた。

「結構やばかったんじゃないか?言ってくれればいつでも魔力を渡したのに。」
「だって・・・。名前はどうしても欲しかったの。名前は存在を示す物でしょ?それが無ければ私が見えていたとしても、路傍の石と同じでしょ。」

 アルテの言う通り人は名前が無ければ存在していたとしても、個としての認識は弱くなる。彼女はしっかりとした存在の証明が欲しかったのだ。

「なるほどな。まあ、こうして名を手に入れる事は出来たんだ。これからは何処へ行っても消耗する事はないんだろ?」
「ええ。契約が行われた事で、私とタクマは魔力の供給ラインが出来ているわ。あなたがどっかに旅に出たとしても大丈夫よ。」

 どうやら、タクマがどこに居てもアルテに必要な魔力は供給されるようだ。

「そうか。だったら安心だな。俺もやる事が終われば、旅をしたいしな。」

 タクマは家や店の事が落ち着けば旅を再開するつもりなので、アルテは土地の守りを担当してもらうつもりだった。アルテにそのことを話すと、彼女も快く引き受けてくれた。

「私を怖がらずに受け入れてくれた人たちはどんな事があっても守って見せるわ。」
「出来るだけリスクは無くなるように動いてはいるんだが、どうしても完全には無くならないだろうから助かる。アルテが守ってくれれば殆どの敵は排除できるだろう。まあ、危ない時は念話をくれれば空間跳躍を使って戻れるから、そこまで危険な事はないだろうがな。それに、基本的には頻繁に戻ると思うし。」
「そうね。あなたには空間跳躍があるものね。でも、あんなに使い勝手の悪い魔法をポンポン使えるなんて魔力は大丈夫なの?」

 アルテは空間跳躍を乱発するタクマの魔力量が気になったようだ。

「魔力量は限界が無いから、俺にとっては便利な魔法だぞ。」
「規格外すぎて言葉にならないわね。」

 半ば呆れたような表情だったが、規格外だと納得してくれたようだ。

「そういえば、アルテはこれからも祠に住むつもりなのか?」
「?それはどういう意味?」

 タクマの真意が理解できないアルテは首を傾げる。分かっていないようだったのでタクマはこの家で住まないか提案をしてみた。

「・・・良いの?」
「ああ。折角みんなと交流が出来るようになったんだ。寂しい祠に寝泊まりするよりもこっちで住んだ方が良いだろう。祠には毎日子供達が管理に行くだろうしな。帰ろうと思えばいつでも帰れるだろう?」
「・・・ありがとう。」

 タクマの提案に、アルテは涙を流しながら了承してくれた。

「名前を与えた事で、アルテはウチの家族になったんだ。家族が同居するのにお礼は必要ない。自由に使ってくれ。住む部屋は子供達と一緒でどうだ?騒がしいかもしれんが一人よりは良いだろう。」
「それは願ってもない事だわ。子供達は懐いてくれているし、その方が嬉しいわ。」

 アルテが子供達と同室が良いと言ってくれたので、アークスを呼んで案内させることにした。

「今日からアルテが家族になった。ああ、アルテは精霊の名前だ。彼女は子供達と暮らすから部屋へ案内してやってくれ。」
「分かりました。」

 アークスはアルテを案内して子供部屋へと移動して行った。タクマは同行をする事なく執務室に残った。

「これで周辺の守りは固くなったな。旅に出て不在の時でもかなりの鉄壁さになっただろう。アルテと出会えたのはお互いにとっても良い事だろうな。」

 そう呟きながらアイテムボックスからPCを取り出し、店に置く商品を物色し始めるのだった。

 先ずは子供向けの商品を考える。トーランの町でも王都でも同じだったのだが、何故か子供向けの店が皆無だったのだ。

「うーん。やはり子供向けならおもちゃだよな。コマ、ヨーヨー、メンコ、タコ、キャッチボールとかか。この辺の商品は必須だろうな。」

 いくつかピックアップしてメモをして子供達に確認する事にした。
 次は女性向けの商品だ。櫛や髪留め、化粧品、鏡などをメモに書く留めておく。

「うーん、女性用はいまいち思いつかないから、後で家の女性陣に確認をしないといけないか。」

 続けて男用の商品を考える。基本力仕事の多い男性には作業用の服を考える。それに加えて軍手や安全靴などもメモに加えていく。基本的に店で扱う商品は、付加価値をつけるために他に卸す事は絶対にしないつもりだ。金額も仕入れに金を必要としないので、庶民が気軽に購入できる値付けにする。もちろんだが、金を持っている貴族たちが買う商品は、それなりに吹っ掛けるつもりである。

「おれが思いつくものだけでは商品も足りないな。ここは第二回家族会議を招集するしかないだろうな。」

 タクマは呟きながら、これから始まる店に思いを馳せるのだった。
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