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新生活

文武両道の為に

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 歓迎会をした翌日は、子供達と共に孤児院へと赴いていた。カイルを紹介する為なのだが、子供達も行きたがっていたので連れて来たのだ。

「おはようございます。今日はタクマさんも一緒なんですね。院の子達が待っていますから皆さんは行きましょうね。」

 子供達はそのまま孤児院へ向かい、タクマ達は子供達の事を話す事にした。

「なるほど。アークスさんに聞いてはいましたが、そんなに危険な事だったのですね。確かにウチの子達もタクマさんの所と同じ感じですね。なのでこちらかもお願いしたい位です。」

 タクマはアイテムボックスから孤児院の子供達に嵌める指輪を取り出し、ある程度トレーニングが終わるまでは必ずはめる様にお願いをした。

「子供達に体術を教えるのは、アークスの弟子でここに居るカイルが主に担当します。」
「カイル=ブロディだ。よろしくな。」

 カイルを紹介するとシスターは優しい笑顔で挨拶を返した。

「私はこの教会でシスターをしながら孤児院を運営しているシエルです。子供達の事をお願いしますね。」
「ああ、力を持つ事の意味からしっかりと教えるよ。」

 挨拶が終わったカイルはタクマから指輪を受け取り、子供達の所へ移動して行った。

「あの、タクマさん?カイルさんは冒険者なんですか?随分と落ち着いている方ですが・・・。」
「あいつは元々町を守る衛兵だったんです。今回、子供達の為に移住をしてきてもらったんです。」
「そうなんですか。良い人そうですね・・・。」

 どうやらシスターはカイルがタイプのようだ。確かに顔も良いし、人当たりも良い奴だからお似合いだろう。まだ先の事はどうなるかは分からないが、良い感じに進んでくれることを願おうと考えた。

「子供達の体の事はこれで解決すると思うのですが、俺はもう一つ考えている事があるんです。」

 タクマは子供達の為に勉強も強化したいと考えているとシスターに伝える。これは店の事よりも優先すべきなのでしっかりと話す必要があると考えていた。家族達の生活は今すぐに稼ぐ必要はないが、勉強は早く始めた方が良いに決まっているのだ。

「確かに子供達には勉強は必要ですが、現状の形態ではダメなのでしょうか?簡単な計算と読み書き、引退した職人さんにも来てもらっているのですが」
「確かに最低限の教育はされているのは分かっています。それの関してはウチの子達にも教えて頂いているので感謝しています。ですが最低限の物だけでは、いざ働きに出ると知識が足りない事が多い。それで挫折してしまうのはもったいないです。なので子供達の将来を広げる為にはもう少し深く学んで貰いたいのです。」

 タクマは自分の考えをじっくりとシスターに話していく。強制はするつもりはないが、子供達の為には必要な事だと考えているのだ。

「確かにしっかりとした教育は必要ですね。ですが、それを教える人材はどうするのです?」
「それはこちらで用意します。その為には同意をして貰った後で領主様に許可を貰う必要がありますが。」

 シスターは少し考えた後に笑顔で了承してくれた。そしてタクマに頭を下げる。

「タクマさん、ありがとうございます。自分が引き取った子供だけに教育を与える選択もあったでしょうに、院の子達の事も考えてくれて。」
「いえ、院の子達とも付き合いがありますから。あの子達は明るい未来がある事を分かって欲しいですよね。」

 タクマの言葉に涙を流して聞いている。

「ありがとう・・・。本当に感謝をしています。」

 タクマはシスターとの話が終わったのでそのまま領主邸へ向かう。ついでに孤児院に寄ってみたのだが、既にカイルの授業は始まっていた。みんなカイルの言葉をしっかりと聞いている。ヴァイス達はと言うと、まだ授業を受けるには小さ過ぎる子供達の世話をしている様だった。何せ小さい子供達なので毛を引っ張ったり尻尾を力いっぱい握られているが我慢強く世話をしている。念話で頑張れと激励して領主邸へ向かって行った。到着すると顔パスで執務室へと案内される。

「タクマ殿か。引っ越しの方は進んでいるのか?」

 タクマは引っ越しが終わり次の段階に移行している事を話し、子供達についての相談を行っていく。

「なるほどな・・・。子供達に教育か。君は本当に子供の為なら労を惜しまないな。良いだろう。選民意識が無く、子供が好きで教え上手な人材を探してみよう。とりあえずこっちで数人選んでおくから最終判断はタクマ殿がしてくれ。それに、君も頼もうとしている人がいるのだろう?しかし、子供達が勉強をするのは孤児院か?少々手狭じゃないか?。どうだ?教会の隣の屋敷が老朽化で更地にしないと駄目なんだが、そのままの状態で買うなら安くするぞ。」

 コラル様は子供達の為に安く土地を譲ってくれるそうだ。そこに学び専用の建物を建てれば集中して勉強が出来るだろう。タクマはその厚意に甘える事にした。

「お気遣いありがとうございます。是非お願いしたいです。」
「では明日にでも商業ギルドに書類を用意させるからそのつもりでいてくれ。」

 話しが終わったタクマ達は暫く話を続けていたのだが、コラル侯爵は仕事が詰まっていたらしく早めに失礼する事にしたのだった。
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