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新生活

帰還と再会

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 辺りが明るくなり始めた頃、いつでも出発できるように準備を済ませていた。ゲール達も明るくなっているので既に目が覚めている。ゲール達の毛並みを整えてあげていると、竜一たちが起き出してきた。テーブルで眠ってしまっていたデボラは未だに寝ていたのだが、起きてきた美佳に頼んで起こして貰った。

「みんなお早う。とりあえず朝になったので俺達が住む所へ移動するが大丈夫か?」

 タクマが野営道具を片付けながら帰る事を告げると、竜一が質問をして来た。

「僕たちはこっちの国の名前や土地の名前を知らないのですけど、タクマさんの家は何処にあるのですか?」
「ん?俺の家はパミル王国のトーランと言う都市の近くに住んでるな?」

 そうタクマが答えると、デボラが凄く驚いていた。

「パミル王国?ここから二か月近く掛かるじゃないですか!」
「え?そんな遠くから来たんですか?」
「あー、なんて説明したら良いのやら・・・。」

 タクマが返答に困っていると、カリオがあっさりと答えてしまった。

「タクマは空間跳躍の魔法が使えるんだ。だから距離は関係ないぞ。あと言っておくが、どうして使えるかとか聞かない方が良いぞ。自分達が危険になるからな。」

 あっさりと話してしまったカリオを軽く睨んでから、説明を追加する。

「カリオの言う通り、俺は空間跳躍でここまで来た。どうやって覚えたとかは知らない方がいい。知らなくても良い事があるからな。ちなみに俺の能力については基本的には喋らないで欲しい。その辺の事は家に戻ってから契約書で約束してもらうから。」

 そう言って全員をタクマの周りの集まる様に指示をする。デボラに関しては男性陣に近付くのは危険な為、ゲール達が緩衝材として間に居てくれている。タクマは範囲を指定して魔法を行使する。一瞬で変わった景色に3人は驚愕のあまり声を失っている。

「おかえりなさいませ。早かったですね。何がとは言いませんが。」

 跳躍してきたタクマ達の目の前にはアークスと子供達が揃っていた。

「おとーさんおかえりー!」
「おかえりー!」
「僕達いい子にしてたよー」
「赤ちゃん元気になったー!」
「そうかみんな頑張ったな。じゃあ、俺から一つ仕事を頼もう。そこで固まっている黒髪のお兄さんとお姉さんを赤ちゃんの所に連れて行ってあげてくれ。赤ちゃんのお父さんとお母さんだから」
「「「「はーい!!」」」」

 子供達は固まっている竜一達を家の中へと案内していった。

「タクマ様が慌てて出かけた理由はそれでしたか。慌てて出かけた理由は分かりましたが、それだけではありませんよね。」
「ああ、それは家に入ってから話そう。っと、その前に、彼女の事を頼む。色々あって連れてきたんだが、男性恐怖症なんだ。カリオがファリンを呼びに行っているから女性陣に任せたい」
「分かりました。彼女が来るまで私が近くに居ましょう。もちろん距離は離れておきます。タクマ様は家へ入ってください。お風呂は用意できていますから」
「ああ、そうさせてもらう。後は頼んだぞ。」

 タクマはそう言ってアイテムボックスから認証用の腕輪をアークスに渡した。

「先に渡しておくから、契約書の準備を頼む」

 当面の指示を終えたタクマは、自宅へと入って行った。リビングまで移動すると、そこには無事に再会を果たした親子の姿があった。竜一と美佳は愛おしそうに赤ん坊を抱きしめている。子供達はそれを見守る様に眩しい笑顔を向けていた。

「あ、おとーさん。」
「おう。みんなありがとな。」

 タクマは子供一人一人にお礼を言って頭を撫でてあげた。竜一と美佳も、無事に再会を果たしたことで落ち着きを取り戻していた。赤ん坊も実の親が抱いているのが分かるのだろう、穏やかな寝顔をしている。

「タクマさん。この子を保護してくださってありがとうございます。それにミルクやベビーベッドまで用意してくれて・・・。・・・ん?ミルク?ベビーベッド?あれ?ここって異世界・・・。」

 竜一はベビーベッドと脇にある粉ミルクを見て首を傾げる。

「あー、それらに関しては説明が必要だろう。もう少ししたら話すから待ってくれ。デボラも揃えば、俺の能力と今回の事についての説明をするから。とりあえず、お前たちはちょっと汚れているし、赤ん坊を子供達に任せて風呂に入って来い。不衛生だと赤ん坊に悪いからな。」

 タクマは赤ん坊を預かり、子供達に手渡す。子供達は短い間に抱き方や世話の仕方を覚えている様だった。
 竜一と美佳は使用人に案内されて風呂へと向かった。夫婦だと分かっているらしく一緒に入る様に言われたのでお言葉に甘える事にした。」

「ねえ、竜。この家って・・・」
「ああ・・・。俺達も見慣れている日本家屋だよな?しかも太陽が寝ていたベッドや粉ミルクも、俺達が居た日本で売っていたものばかりだった」
「タクマさんって何者なの?それに、他人の私たちをどうして助けてくれたのかしら。」

 美佳は見ず知らずの自分達を、危険を冒してまで救出しに来た意味が分からなかったのだ。

「確かに言いたい事は分かる。だけどな。タクマさん達が来てくれなかったら、今頃俺達はあの世だっただろう。太陽にも再会する事は出来なかった。後で話をしてくれると言っているんだ。それまで待とう。ただ、悪い事にはならないと思う。」
「そうね、とりあえずはしっかりと温まってリビングへ戻りましょ。そう言えば、世話してくれていたと言ってた子供達可愛かった。」
「ああ、色々ツッコミ所満載の子供達だったが、みんな良い子達だな。」

 自分達が使っている間の世話をしてくれた事に感謝をしながら風呂で身ぎれいにしてくのだった。
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