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新生活

押し付け

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 コラル侯爵と酒を酌み交わした後、タクマは客間に案内され眠っていた。

「またか・・・。俺の夢は俺のものなんだがな・・・」
「申し訳ありません。なるべく早くお知らせしなければと思って」

 ヴェルド様は申し訳なさそうな表情でタクマの前にいつものテーブルセットを出す。椅子に座ると早速本題を話し始めた。

「まず、顕現する事を言ってなくてごめんなさい。ですが、タクマさんに国からの疑念が集中するのは申し訳なかったので、あのタイミングで出るしかなかったのです。」
「それに関しては問題ありませんよ。お陰でパミル王も理解を示してくれましたから。」
「そうですか。パミル王国の判断は知っているでしょうから、それ以外の国の話をしましょうか」

 そう言って話し始めたのは、パミル王国以外の対応についてだ。ヴェルド様の顕現後、各国では最優先事項として禁忌魔法、禁術に関連した発掘、研究、記録の類を全て放棄する事になったと報告を受けた。禁忌魔法と禁術に関しては、すべての研究の資料を教会に預ける事になったそうだ。それに関係した王を含め、すべての関係者にヴェルド様との契約を済ませたそうだ。内容は、今後禁忌魔法と禁術に関連した研究は全て禁止、今まで研究した物に関しても全て禁止という内容だ。これに違反した場合は、関係したすべての関係者は神罰を受けると言う契約を全員サインをしたそうだ。

「後、今まで研究した成果や資料は全て教会に保管と言う事になりました。まあ、教会に保管された瞬間に私の所へ送ってしまうつもりですが。未だに地上に残っている物に関しては、既に私が厳重な封印を施しています」

 警告を受けた各国の王たちは、最優先事項として行動を開始しているようだ。

「どのような禁忌魔法や禁術があるかは知りませんが、リュウイチ達のような被害者を出さない為にも当然の処置ですね。ですが、大丈夫なのですか?顕現はヴェルド様にかなりの負担があったのでは?」

 タクマは顕現した事でヴェルド様の負担が心配だった。

「あの位の顕現であれば大丈夫です。ただ、神罰を実行したのはかなりの負担がありました。暫くは顕現は不可能でしょう。神罰に関しては負担があったとしてもやらねばなりませんけど」
「マジルが実際に神罰を受けた事で、軽く考える事は出来ないでしょうね。だからこそ、最優先で行動を開始したのでしょうから。」
「ええ、これで一先ずは安心でしょう。ただ、一つ惜しい事もあるのです。禁忌魔法や禁術の中には生活が潤うような物も多いのです。ですがそれを許してしまうとあれは良くてこれは駄目なのかと不平不満が出る可能性があったので、すべてを禁止するしかなかったのです」

 ヴェルド様の話を聞きながら、タクマは嫌な予感がする。

「はあ・・・。その後はあまり聞きたくないのですが・・・」
「そう言わずに聞いて下さい。私の方で危険のない魔法を厳選してタクマさんに使ってみて貰おうかと思うので・・・」
「お断りです!」
「・・す?食い気味に断られた!?」

 タクマは失礼を承知で食い気味に断る。今の自分でも危険な存在なのにこれ以上ヤバい事には関わりたくないのだ。

「待ってください!ちゃんと厳選して渡しますから!」
「正直言って、私に貰ってもあまり意味がないですよ。今でも便利すぎる能力に振り回されているのですから」

 そう言って断ろうとしたのだが、一つ思いついた。

(ん?そうか、危険なものでなければあいつ等に試して貰うのもありだな。人身御供みたいになってしまうが、能力に不安があるあいつ等ならメリットも大きいだろう)

「ヴェルド様。1つ提案なのですが・・・・」

 タクマは自分の考えをヴェルド様に話していく。すると彼女も少々考えた後にパッと笑顔に華を咲かせた。

「それはナイスアイデアです!!渡す物は人を傷つけるものではありませんし、彼等ならタクマさんの近くにいるので問題ないですね」

 タクマ達は同時に目を合わせ笑いだす。

「「ふふふふふふふ・・・・」」

 そんな会話をタクマ達がしている頃、タクマの集落にいるある一家は寝ながら身震いをしていた。

「ではその方向で行動しましょう。厳選したらお知らせしますので、あの方たちを連れて来て頂けますか?」
「ええ、出来れば彼らの能力に合った物をお願いしたいですね」
「任せてください!必ず彼らの力になる物を選んでみせます!」

 ちゃっかり身代わりを作ったタクマはアイテムボックスからお茶請けとティーセットを出して、帰るまでの時間を過ごす事にしたのだった。
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