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新生活

タクマ、種族が変わる

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 鬼子母神様はタクマの方へ顔を向け口を開く。

「さあ、お二人の能力付与は終わりました。次はタクマさんの番ですね」
「はい?」

 タクマは思わず間抜けな返事を返してしまった。

「危険なものではなかったですけど、二人にリスクを負わせたのです。あなたも多少なりともリスクを負わねばなりませんよね」

 二柱はタクマが今回何のリスクも負わなかったのをお気に召さないようだ。

「ヴェルド神。お二人をターゲットにする前は、禁忌魔法や禁術の扱いはどうするつもりだったのですか?」

 鬼子母神様はヴェルド様に話を振る。

「は、はい!当初の考えは、あまりに危険な物に関しては私が責任を持って処分するつもりでした。ただ、生活に役に立つものや人の為になる物はタクマさんに託そうと考えていました」
「タクマさんに丸投げするつもりだったんですね。では、その中で比較的安全な物をタクマさんにお任せしてはどうでしょう?」
「私としては願ったり叶ったりですが、タクマさんはこれ以上の能力を望んでいませんし・・・」

 ヴェルド様はタクマの不安を知っているので、無理やり付与する気はなかったようだ。

「ですが、タクマさんも自分で言っていたでしょう?力は力でしかないと。使い所をしっかりと分かっていれば、能力をたくさん持っていても問題ない筈です。そうでしょう?」

 鬼子母神はタクマの方へ顔を向け同意を求める。鬼子母神様の言葉は、自分がリュウイチ達に言って聞かせた事が自分に帰ってきてしまった形になる。

「そうですね・・・そのとおりです・・・」

 自分が言った事を翻すわけにもいかず、同意するしかなかった。

「タクマさんもそう言ってますし、託せるものは託してしまいましょう。どんなものを託そうとしていたのですか?」

 鬼子母神様と伊邪那美命様はヴェルド様と付与する能力を話し始めてしまった。

(これで俺も化物か・・・ただでさえ能力があり過ぎて使いこなせていないのに・・・。とりあえずやるべきことを終わらせたらどっかで修行しないと力に振り回されそうだな)

 話し合いの間にそう考えたタクマは自分の行動をザックリと考えていた。
 数分後。ヴェルドを含めた3柱はタクマの方に振り向いて、話を再開した。代表して伊邪那美命様が口を開く。

「お待たせしました。タクマさんに付与する能力は、亜空間作成、空間制御、大気制御の3つになります。そして、タクマさんの強さに比例してレベルは最大で付与する事にしました」

 そう言って、タクマが拒否する暇を与えずに説明が始まってしまった。

 亜空間作成は、今タクマ達が居る神の領域と似た空間を作れるものだ。どうやらスキルレベルによって作れる大きさが異なり、タクマの場合は制限なく広く空間を作る事が出来る。ただ、この能力は単独では使えない能力なのだ。空間を維持するためには常に魔力を消費してしまうのだ。タクマなら単独で維持する事は可能なのだが、それでは使い勝手が悪すぎる。この使い勝手の悪さによって禁術として研究を放棄された能力だった。
 空間制御はこれも単独では意味のなさない能力だ。亜空間作成と合わせて持っていないと使いようが無い。作った空間を固定し、魔力を消費しなくても存在させ続けられる。何故か亜空間作成とは違う場所で発見され、無意味な力だったので放棄されていたらしい。
 最後に大気制御だが、これはその名の通り気体全てを制御できるようだ。これは他国の軍が研究していたかなり危険な禁忌魔法に属するらしい。大気制御が暴走した場合、世界が死滅するほどの危険を伴っている。だが、大気制御を違う使い方に使えばとても便利なものになる。

 説明が終わってタクマが感じた事は「でたらめ」の一言に尽きるだろう。

「これは人間の扱える代物ではないのでは・・・」

 タクマは言葉に詰まりながらも3柱に尋ねた。するとヴェルド様が話し出した。

「タクマさん。あなたは既に通常の人という種族を越えてしまっています。薄々感づいていると思いますが、このまま成長を続けると、限りなく神に近くなります。なので、その3つの能力を与えても問題はないと判断しました。ただ、タクマさんは人としての器で生きています。その体が存在している内は、完全な神に昇る事はありません。既に不老ではありますが、不死ではありません。何かのきっかけで殺されたり、事故で死ぬ可能性はあるのです。簡単に言えば仙人みたいなものでしょうか」

 どうやらタクマは自分の知らない所で、人としては逸脱した存在になっていたようだ。

「そうか・・・。俺はすでに人族ですらなかったのか・・・」
「それを気にする必要がありますか?見た目は人ですし、あなたの感覚もまた人と同じでしょう?ヴェルドミールには沢山の種族がいます。今更種族が増えたからと言って気にする必要はありません。それにタクマさんを鑑定できる存在は私たち神と、タクマさん自身しかいないのですから」
「そうか・・・新しい種族になったと思えば良いのか・・・。分かりました。全て受け入れる事にします」

 タクマがすべてを飲み込み了承すると、ヴェルド様は微笑みながらタクマの頭の上に手を翳すのであった。


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