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生産国アムスの罪

回復

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 急いで空間跳躍を使用したタクマ達はリンドの真上に出現していた。タクマは普段の戦闘装備ではなく、フェイスマスクだけを装着している。

「さて、先ずは斥候をどうにかしないとな」

 タクマがそう呟くと、ヴァイス達が斥候の無力化を名乗り出てくれた。

「アウン!(父ちゃん、俺達がやって来るよ!)」
「ミアー(お父さんはリンドさんを助けてあげて)」
「ピュイー(私は敵の様子を監視します)」
「クゥ(みんなの強化するよ)」
「・・・(回復手伝う・・・)」

 ヴァイス達はいつもよりも体を大きくして既に戦闘態勢になっていた。レウコンとブランはタクマの腕と頭に張り付いた。ブランが強化魔法をヴァイス達に掛けてやると、いつでも良いと伝えてきた。

「良し。とりあえず斥候はまだ殺すな。無力化して本隊に連絡が出来なくさせるんだ」
(((分かった!)))
「じゃあ・・・行け!」

 タクマの号令と共に地上へと飛び降りたヴァイスとゲールは斥候の排除に向かう。アフダルはそのまま高度を維持して本隊の方へと移動して行った。

「最近は湖で動き回っているせいか動きが良いな・・・お、ヴァイスが一人潰した」

 タクマは下へ降りるタイミングを計りながらリンドに念話を送る。

(リンド大丈夫か?今近くにいる斥候の人間を排除しているからもう少し我慢してくれ)
『来てくれたのね・・・ありがとう・・・』
(当たり前だろ。ジュードが心配していたぞ)
『そう・・・あの子が・・・?』

 リンドと念話をしている内に辺りの斥候はどんどん減っていく。それも接敵した瞬間にヴァイス達は気絶させている様で通信をしている形跡はなかった。

(父ちゃんおわったよー)(僕も終わったー)

 ヴァイスとゲールから全員の無力化が終わったと報告が入ったので、タクマはリンドが倒れている地上へと下りて行く。

「久しぶりに会うのにこんな形でとはな」
『そうね・・・ごめんなさい』

 タクマとリンドが話している間、ブランはリンドの体力を強化しレウコンは毒魔法と回復魔法を併用して回復を図っていた。

『あら?この子達は見た事が無いわね。それに兎ちゃんが強化して、蛇ちゃんが回復してくれてるのね。ありがとう』
「クゥ(僕が回復の間体力を減らないようにしてるだけ。それよりも大丈夫?)」
『ええ、強化してもらっているお陰でどうにかなりそうよ』
「・・・(もうちょっと待って・・・すぐ治してあげる)」

 ブランとレウコンはリンドの様子を見ながら適切に処置を行っている。タクマは周囲のヴァイス達が連れてきた気を失っている者達を見ていた。

(リンドはあいつ等に任せておけばいい。問題はこっちだな。唯の冒険者だったら殲滅ってのもありだったが・・・)

 タクマはこの斥候を鑑定した所、厄介な事が分かった。この斥候は生産国アムスに所属しているのだ。タクマは舌打ちをしながら今後の事を考える。

(ここで殲滅は簡単だ。だが、それをしてしまうとリンドが討伐対象になるな。だったらこいつらを生かしておいて、リンドがどこかに行ってしまったと思わせる必要があるか)

 タクマはそう考えて、先ずはリンドの体に探知されるようなものが付いていないかを確認する。探知の結果、探知の魔道具などは無かったので安心した。

「ブラン、レウコン。リンドの回復はどんな感じだ?」
「クウ!(体力はほぼ戻ってるよ!)」
「・・・(毒はもうちょっと・・・できた・・・)」

 無事に毒を取り除き体力も回復できている様だった。

「どうだリンド?違和感はないか?」
『ええ、問題なく動けるようになってる。それでどうするつもりなの?』
「現状できる事は幾つかあるが、選択肢は少ない。こいつらを殲滅して生産国アムスから狙われる事になるか、飛んで逃げたと思わせてから俺らの住んでいる湖に引っ越す事だ」

 タクマが考えうる選択肢を提示すると、リンドは即答で行動を決めた。

『これからずっと追われる生活はごめんだわ。あなたには面倒事を背負わせてしまうけど受け入れをお願いするわ』
「大丈夫だ。連れて行く予定の場所は俺以外の人も居るが、良い奴ばかりだ。上手くやってくれれば問題ない。周辺はちゃんと自分で手に入れた土地だし」

 タクマがそう言うとリンドは少し安心したようだ。

「いいか?これからの行動を話すぞ。」

 タクマは次の行動を説明し始めた。タクマの計画はこうだ。

1.リンドはヴァイス達を乗せ離れた所にいる本隊の見える高度で目立つように飛び去る。

2.飛び去った後は人間が見えない高度まで移動して待機。

3.タクマは本隊の責任者と話し合い、手出しをさせないように警告する。

4.交渉が終わったら合流し、湖へと移動する。

 説明が終わるとリンドは渋い表情をしていた。

『それだとあなたのリスクが増えるじゃない。そのまま移動しちゃったら駄目なの?』
「ただ逃げるだけではリンドに執着していた場合に厄介な事になる可能性がある。相手の目的を調べる為にも必要な事だ」
『色々考えているのね。前に会った時と変わった?』

 リンドは前回タクマと会っときと雰囲気が変わっている事に気が付いたようだ。

「俺も守る者が増えたしな。なんでも殲滅で済ませてしまうと他の者も危険にさらす事になる。流石にそれは出来ないんだ」

 タクマの説明はザックリとしたものだったが、リンドは理解してくれたようだ。

『交渉を任せてしまうのは申し訳ないけどお願いするしかないわね。』
「ああ、俺なりの方法で話をするさ」

 タクマは笑ってそう返事をした。

「さあ、行動開始だ」

 タクマの合図で速やかに行動に移す。ヴァイス達はリンドの背に乗り準備を済ませ、タクマは人質と共に飛んでリンドの後ろを飛んでいく。速度はゆっくり目にして貰い、本隊の目につくように飛んで貰った。


「おい!あれは!」「例の竜だぞ!」
「何故動ける!?」

 本隊の近くに差し掛かると、タクマの狙い通りにしっかりとリンドを認識してくれていた。

「リンド!このまま高度を上げながら飛び去って待機だ!」

 タクマの言葉にリンドはすぐさま反応して高度を上げながら飛び去ってくれた。

「良し、リンドが移動したのはあいつ等も確認したな。さて、こいつらを返しに行きつつ話をしに行くか」

 そう独り言をつぶやきながら地上へと降下していくのであった。
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