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生産国アムスの罪

事後報告

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「さあ、タクマ殿の話を聞かせて貰おうか。今度は何があったのだ?」

 コラル様は居住まいを正してタクマの報告を待つ。

「そうですね。事の起こりは・・・」

 タクマはジュードが慌てて助けを要請するところから事細かに話し始めた。するとリンドが毒を盛られて動けなくなっていたと言った所で口を挟んだ。

「ちょっと待て。ジュートと言うのはタクマ殿の家族の火竜だろう?その母親と言う事は・・・」
「ええ、襲撃者は火竜に手を出しました。ジュードの母親であるリンドは毒の影響でかなり危険な状態になっておりました。」

 そう言って話を続けるタクマは、家族であるジュードの頼みで救出を終えて、その後の襲撃者達への尋問を終えた所までを話し終える。

「話は分かったが、リンドという母竜を馬鹿な襲撃者から助けるだけでは私に報告をする必要はないだろう。恐らくその馬鹿な襲撃者が私に報告を必要とする何者かだったと言う事か?」
「そうです。その襲撃者たちは生産国アムスの正規兵達でした。」

 タクマが言ったアムスの正規兵と言う正体にコラル様は驚愕の表情を見せる。

「馬鹿な!あの国は竜信仰の厚い国だ。その国の兵が竜を倒そうとしていただと!?」
「実行した兵達は上官に竜がいる事は隠されていたようです。ただ命令がその土地にいる脅威を排除しろと言う命令だった為、疑問を持ちつつ竜の討伐に乗り出したそうです」

 アムス兵達と話した内容を詳しく説明するとコラル様は疲れた表情で話を続けるように促す。

「俺自身、俺の家族の大事な母親に手を出したアムスをそのままにするつもりはなかったのですが、ジュードの兄であるロキソ達が来るのが分かったので彼らに獲物を引き渡しました」
『お前があそこで引いたのは、やはり俺達に気付いていたんだな。コラル殿、挨拶が遅くなって済まない。俺はロキソ。ジュードの兄であり、今回の被害者であるリンドの子でもある。』

 おもむろにロキソが話し出したのでコラル様はびっくりしているようだ。

「しゃ、喋った?竜と言うのは人の言葉を話せたのか!?」
『我らは人とは違い、長い時を生きる。その分色々な知識を吸収するのでな。言葉を理解するのはその副産物でもある』
「そ、そうだったか・・・。では私も自己紹介をしなければな。私はパミル王国の貴族でコラル=イスル侯爵だ。タクマ殿の友人でもある」
『コラル殿、お互いの事が分かった所で話を進めよう。ここからは俺が主犯なのでな。俺が話をさせてもらおう』

 そう言ってロキソは自分の行動を全てコラル様に話していく。竜の説明に口を挟む事はなく、最後までしっかりと話を聞いていた。

「私に報告が必要だったわけだ・・・。で、今回はタクマ殿は裏方と言う訳か」
「そうです。ロキソの指示のもと動いた形になります」

 ため息を付きながらコラル様は話を続ける。

「まさか、アムスの将軍がその様な蛮行を指示していたとは。それで話し合いの結果は土地の不干渉と将軍本人とその一族の処刑か。それと竜に対する不干渉ってところかな?」
『そうだ。現在、弟達が襲撃された土地に戻っており、しっかりと約束が守られるか監視している。俺と母は、タクマの温情で彼の土地に住まわせてもらっている。』

 コラル侯爵はため息を付きながらタクマに向き直り口を開いた。

「これは私の手に余る報告だぞ。申し訳ないが王に報告をさせて貰うが大丈夫か?」
「問題ありません。恐らくアムスにも諜報員を送っているのでしょう?今頃、その報告を受けて大騒ぎなんじゃないでしょうか」

 タクマはパミル王が草を放ってない訳はないと考えていたので、城の混乱が予想で来ていた。コラル様はその事に思い至ったらしく真っ青な顔で立ち上がった。

「君たちの報告は終わったな!?私は急いで城に向かわねばならん。聞いた事を報告せねばならんからな。あ!帰るなよ!絶対に呼び出されるからな。いつも通り家は好きに使って良いから、大人しく待っていてくれ。では私は行く!」

 慌てて城へ上がる準備を整えたコラル様はあっという間に出かけてしまった。

『タクマよ。コラル殿は行ったがお前は行かなくて良いのか?』
「なんで?付いてこいともいわれなかったし良いだろ。それに俺はタイヨウの世話もあるし。なー、タイヨウ?」
「あう?だ~」

 タクマはタイヨウをあやしながら、ロキソと話を続ける。

「それに、あっちも俺に厄介事を丸投げしているんだ。だったら、俺らの事後処理位やってくれないと困るだろう?」

 そう言ってニヤリと笑いかけると、ロキソはため息を付きながら苦笑いをしていた。

『結構腹黒いのだな。まあ、そのくらいでないと貴族と渡り合うなんぞ出来んのだろうが』
「貴族は弱みを見せたら、アッと言う間に利用されてしまうぞ?俺は彼と友人関係を結べているからまだマシだけど」
『人の付き合いというのは色々と大変なのだな・・・』

 しみじみと言うロキソにタクマは笑い返すしかなかった。
 その頃、城へ向かうコラル様はと言えば・・・。タクマ達に毒づいていた。

「くそっ!次から次にやらかしおって!何で使いっ走りみたいな事をしなければならんのだ!」

 そうぼやきつつ城へと急ぐのであった。
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