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パミル王都 孤児院崩壊編

王都の孤児

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 子供達は自分達が見た光景によって、楽しい王都観光は苦いものとなってしまっている様だった。楽しい物を見た感想もしっかりとあったのだが、それ以上に自分達のどん底の光景を思い出してしまったらしく、一様に沈んだ表情をしていた。感想を聞かれるまでは思い出さないように努めて明るく振舞っていたのだが、コラルの一言をきっかけに自分達に重ね合わせてしまったそうだ。

「そうか・・・だがそれを聞いてしまって放っておけるほど私は薄情ではないぞ。どうにか助ける方法を考えようではないか。すまないが詳しく教えてくれないだろうか」

 コラルは子供達を刺激しないように優しい笑顔を浮かべながら話を促す。

 子供達が言うには、ここを出て暫くはとても楽しい時間を過ごしていたようだ。屋台で食べ物を買って食べたり、湖で待っている人にお土産を買って貰ったりしたそうだ。そして子供達が最初に異変を感じたのは教会に行った時だそうだ。
 タクマや湖の住人は教会ともつながりが深いせいか、子供達はお祈りを欠かさないのを身近で見ている。自分達も当然欠かす事はない。なので教会に来た時は当然お祈りをする。だが、連れて行かれた教会では、立ち入りを拒否されたと言う。

「教会は全ての人が平等にお祈りが出来るはずだ。それを拒否?」

 コラルは子供達の話を邪魔しないように小声でつぶやく。そして隣に控えている使用人に事実かを確認していた。
 教会でお祈りできなかったのは、そこまで気になってはいなかったようだが、子供達が異変を感じたのはその後の事らしい。
 教会から離れる時、併設されている孤児院が閉鎖されているかのように静かだったのだそうだ。庭にも建物にも気配がほとんど無かったと言う。

「話を止めてすまないが、子供の姿が全くなかったのかい?」
「うん・・・僕達がいつも行く教会や孤児院は僕達みたいな子がいっぱいなの。だけど、小さい子の姿は全くなかったの。その後、教会から離れた水路の近くを通ったら・・・前の僕達みたいな子達が・・・」

 そう言って涙を浮かべながら俯いてしまう。

「タクマ殿。ここまでの話どう思う?」

 コラルは自分でも予想はしているのだろうが、タクマに意見を求める。

「孤児院があるが機能している感じが無く、孤児が王都の片隅で隠れるように生きている。しかも教会が一般人の礼拝を拒否。これだけでも予想は付きますよね」

 タクマは子供達の話に基づいて教会の現状をコラルに言わせる。

「王都の教会が腐敗か・・・」
「今の話を聞いていればその可能性がありますね」

 コラル自身も話を聞いて同じ感想を持ったらしく、すぐに行動に移す事になった。

「とりあえず、この事は城に報告だ。速やかに孤児たちを保護し、話を聞くことにしよう。ただ、教会も絡む事なので、同じ話を城で話して貰う事になる。それまで逗留してもらう事になるが大丈夫か?」

 コラルは子供達を証人としてここに逗留させたいようだ。その為、保護者であるタクマの許可を求めてきた。

「この子達が了承すれば構いません。ただ、私も同席が条件ですがね」
「もちろんだ。その辺はしっかりする。どうかな?君たちが見たと言う孤児たちを救うために協力を頼めないだろうか」

 コラルは子供達に目線を合わせ、真摯に頼み込む。

「あの子達助かる?」
「方法は決まってないが、必ず保護する」
「いじめない?」
「君たちや孤児たちに嫌な思いはさせない」
「お父さんも一緒?」
「ああ、タクマ殿も一緒に泊まってもらう」

 コラルは子供達の拙い質問にもしっかりと答えてくれた。子供達はしっかりと前を向いてコラルに答える。

「僕達、ちゃんとお話しするから。だからあの子達を助けてあげて!」

 その言葉にコラルはしっかりとした言葉で返す。

「ありがとう。これからすぐに城に使いを出して、人を派遣して貰う。今日から暫くはここが君たちのお家になる。好きな様に使ってくれて良いからな」

 そう言ってコラルは執務室へと移動して行ってしまった。

「お父さん、僕達余計なことしちゃった?」

 もしかしたら余計な仕事を増やしてしまったのかと不安そうに言う子供達に、タクマは笑顔で話しかける。

「お手柄だと思うぞ。お前たちは孤児を見ていられなかったんだよな?だから話した」
「うん・・・」
「俺は嬉しいぞ。みんな優しく育ってくれていて」

 そう言ってタクマは子供達の頭を撫でてやった。

「いいか?暫くはここにお世話になるから、使用人の方たちに挨拶をしないとな」
「「「「はーい!」」」」

 子供達から良い返事が聞けたところで、タクマは傍に居る使用人に話しかける。

「すまないが、この子達を使用人全員に会わせてやってくれないか?挨拶は大事だろ?」

 使用人はタクマが何を言いたいか察したようで、子供たちを快く連れて行ってくれた。タクマは遠話のピアスを起動させると、すぐにアークスへと繋がる。

(タクマ様。どうなさいましたか?)
(王都で問題が発生したので、帰るのが数日遅れる事になる。今回は子供達もこちらに残る事になったから報告をな)
(分かりました。ですが戦力的に大丈夫でしょうか?ゲールしか連れて行っていませんが)

 アークスはタクマとゲールだけでは警備の手が足りないのではないかと言う。

(そこまで危険な事は無いと思うが、子供達に何かあっても困るから、夜にでもいったん戻る事にするよ)
(分かりました。ヴァイス達には一応言っておきます)

 念話を切ったタクマはソファーに身体を投げ出し、この後起こるであろう事にため息を付くのだった。
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