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パミル王都 孤児院崩壊編

同化した司祭

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「さて、行くか」

 瘴気に覆われている結界をそのまま解除するわけには行かないので、まずは瘴気を減らす事にした。結界に城でも使った浄化の炎を使用する事にした。更に、人や建物には影響しないようにイメージを追加する。結界の中心部分に発動させた浄化の炎は周辺に漂う瘴気を浄化しながら結界全体に広がっていく。その姿は、瘴気を食べて大きくなっているかのようだった。
 とりあえず結界内の空気中の瘴気は減らす事が出来たので、教会の出入り口に沿って張っていた結界の一部を解除し扉を蹴り飛ばす。

「ヘブッ!!」

 蹴り飛ばした瞬間、扉の向こう側で間抜けな声が聞こえる。タクマはそれをスルーして教会内へと入った。そしてすぐに結界を元に戻して誰も出入りが出来ないようにする。自分に強固な結界を施しながら口を開く。

「何か間抜けな声が聞こえたけど、声の主が司祭なのかな?」

 タクマはそう言って周囲を探すと蹴り飛ばした扉の残骸と共に倒れている人を発見した。

「おい、扉と一緒に吹き飛ばされたからと言ってダメージを受けるほど雑魚なのか?」

 タクマは倒れている人に向かって挑発的な発言を投げかけると、意外な事に返事が返って来た。

「『くっくっくっ・・・私を雑魚だと言う割には安易に近付く事はないのか』」

 瓦礫を派手に吹き飛ばしながら立ち上がった男は濃厚な瘴気を身にまとっている。タクマは聖なる炎を身に纏って結界を解除する。タクマの前に立つ男からは二種類の声が響いていたので警戒度を引き上げたのだ。そして余裕を見せて棒立ちの男に鑑定を発動させる。

名前:イエード=デルタ

種族:半魔人(元人族)

職業:闇の司祭

スキル:瘴気蔓延(大)、身体強化(大)

(あれ?半魔人ってあるけど弱くないか?)
(マスターにとってはと言う前提がありますね。恐らく城の騎士たちで倒すにはかなりの犠牲が出るレベルだと思います。それに彼の首を見てください)

 ナビに促されて鑑定を発動したままイエードの首に掛ったネックレスを見る。

邪神の首飾り

邪神の遺灰を分散して封印した宝飾品の1つ。適性のある生き物に寄生するか同化する事で邪神の力を行使する事が出来る。

同化時の使用可能スキル
洗脳、傀儡、指揮、自爆、瘴気生成

(んー、どちらも直接戦闘向きではないのか。どちらかと言えば瘴気を作ってまき散らして洗脳するのが目的か。洗脳した人間を手駒として戦力にする感じか)

 タクマが戦力の考察をしていると、闇の司祭に堕ちてしまったイエードが話しかけてくる。

「『私たちの事は理解できたようだな・・・貴様は邪神像を浄化した本人ようだな。その炎は神聖魔法が込められているみたいだしな。それも神気で魔法を使うとは。我らとは相性が最悪だ』」
「そう思うなら大人しく浄化されてくれるとありがたいっな!」

 タクマはそう言って聖なる炎をイエードに向ける。だがイエードも瘴気を炎に向けて対抗する。

「『ククク・・・まあ、そう慌てるな。壊れていない人間と話すのは久しぶりなんだ。消える前に話位しようではないか』」

 そう言ってイエードはタクマと話がしたいと言ってくる。タクマは警戒を解く事なくそれに応じる事にした。

「だったら、こちらの質問に答えてくれるか?」
「『よかろう』」

 同意を得られたので、早速質問を開始する事にした。最初にタクマは国を乗っ取る目的を聞く。

「『目的か・・・邪神のアイテムの目的は一つ。邪神の復活だ。それにはたくさんの人間の命を贄としなければならんからな。そして器であるイエードの目的は、簡単に言えば逆恨みだな』」
「邪神の目的は分かるが、イエードは逆恨みで邪神を復活させようとしていたのか?」

 タクマはイエードが言っているくだらない理由を聞き呆れてしまう。イエードは総本山の遺跡で教会の指示の許、発掘と研究を担当している人間だった。だが、急にパミル王国に司祭として出向する事になった。期限付きとは言え、自分が発掘した邪神のアイテムを研究できなくなる事はイエードにとって不本意だったそうだ。彼は自らが発掘した邪神アイテムを発動させ、半分を洗脳に使う為に隠して来たそうだ。残りの邪神像と首飾りは、研究の為に王都へと持ち込んだ。像は洗脳の実験の為に城へと送ったのだそうだ。

「その時点で研究者として終わってるだろ。研究を初めから人体実験でするなんて」
「『貴様の言う通りだ。だがその時までは実験で済まそうとしていたようだが、ヴェルド神の降臨によって話は変わって来たのだ。あやつは危険な遺跡のアイテムの研究発掘を全て禁止した。その事によってイエードは壊れてしまったのだ』」

 教会は無事に洗脳が出来ていたようだが、初めに決まっていた期間は王都から移動は禁止されている。しかも、王都に居る間に遺跡の研究が禁止されてしまったのだ。

「お前が壊れた事については何も言う気はないが、ヴェルド様が研究や発掘を禁止して研究成果やアイテムなどは教会の集められる事になっている。それはどうなっている?」
「『ヴェルド神は教会に悪用させないために、聖化と言う方法をとったのだ。運び始めた直後に馬車ごと封印を施したのだ。そして馬車ごと直接保管庫に入れさせた。だから教会の人間も手が出せん』」

 どうやら禁術や禁忌魔法については心配はなさそうだ。まだいくつか聞かねばならない事があるのでタクマはゆっくりと口を開くのだった。



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