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パミル王都 孤児院崩壊編

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 瘴気に侵された教会と孤児院、そして建っていた土地を浄化し終わったタクマは城へと戻ろうとしていた。するとそれを遮るようにナビが待つように言う。

(マスター。城へ戻るのは少し待ってもらえますか?地下に宝物探査の反応があります)

 タクマはナビに指摘を受けて思い出した。この国で研究していた禁術や禁忌魔法の資料やアイテムが保管されいるのをすっかりと忘れていたのだ。

「ああ、そう言えば禁術関係は教会が保管していたんだったな。とりあえず、コラル様に聞いてみるか」

 タクマは遠話のカードを取り出し魔力を流し込む。コラルはタクマからの連絡を待っていたらしく、すぐに通話が始まった。

『タクマ殿か!?君が連絡をしてくるって事はどうにかなったと言う事か?』
「ええ。報告は後ほどしますが、とりあえず指示を受けなければならない事案がありまして」

 タクマはザックリと司祭は邪神のアイテムと共に浄化されてしまった事、そして孤児院と教会も瘴気に侵されていたので破壊して浄化をした事を話す。更地になった敷地に宝物の反応があったので扱いをどうしたら良いか確認をする。

『なるほど。ちょっと待ってくれ・・・・はい・・・ああそう言う事ですか・・・タクマ殿。分かっているとは思うが、教会の敷地の地下にある宝物と言う事であれば王国が持ち込んだ禁術や禁忌魔法が保管されている場所だろうとの事だ。今から私が担当者を連れてそちらへ行くから待っていてくれ』
「分かりました。お待ちしています」

 遠話を終わらせるとタクマは再び敷地に結界を張りなおす。結界を張り終わって一段落していると、見回りをしていた騎士が集まって来た。

「あ。あの・・・教会のこの状態は・・・」

 恐る恐るタクマに聞く騎士は、怖いものと対峙している様な表情で質問をしてくる。

「まあ、びっくりしているだろうが落ち着いてくれ。教会と孤児院は瘴気に侵されていたので破壊して浄化を行った。王様には許可を得ているから安心しろ。それと、コラル様が人を連れてここへ来ることになっているから警備を頼む」
「「「「はっ!!」」」」

 タクマが指示を与えると、速やかに警備に取り掛かっていく。タクマはコラル達が来るまで暇だったのでアイテムボックスから作り置きのコーヒーを取り出し、カップに入れて一息をつくことにした。コーヒーを飲みながら、タクマは一人呟く。

「まったく・・・拠点が出来れば落ち着いて旅行が出来ると思ったんだがな・・・トラブルばかりで全然ゆっくりできん」
(そう言う割にはマスターは楽しそうですが?)
「まあな。色々あって家族も増えたし楽しいのは確かだ。だが、トラブルはいらないんだよ。俺とヴァイス達、それに湖に住んでる奴らがのんびりと出来れば最高なんだがな」
(確かにお店に関しては仕入れもできていないですもんね)
「そうなんだよ。何かいい方法があれば良いんだけど・・・」

 タクマとナビが話していると、遠くの方から豪華な馬車が近付いてくる。

「お?来たかな?」

 タクマは残ったコーヒーを飲み干して、カップにクリアを掛けて仕舞った。馬車はタクマの前に止まり、中からコラルと女性がおりてくる。

「待たせたな。こちらの女性は・・・」
「ナール=イシューです。よろしくお願いします。聖遺物の研究をしていました。今は聖遺物の管理を任されており、教会へと搬入したのも私です」

 コラルが連れてきたのは元々遺跡で禁術や禁忌魔法の発掘、研究をしていた責任者だそうだ。

「へえ、研究者なら自分の研究テーマを禁止されたら、腐るか暴走するかのどっちかだと思っていたんだがな」
「言われた時は反発もありましたが、実際に研究をしていると危険な物が多いのも事実でしたから・・・」

 実際に禁術や禁忌魔法を研究していた身としては、それが危険な事だと言うのもきちんと理解している様だった。

「なるほどな。とりあえず、土地は浄化して危険はないが、中がどうなっているかは分からんから確認を頼みたい」
「分かりました。保管している物の確認が終わり次第、タクマ殿に預けよとのご命令ですから速やかにチェックをさせていただきますね」

 そう言ってナールはタクマに結界を解除させ、敷地内へと入って行った。それを見届けたタクマはコラルの方に無言で向き直る。

「私に抗議をされてもな・・・王国の聖遺物は教会で管理となっていたのは事実だが、今の状況で一番安全なのはタクマ殿のアイテムボックスしかないだろう。容量もないみたいだしな。なので神とも関係のある君が持っているのが一番いい」
「確かに正論だから何も言えませんが・・・まあ、下手に保管庫を作っても危険か・・・分かりました。お預かりしましょう」

 タクマが王国が管理している物を全て引き受ける事になったのだが、コラルはさらに続ける。

「この先総本山に行った時にも同じ事になるだろうがな。あそこにも沢山のアイテムや資料が集められているだろうし」

 タクマはコラルの話を聞きながら深いため息を付くのだった。ため息を付きつつ敷地を見てみると、ナールが手を振ってタクマを呼んでいる。ナールの所までコラルと共に移動すると3m四方の大きさで土を吹き飛ばすように言われる。

「下手に荒らされないように封印を施し埋めたのです。さあ、土を吹き飛ばしてくれますか?」

 ナールに急かされながら言われた通りの大きさと深さで土を吹き飛ばした。そこには金属の扉で固く閉ざされた保管庫が現れた。ナールはブツブツを呪文も詠唱し、手を扉に向けて発動する。

「アンロック!」

 彼女の魔法の発動と共に扉の鍵部分が光り、カチリと言う音と共にロックが解除された。タクマは重そうな扉を開くと、地下に向かった坂道が現れる。

「さあ、この坂の下です。行きましょう」

 ナールを先頭に、タクマとコラルは保管庫の中へと降りていくのだった。


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