上 下
230 / 281
パミル王都 孤児院再生編

帰ろう

しおりを挟む
 途中までは始める商店の話で盛り上がっていたのだが、王妃二人が何か言いたそうにしている事に気が付いた。

「タクマ殿・・・ちょっと言い辛いのだけど、一つ頼みたい事があるの」

 タクマは話しの内容にあった化粧品が欲しいのかと思っていたのだが、二人が言いたいのは違う事だった。

「子供達に指輪は問題ないのだけど、私たちは・・・ね」
「ああ、そう言う事ですか。分かりました、では交換しますので指輪を渡して頂けますか?」

 認証魔導具である指輪が良くないらしい。既婚者に指輪を贈るのは誤解を受ける可能性があるのだ。2人は指輪を外してタクマに返す。

「違う物を用意しますのでテラスをお借りしても良いですか」

 許可を貰ってテラスに出たタクマは、認証された指輪を魔法で粉々にした。一度認証された魔導具は再使用が不可能だからだ。その後はスマホを取り出して異世界商店を起動させる。

魔力残量:∞

カート内

認証用ブレスレット 2個:3,000,000

合計:3,000,000

 すぐに決済して応接室へと戻り、二人にブレスレットを渡した。目の前で装着してもらい認証を済ませる。

「我が儘を言ってしまってごめんなさい。でも余計な勘繰りを避けるためには・・・ね」
「お気になさらずとも大丈夫です。こちらに配慮が足りませんでいた」

 無事に目的を果たしたタクマ達はお暇する事にする。マギーとショーンは満足してくれたのか、ヴァイス達を素直に開放してくれた。

「長々と話してしまい申し訳ありません。今日はこの辺で失礼します。近い内にまた会いましょう。その時までお元気で」

 タクマ達はコラルを迎えに宰相の執務室へと移動して、馬車で邸宅へと戻る。

「タクマ殿。これで一先ず王都でやる事は終わったと思うが、帰宅はどうする?」
「そうですね。明日にでも湖に帰ろうかと思います。コラル様はどうします?」
「すまんが、湖に帰る前に私をトーランに送ってもらえるか?扉も設置してもらわねばならんしな」

 コラルもトーランへと帰れるとの事なので、最初にトーランへ移動してから戻る事になった。コラル邸に到着したタクマ達は早速子供達と孤児達を応接室に呼ぶ。コラルは休みたいと言って私室へ行ってしまっている。

「明日、家へ帰ろう。俺のやる事も終わったし、みんなも早く帰りたいだろうしな」
「みんな元気かなー」
「家に帰るのー」

 子供達はようやく帰れると聞いて安心している。初めて行く事になる孤児たちは少しだけ不安そうな顔をしているが、新たに住む場所に期待もしている様だった。王都滞在が最終日と聞いたコラルの使用人たちは、その夜の食事をとても豪華なものにして子供達に喜ばれていた。
 翌朝。コラル邸の庭には湖に移動する面子が勢揃いしている。コラルと護衛達も戻る準備を終わらせていた。

「じゃあ、みんなは少し待ってくれ。コラル様たちを送って来るからな」

 子供達を待機させて、まずはコラル達を範囲指定してトーランへと飛ぶ。到着すると、コラルは執務室にまっすぐ向かってしまった。トーランでの仕事が山積みになっている為だ。タクマは予め言われていたので領主邸の応接室に空間跳躍の扉を設置した。設置が終わると執務室へ移動して報告を行った。

「無事に扉の設置が終わっております。恐らく城では既に分かっているかと思います」
「そうか。では扉の前に一人いさせておくか。すまんな、面倒な事をさせて」
「いえ、大丈夫です。子供たちを待たせていますのでこれで失礼します」

 タクマは足早に執務室から出て王都へ戻る。

「あ!おとうさん!」「はやく帰ろー」
「タイヨウに会いたいなー」

 タクマが現れてすぐに抱き着いた子供達は口々に帰りたいと騒ぎ出す。

「分かった、分かった。じゃあ、早速家へ帰ろう。フロン達も準備は良いか?」

 フロンを始めとした孤児たちもしっかりと準備を済ませている様だったので早速飛ぶ事にする。ちなみに体調が戻り切っていない子供達は用意された椅子に座って貰っていた。移動するメンバーを範囲指定してサクッと湖へ飛ぶ。
 自宅の庭に移動したタクマ達は無事に自宅へと到着した。

「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま。体調が戻ってない子も居るから、順番連れて行ってくれるか?」

 アークスは動けない孤児たちの為に人を準備して待ってくれていたようだ。動けない子たちを優しく抱き上げて家の中へと連れて行ってくれた。

「ようこそ。ここならだれに気を遣う事なく生活できるからゆっくり過ごしてくれ。話は後でゆっくりとするから、使用人の案内に従って自分の部屋を確認してくれ」

 孤児たちを部屋へと案内させたタクマは執務室へと移動した。子供達は帰宅の挨拶をしに各家を突撃している。

「タクマ様。孤児たちを無事に部屋へと誘導しました」
「ありがとう。扱いはウチの子達と同じで良い」
「分かりました。それと、子供たちを養子に迎える手続きはいつでもできるようになっています。孤児たちの手続きも一応できるようにしてあります」

 アークスはタクマから連絡を受けてから、速やかに手続きが出来るように動いてくれていた。

「そうか。助かる。子供たちには近い内に話をしよう。孤児たちはここでの生活を体験してもらってから、どちらで生活をするか決めてもらうつもりだ」
「分かりました」

 アークスは孤児たちの世話の為に退室していった。タクマは椅子の背もたれに寄り掛かって呟いた。

「ようやく一段落か・・・だが、やる事も山積みだ。一個一個終わらせて、あいつを・・・夕夏を迎えに行かないとな」

 そう言いながら深いため息を付く。だが、タクマは分かっていなかった。これから先も面倒事が目白押しだと言う事に・・・

 
しおりを挟む

処理中です...