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子供達の新たなる一歩と開店準備編

完成

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 無事にスライムをテイム出来たので、タクマはヴァイス達を家に帰してトーランへと戻る。一応町の外から飛んだので、しっかりと門を通って町へ入った。夕方に差し掛かっているので辺りは薄暗くなっている。店に向かいながらアークスに連絡を取る。お腹をすかせた子供達を待たせたくないので先に食事をするように言っておく。ちなみに店をやる予定の者達は全員店に来るように言ってあるので、すぐに来るだろう。
 店の近くまで来ると、門の前に仁王立ちでタクマを待つ親方がいた。

「遅いぞ!何をのんびり歩いてやがる・・・って、なんだ?その銀色の奴は?」

 タクマを待ちわびていた親方は一喝してやろうと声を上げたのだが、肩に乗っているアルジャンとプラータに目が行ってしまった。

「こいつらは店に必要なので外でテイムしてきました。まあ、危害は加えないので大丈夫です。で、どうしたんですか?」
「お、おう。とりあえず俺達の技術を結集した物が出来てる。ちょっと見てみてくれ」

 親方は早く見せたかったらしく、答えを言う前にタクマの襟を掴んで引き摺って行く。店に入ると、タクマ店の中に放り投げて周りを見るように促した。

「まったく・・・荒っぽいですね・・・・おお、これは・・・」
「どうだ!俺らの本気は?」

 店の中は最初の状態とは全く違う様相をしていた。真っ白だった壁に薄っすらと溝が出来ており、ただの白壁よりも高級感を醸し出している。タクマが頼んでいたカウンター式の仕切りは、壁との調和を考えて、白樺のような木を使って統一感を出しているのだ。カウンターの下の壁もしっかりと色を合わせて作られており素晴らしかった。

「すごいです。ここまで早く完成するのも驚きですが、すべてに統一感があるのが素晴らしい」

 そして客席であるテーブルセットが凄かった。テーブルの脚と椅子の足が猫足の様になっており、技術の高さが際立っていた。

「そうだろう、そうだろう。この店には俺達のすべての技術をつぎ込んだ。使った素材も、トーランで扱っている中で厳選した物を使った。その方が長く使えて味が出るしな」
「なるほど。私としてはありがたい事です。私としては問題ないです」
「そうか。時間も掛からずに良かったぜ。元が良いものを弄るだけだからな」
「皆さんが頑張ってくれたおかげで、早く旅立つ事が出来そうです。ありがとうございます」

 タクマは大工たち全員に頭を下げて感謝をする。そして支払いは商業ギルドに預けてあるので帰りにでも寄ってくれるように頼んだ。

「良いのか?即金なのはありがたいが・・・」
「商業ギルドにはアークスを通じて、支払いを行うように預けてあります。本当なら私も同行したいのですが・・・」
「お前は、急ぐ必要があるんだろ。俺らは感謝をされて報酬がすぐに支払われるんだ。文句はねえよ。それよりも、早く旅に出られると良いな」

 親方を始めとした大工たちはタクマの気持ちを汲んで、一日で仕事を終えてくれたのだ。何かあればすぐに相談する様に言って、親方たちは商業ギルドへと歩き出すのだった。
 それと入れ替わりに、ファリンとミカを先頭としたメンバーが到着する。タクマは全員を店の中に入らせて説明を始める。客席の説明はあまりないが、しっかりと清潔さを保つように頼む。そして、本命の厨房だ。1つ1つ説明をしながら使用者権限を付与していく。ただ、殆どの道具が魔導具なのは驚きを隠せていなかった。

「タクマさん・・・どれだけお金かけたんですか?この建物だって別物になってますし・・・」
「それは気にしても仕方ないだろう。みんなはこれから協力してこの店を繁盛させないといけないんだし。俺がこの店に言う事は一つ。一般の家庭でも余裕で来れる価格設定にして欲しい。食材の殆どは保管庫にありえない程保管されているんだ。価格自体は安くしても問題ない筈だ。それに湖畔で育てている物を併用すると良いかもな」

 みんな素晴らしい店を与えられたことで、やる気が漲ってきたようだ。ファリンとミカに合いカギを渡すと、ついにトーランでやる事が終わった。後は全員に旅に出る事を報告すれば良いだけだ。

「さて、店の説明は終わりだ。後は家に帰って話があるからそのつもりでいてくれ」

 そう言って、タクマは全員を範囲指定して家へと飛ぶ。自宅の応接室に移動すると、食事の終わった子供達と、集められていた大人たちが楽しそうに話をしていた。

「あ!おとうさん!おかえりなさい」
「おかえりー!」
「おかえりなさい!」
「ああ、ただいま。ちょっと大事な話があるからしっかり聞いてくれな」
「「「「はーい!」」」」

 子供達はソファーに座ったタクマの隣に座り、他の者はタクマの声が届く場所で耳を傾けた。

「とりあえず、早急にやらなければならなかったみんなの店が出来た。とりあえずは皆の基盤は出来たと思う」

 タクマは皆の基盤が出来た事を喜びつつ、自分のこれからの予定を話し始める。子供達は少しだけ寂しそうな顔を見せたが、タクマからお母さんになる人を迎えに行くと聞いていたので冷静に話を聞いている。ファリン達大人も、タクマの焦りを感じていたのか冷静に話を聞いてくれた。タクマがすべてを話し終えると、アークスが口を開いた。

「タクマ様。どうか私たちの事は心配せずに、ユウカ様をお迎えに行ってください。本当なら、すべてを放り出しても行きたかったでしょうに・・・皆の生きる目的を作る為に出発を遅らせてくれていたのですね」
「確かにすぐにでも行きたかったさ。だけどな、俺にとってはお前たちも家族なんだ。それを放って迎えに行ってもあいつは喜ばない。そういう奴だから。とりあえずトーランでやるべき最低限の事は出来たと思う。すまないが、明日から旅に出させて欲しい」

 子供達は何も言わずに賛成してくれた。大人たちは自分の幸せを追えば良いのにと言いながらも早く行ってやれと言ってくれた。

「ありがとう。店の事はバートさんとアークスに相談をしながら進めてくれ」

 そう言ってタクマはヴァイス達と共に、その場を後にして私室へ戻るのだった。部屋に戻ると、タクマはヴァイス達に話しかける。

「さて、今回の旅はかなり急ぐ必要がある。それに湖の見回りとかもあるしな。だから今回旅に出るのはヴァイスとアフダルだ。ゲール達は交代で湖を守ってくれ」

 守る所がある以上、全員を連れて行くわけには行かないのだ。なのでヴァイスとアフダル以外は残ってもらう事にした。リンド家族がいれば問題はないだろうが、それでも何があるか分からないので戦力はあった方が良いと考えていた。

「ミアー(僕達、ちゃんとここを守っているからお母さんを助けてあげてねー)」
「ああ、しっかりと助けて戻るよ」

 タクマはしばしの別れとなるゲール達とたっぷりとスキンシップをとるのだった。
 


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