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最愛の人との再会と総本山壊滅編

プロポーズと話

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「みんな…本当にありがとう…ゆっくり休んでね…」

 タクマにお姫様抱っこで連れ出された夕夏は、従魔たちを優しく撫でて苦労をねぎらう。

「ねえ、タクマ。この子達を紹介して?凄く高貴な空気をまき散らしているけど…それに、同じ空気をあなたからも感じるわ」

 夕夏はタクマをまっすぐ見据え、答えを待つ。タクマは夕夏を抱き上げ、テーブルセットに座らせた。少しずつ回復してきている様で、しっかりと椅子に座ってくれた。タクマはアイテムボックスからコーヒーセットとサンドイッチを取り出し夕夏に食べるように促した。

「とりあえず、ゆっくり食べてくれ。話はその後でも出来るだろう?これからはずっと一緒に居るんだし」
「え?それって…」

 夕夏は目を見開いてタクマを見る。タクマは優しく笑いながら話を続けた。

「俺はお前が死んだと思っていたが、気持ちは変わってなかった。お前以外に俺と渡り合える奴も居ないしな」
「でも…私はあなたを置いて消えたのよ?とっくに気持ちは…」

 夕夏にとっては悠久の時をタクマと離れていたので、そう思うのは無理はないだろう。だがタクマにとっては、数年しか経っておらず夕夏に対する気持ちは変わっていなかった。

「夕夏。異世界転移はお前のせいじゃない。実際、俺も同じように飛ばされているしな。それにこっちの世界では、俺も色々あった。それはお前も一緒だろ。後な…俺の気持ちはずっと変わってない。俺の隣にはお前がいて欲しい」

 その言葉を聞いた夕夏は、目から大粒の涙を零しながらタクマを見る。

「わた、私も…私の旦那はあなたしかいない…本当に会いたかった…」

 泣き出してしまった夕夏を優しく抱きしめてタクマは改めて言う。

「夕夏…本当に会いたかった…違う世界でも良い…これからはずっと俺の横にいてくれないか?」
「それって…」
「ああ。俺の妻になってくれないか?」

 夕夏はタクマの口からプロポーズの言葉が出た事に驚いた。涙で濡れた顔は笑顔で染まっている。

「もちろん!私、あなたの妻になるわ」

 タクマに強く抱き着いた夕夏の声は弾んでいた。無事にプロポーズを受けた夕夏は、晴れやかな顔で出された食事を口にした。久しぶりの食事が終わると、夕夏の表情はタクマが知っている笑顔が浮かんでいる。

「さて、食事も終わったし俺の方の話をするか。いろいろあって話しておかない事があるんだ」

 そう言って、ヴェルドミールに来てからの時分の足跡を夕夏に話していく。タクマはヴェルドミールに来た日から細かく話す。

「へえ、真っ白な子狼…きっと可愛かったんでしょうね…」
「ああ、すごくかわいいぞ。見てみるか?」

 タクマはそう言ってヴァイスを呼んでやる。

「アウン?(父ちゃん呼んだー?)」

 タクマの足元に来たヴァイスに小さくなってくれるように頼むと、良いよと言って小さくなってくれた。そしてタクマの膝に飛び乗ったヴァイスを夕夏に抱かせる。

「いろいろと突っ込みたいけど…可愛いわ…」
「アウン?(父ちゃんの奥さんー?)」
「え?そうよ。タクマの奥さんになる夕夏っていうの。よろしくね、ヴァイス」
「アウン!(よろしくー)」

 タクマはヴァイスと夕夏のやり取りを見て、意思疎通が出来ている事に気が付いた。

「夕夏。ヴァイスの言葉が分かるのか?」
「あ、そうね。分かるわ。私の職業は魔物使いだから。動物の言葉なら問題なく分るし、話す事も出来るの」

 夕夏の職業は魔物使い。そのスキルは魔物を使役する事に特化しているそうだ。その為、自分で戦う事は出来ないとの事だった。

「なるほどな。その辺の事は落ち着いたら聞かせてくれ。まずは俺の事を説明しておかないと、色々誤解を受けそうだしな」
 
 タクマはそう言って、自分に起きた事を説明していく。途中、アフダルも呼んで自己紹介をさせたりもした。タクマの話に、夕夏は色々な表情をしながらも聞き入った。まるで、自分が傍に入れなかった時間を埋めるように話を理解しようとしている。

「あなたが孤児を?それは自分の子供として?」
「ああ。俺の子供として登録している。だから、俺と結婚すれば、自動的にその子達の母親となる訳だ」
「私がお母さん…」
「そうだ。…嫌か?」

 タクマは夕夏の答えを不安そうに待っていたが、それは杞憂だったようだ。

「そんなわけないでしょ!私が…私たちが!親になれるのよ。これほどうれしい事はないわ」

 夕夏にはタクマに対する負い目があったのだ。それは夕夏が幼い頃の病が元で子をなす事が出来なかったのだ。

「ねえ、ねえ。その子達は可愛い?どんな子達なの?」

 夕夏はタクマの話を遮り、子供達の話を聞きたがった。タクマは子供達の性格や名前を細かく説明していく。

「はー、早く会いたいわー。タクマがそこまでメロメロになるなんて、きっとみんな良い子達なのね」

 タクマは気が付いていなかったが、子供の話をする時には自然と笑顔になっているそうだ。

「まあ、すぐに会えるさ。従魔たちが起きれば。すぐに一旦送る為に戻るから」

 タクマは従魔たちが起き次第、夕夏たちを湖畔へと送るつもりなのだ。夕夏はタクマの一旦と言う言葉に反応する。

「一旦?私たちを送った後に何かやる事があるの?」
「ああ、野暮用があってな。俺とヴァイス達はすぐに戻らないといけないんだ。だが、湖畔にいる奴らは全員俺の家族だから心配しなくていい。そこで体を休めながらゆっくり…」

 ゆっくり休めと言おうとしたのが、タクマがすぐに離れると聞いて不安になったようだ。タクマは夕夏の頭を撫でながら話を続ける。

「野暮用と言ってもすぐに終わらせる。だから、家でゆっくり待っててくれ。…な?」
「もう!子ども扱い!分かった。早く帰って来てよ」

 夕夏はタクマの言葉を信じて湖畔で待つ事を了承してくれた。そして、夕夏の従魔が目覚めるまで、タクマの話を真剣に聞くのだった。


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