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トルメル建国記念祭
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薄暗い地下は、トルメルの国旗が両端に幾つも立ててある。その奥に小さな祭壇があって、祭壇の上には白色でぼくの掌の模様と同じものが刻まれていた。
いや、でも。模様の形が少し違っている。
ぼくの掌の模様は、三つの剣が中央にある館に向かっていて、その館の外側がギザギザとしているんだ。
その祭壇に剣と鎧、そして、盾が置かれていた。
ぼくは、すぐにそれらを装備すると、今度はトルメル城の外へと向かった。途中で、外廊下で倒れている女性を見つけた。
「もしや……ああ。あなたは勇者さま! ああ……ああ……ああ、どうか、この国を、お城をお守りください! まだ生きているものもおりますゆえ!」
「ああ……わかってるよ……」
ぼくは、その女性を近くの部屋へと押し込むと。小窓を開け放って、換気を良くした。再び外へと向かうころには、あれだけの城の外から聞こえていた騒がしさが静まり返っていた。
トルメル城の城下町の全ての建造物が、次々と白い煙を昇らせて腐り落ちていく。逃げ惑う人々も徐々に白骨化していった。ぼくは、城下町の道路を羽つき二本足の獣を斬り裂き、走りに走った。
「うおおおおーーーー!」
白い煙を全身で浴びながらも、ぼくは目に映った獣は瞬時に斬っていた。空から向かってくる獣も構わず斬り伏せた。
辺り構わず斬り崩していると、途端に辺りは更に静かになってきた。地面には、ぶすぶすと、白い煙を上げているおびただしい数の獣たちの死骸が山となっている。今度は、ぼくは城下町の外へと出ようとした。
ライラックに似ている白髪の男が、城の外へと向かう道すがら、ぼくの前に立ちふさがった。
「おお、勇者よ。なんて、強さなんだ! どうかそのまま北へ行ってくれ!」
「……今のぼくに話し掛けるな」
「魔のものは、この先の北の方にいるんだ。どうか、その剣で全て斬ってやってくれ。そして、この国の王を守ってやってくれ」
「……」
その男は泣いていた。ぼくは、何も言わなかった。その……ライラック家の者を置いて、白い煙を上げている城門を開けた。
わかっている……。
わかってるんだ……。
でも、ぼくは……。
魔族を倒すためだけに、ここへ来たんだよ!!
いや、でも。模様の形が少し違っている。
ぼくの掌の模様は、三つの剣が中央にある館に向かっていて、その館の外側がギザギザとしているんだ。
その祭壇に剣と鎧、そして、盾が置かれていた。
ぼくは、すぐにそれらを装備すると、今度はトルメル城の外へと向かった。途中で、外廊下で倒れている女性を見つけた。
「もしや……ああ。あなたは勇者さま! ああ……ああ……ああ、どうか、この国を、お城をお守りください! まだ生きているものもおりますゆえ!」
「ああ……わかってるよ……」
ぼくは、その女性を近くの部屋へと押し込むと。小窓を開け放って、換気を良くした。再び外へと向かうころには、あれだけの城の外から聞こえていた騒がしさが静まり返っていた。
トルメル城の城下町の全ての建造物が、次々と白い煙を昇らせて腐り落ちていく。逃げ惑う人々も徐々に白骨化していった。ぼくは、城下町の道路を羽つき二本足の獣を斬り裂き、走りに走った。
「うおおおおーーーー!」
白い煙を全身で浴びながらも、ぼくは目に映った獣は瞬時に斬っていた。空から向かってくる獣も構わず斬り伏せた。
辺り構わず斬り崩していると、途端に辺りは更に静かになってきた。地面には、ぶすぶすと、白い煙を上げているおびただしい数の獣たちの死骸が山となっている。今度は、ぼくは城下町の外へと出ようとした。
ライラックに似ている白髪の男が、城の外へと向かう道すがら、ぼくの前に立ちふさがった。
「おお、勇者よ。なんて、強さなんだ! どうかそのまま北へ行ってくれ!」
「……今のぼくに話し掛けるな」
「魔のものは、この先の北の方にいるんだ。どうか、その剣で全て斬ってやってくれ。そして、この国の王を守ってやってくれ」
「……」
その男は泣いていた。ぼくは、何も言わなかった。その……ライラック家の者を置いて、白い煙を上げている城門を開けた。
わかっている……。
わかってるんだ……。
でも、ぼくは……。
魔族を倒すためだけに、ここへ来たんだよ!!
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