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第一章_真昼の星の誕生
第十八話_無明の試験
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食事を終えた三人は場所を変える事にした。
行先は離れ……
桜井の仕事場だ。
パソコン、スピーカー、ヘッドホン、MIDIキーボード等の機材が鎮座するデスク周り。
室内は母屋の居間と同様、無機質で自分に必要なモノだけといった具合。
部屋の隅は母屋と同様に埃っぽい。
そんな部屋だからテーブルも椅子も無く、車椅子の桜井以外は地べたに座る事になる。
「さっそく本題に入ろうか。依頼内容は主にオリジナルソングの作成、歌ってみた用カバー曲の音源作成、録音スタジオの提供だったな」
「あぁ、値段交渉は後でするとして、何か気になる点とかあるか?」
客人にお茶も出さず話を切り出す桜井。
育ちのいい要は若干困惑している模様。
薄井は相変わらずの不愛想に苦笑いを浮かべたい気持ちを抑えながら問う。
「とりあえず二点。まず真昼野ステラの歌唱力について。貰ったファイルから上手いんだろうな?くらいは分かるが、はっきりどの程度の音域が出て、どの程度の声量があって、どの程度の表現力があるのか?そういった細かい部分を確認したい」
「正論だな。もう一点は?」
「僕はボカロPだ。人間用の録音機材は持ち合わせていない。依頼料とは別にそちらの料金も請求させてもらう事になるが?」
「それも正論だな。分かった、金はこちらで何とかする。要君に合ったモノを見繕ってくれ」
「言っておくがそこの素人が思っているより遥かに高くつくからな」
「うぅ……」
桜井は要を一瞥しながら皮肉を口にした。
どうやら要と一緒の食卓を囲んだ事で、少なくとも要は敵ではない事が分かったらしい。
この男は人との距離の取り方が分かっていない分、距離の詰め方が極端になる節がある。
簡潔に言えば、一部のオタクに見られる距離感のバグり方をしているのだ。
暗に今までの配信環境の悪さを責められた事に怯む要。
薄井はそんな彼をかばうように身を乗り出す。
「まぁ、そう言ってやるな。彼はまだこの世界に足を踏み入れて一ヶ月のヒヨッコなんだ」
「そうは言ってもあれは酷すぎるぞ。声はスマホから直接録音だったから環境音は入りまくってるしノイズだらけ。言わせてもらうが、あれは音楽じゃなくて雑音だ。
歌枠配信ならコンデンサマイクとオーディオインターフェイスぐらいはちゃんとしたモノを用意しないと話にならん。ポップガードやリフレクションフィルターみたいな小物だっているし、機材を繋ぐケーブルやヘッドホンみたいな付属品だって拘ればキリが無い。
ネットでの音楽活動をあまり気楽に考えてもらっては困るという話だ」
「はい……申し訳ありません……」
正論でボコボコに殴られて意気消沈の要。
あからさまに落ち込む要が哀れに思えたのか、桜井はため息を吐きながら話を切り替えた。
「まぁ、機材については必要なスペックや予算と相談だな。そのためにも真昼野ステラのレベルを正確に把握しておきたい。これから僕が用意する曲を謡ってくれ」
「はい!頑張ります!」
謡えると分かった途端、息を吹き返す要。
だがそれが桜井には能天気に映ったのか……
途端に表情が険しくなった。
「分かっていないようだから言っておくがこれは試験だぞ。もしつまらない歌を聴かせたら、この話は無しだという事を忘れるな」
「うっ……分かりました」
桜井の鋭い言葉に委縮し大きな身体を縮こまらせる要。
薄井はそんな彼の肩を励ますようにポンポンと叩く。
「そう気負わなくてもいい。君の歌声は俺の耳が保証する。それにここで成功しなくてもまた別の手段を探せばいい」
「ほぅ。この話を聞いた時から思っていたが珍しく強気だな」
「たりめぇだろ。推しを信じるのはファンとしての最低条件だからな」
「薄井さん……」
事も無げに想いを口にする薄井。
目を潤ませる要。
桜井の皮肉交じりの物言いもどこか楽しげだ。
薄井と同じオタクである桜井には、推しとファンの信頼関係が理解できたからだろう。
パソコンをいじる桜井の口元は僅かに持ち上がっていた。
「謡ってもらうのはこれだが……分かるか?」
「〈Sun Flower〉ですか?これなら分かります」
「そうか、歌詞に自信が無いならPC画面を見ながらで構わない」
「ありがとうございます……失礼します」
PC操作を終えた桜井が要に場所を譲る。
〈Sun Flower〉は夏の太陽が照り付けるひまわり畑が舞台に、出会いと別れの物語を歌った曲。
この曲の特徴は緩急の落差が激しく、早い箇所は尋常じゃないくらい早いところ。
それ故、優れたリズム感、丁寧な発声、的確な息継ぎが要求される。
この曲は桜井が作ったボカロ曲の中でも屈指の難曲で、人間がギリギリ謡える歌ランキングなんてものがあれば、間違いなく五本の指に入る超高難易度曲。
桜井はPC画面を見てもいいと言ったがこれは完全に罠。
一秒当たりに歌い上げる単語が多すぎて、歌詞を全く知らない場合は目で追うのは不可能。
歌詞を完璧に暗記して、よほど謡い込んでいないと攻略は無理だろう。
PCの正面で呼吸を整える要。
桜井の難題に薄井は息を吞む。
「では、始めるぞ」
「お願いします」
桜井が手元のマウスを操作すると同時、流れ出す軽快なドラムのビート。
そこに加わるベースとギターのアップテンポな伴奏。
短い前奏が終わり、そして……
⦅それは真夏の日太陽の下ひまわり畑輝く君♪澄み切った空焼けるような日差しどこまでも白♪眩しくて眩しくて眩しくて眩しくて眩しくて眩しすぎて♪……⦆
部屋の空気が変わる……
要の身体に真昼野ステラが憑依する。
息継ぎ無し、この間十秒足らず。
最初にして最高の難関のひとつだと言われる入りを完璧に謡いきるステラ。
このパートはテンポの速さも然る事ながら、ボリュームのある高音を求められる為、歌い手の呼吸が一気に消費される。
大抵のシンガーは息が続かず途中でつまずいてしまう鬼畜仕様。
歌の完成度に桜井は驚愕し、薄井は沸き上がる。
⦅キラキ~ラ♪太陽~は焼けるようで~♪ひまわりは歌うようで~♪……⦆
間奏を挟んでのABメロは比較的ゆったり目のテンポ。
入りは高音域中心だったのに対してこちらは中低音域が中心。
緩急の差が激しく意外にリズムが取りづらい。
丁寧な発声と音程、リズム感、広い音域帯を安定して謡う歌唱力が要求される。
そしてステラはその全てを完璧に熟す。
だが本番はここから……
この曲の難関の一つ。それはサビ。
⦅それは輝くような日々弾ける笑顔二度とは戻らない夏♪小麦色の肌の君終わりがくる夏休み♪会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて♪……⦆
再びの超高速テンポ。
先ほどまでがゆったりだった為、ここでの切り替えは謡い慣れたシンガーでも難しい。
ステラはこの部分も見事に謡い上げる。
その完璧すぎる歌に言葉を失う桜井。
一方薄井はと言えば、限界オタク化して今にも叫び出しそうになる自分を抑えるので必死だった。
⦅クラクラ~、太陽が暑すぎて~♪ひまわりの影で一休み~♪……⦆
この後やってくるのは落ちサビでの転調と怒涛の超高速超高音ラスサビ。
普通のシンガーなら呼吸が奪われるか、あるいは舌が絡まるかして生歌では謡えないであろう最高難易度のパート。
固唾を呑んで見守る薄井……
だがそれは杞憂だった。
目の前にいるステラ……
金剛寺要は幼い頃より音楽一家の中で英才教育を受け、音楽学校の歌唱部門では首席の成績を修める俊英。
⦅沈む夕日ひまわりの下零れる涙♪遠くへ行く君終わりゆく夏休みもう戻らない初恋♪苦しくて苦しく苦しくて苦しくてでも愛しくて♪……おぉぉぉおぉぉ~~~♪
沈んだ太陽ひまわりの下報われない恋、それでもいいそれでもいい愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~♪…………⦆
人間の限界に挑んだ極悪難易度曲を完璧に謡い切ったステラ。
もしここにカラオケマシーンがあったなら間違いなく100点満点をつけるだろう。
⦅〈Sun Flower〉でした。ご清聴ありがとうございました⦆
「うおぉぉぉぉおおおおお!!!ステラちゃ~~~~ん!!!」
「…………」
アウトロが流れる中、薄井と桜井に向かってお辞儀するステラ━━
━━桜井は絶句した。完璧に謡い上げたからだけではない。
ステラは歌詞に合わせてファルセットにエッジボイス、ビブラートにしゃくりにロングトーンといったテクニックを使い分けていたのに加え、フェイクで遊ぶ余裕まであった。
普通ならば歌詞を追うだけで精一杯の〈Sun Flower〉で……
これは真昼野ステラの歌唱力が尋常ではない事を示していた。
桜井に音楽の知識があったからこそ気づけた真昼野ステラの特異性。
隣で能天気且つ純粋に真昼野ステラの曲を楽しんでいる薄井とは感じ方がまるで違った。
「どうだ?スゲーだろ?」
「……あぁ」
したり顔の薄井に呆然と応じる桜井。
彼もまた、真昼野ステラの歌声に魅了されてしまったのだ。
だがボカロPであり作曲家でもある桜井透……
無明Pは冷静に別の事を懸念していた。
「おい、薄井。真昼野ステラの歌声を100%のクオリティでネットに載せようと思ったら、一級品以上の機材が必要になるぞ」
「……いくらだ?」
「最低でも100万だ」
「マジか!?」
「言っておくが最低ラインだぞ」
「…………」
厳しい現実冷ややかに言い放つ桜井━━
━━興奮から一転。
冷や水を頭からぶっかけられたような心境に陥る薄井。
今、彼は頭の中で電卓を超高速で弾いていた。
「はぁ~~~~~っ……本格的に金集めんとな…………」
「言っておくが僕は報酬面においても一切妥協しないからな」
「…………」
ここ最近で一番デカいため息を漏らす薄井。
分かってはいたけど避けては通れない茨の道。
情け容赦のない言葉を吐き出すクソ陰キャを拳で分からせてやりたくなる気持ちを必死で抑える。
⦅どうでした!?薄井さん!桜井さん!⦆
「……はぁ~、まぁやるしかないよな」
歌い終わった直後の興奮がまだ抜けきれず、頬を紅潮させる要。
ため息を一つ……
心底楽しそうな彼を見ていると、自分が悩んでいるのがバカバカしくなる。
口元をわずかに緩めながら次の計画を頭の中で組み立てる薄井であった。
行先は離れ……
桜井の仕事場だ。
パソコン、スピーカー、ヘッドホン、MIDIキーボード等の機材が鎮座するデスク周り。
室内は母屋の居間と同様、無機質で自分に必要なモノだけといった具合。
部屋の隅は母屋と同様に埃っぽい。
そんな部屋だからテーブルも椅子も無く、車椅子の桜井以外は地べたに座る事になる。
「さっそく本題に入ろうか。依頼内容は主にオリジナルソングの作成、歌ってみた用カバー曲の音源作成、録音スタジオの提供だったな」
「あぁ、値段交渉は後でするとして、何か気になる点とかあるか?」
客人にお茶も出さず話を切り出す桜井。
育ちのいい要は若干困惑している模様。
薄井は相変わらずの不愛想に苦笑いを浮かべたい気持ちを抑えながら問う。
「とりあえず二点。まず真昼野ステラの歌唱力について。貰ったファイルから上手いんだろうな?くらいは分かるが、はっきりどの程度の音域が出て、どの程度の声量があって、どの程度の表現力があるのか?そういった細かい部分を確認したい」
「正論だな。もう一点は?」
「僕はボカロPだ。人間用の録音機材は持ち合わせていない。依頼料とは別にそちらの料金も請求させてもらう事になるが?」
「それも正論だな。分かった、金はこちらで何とかする。要君に合ったモノを見繕ってくれ」
「言っておくがそこの素人が思っているより遥かに高くつくからな」
「うぅ……」
桜井は要を一瞥しながら皮肉を口にした。
どうやら要と一緒の食卓を囲んだ事で、少なくとも要は敵ではない事が分かったらしい。
この男は人との距離の取り方が分かっていない分、距離の詰め方が極端になる節がある。
簡潔に言えば、一部のオタクに見られる距離感のバグり方をしているのだ。
暗に今までの配信環境の悪さを責められた事に怯む要。
薄井はそんな彼をかばうように身を乗り出す。
「まぁ、そう言ってやるな。彼はまだこの世界に足を踏み入れて一ヶ月のヒヨッコなんだ」
「そうは言ってもあれは酷すぎるぞ。声はスマホから直接録音だったから環境音は入りまくってるしノイズだらけ。言わせてもらうが、あれは音楽じゃなくて雑音だ。
歌枠配信ならコンデンサマイクとオーディオインターフェイスぐらいはちゃんとしたモノを用意しないと話にならん。ポップガードやリフレクションフィルターみたいな小物だっているし、機材を繋ぐケーブルやヘッドホンみたいな付属品だって拘ればキリが無い。
ネットでの音楽活動をあまり気楽に考えてもらっては困るという話だ」
「はい……申し訳ありません……」
正論でボコボコに殴られて意気消沈の要。
あからさまに落ち込む要が哀れに思えたのか、桜井はため息を吐きながら話を切り替えた。
「まぁ、機材については必要なスペックや予算と相談だな。そのためにも真昼野ステラのレベルを正確に把握しておきたい。これから僕が用意する曲を謡ってくれ」
「はい!頑張ります!」
謡えると分かった途端、息を吹き返す要。
だがそれが桜井には能天気に映ったのか……
途端に表情が険しくなった。
「分かっていないようだから言っておくがこれは試験だぞ。もしつまらない歌を聴かせたら、この話は無しだという事を忘れるな」
「うっ……分かりました」
桜井の鋭い言葉に委縮し大きな身体を縮こまらせる要。
薄井はそんな彼の肩を励ますようにポンポンと叩く。
「そう気負わなくてもいい。君の歌声は俺の耳が保証する。それにここで成功しなくてもまた別の手段を探せばいい」
「ほぅ。この話を聞いた時から思っていたが珍しく強気だな」
「たりめぇだろ。推しを信じるのはファンとしての最低条件だからな」
「薄井さん……」
事も無げに想いを口にする薄井。
目を潤ませる要。
桜井の皮肉交じりの物言いもどこか楽しげだ。
薄井と同じオタクである桜井には、推しとファンの信頼関係が理解できたからだろう。
パソコンをいじる桜井の口元は僅かに持ち上がっていた。
「謡ってもらうのはこれだが……分かるか?」
「〈Sun Flower〉ですか?これなら分かります」
「そうか、歌詞に自信が無いならPC画面を見ながらで構わない」
「ありがとうございます……失礼します」
PC操作を終えた桜井が要に場所を譲る。
〈Sun Flower〉は夏の太陽が照り付けるひまわり畑が舞台に、出会いと別れの物語を歌った曲。
この曲の特徴は緩急の落差が激しく、早い箇所は尋常じゃないくらい早いところ。
それ故、優れたリズム感、丁寧な発声、的確な息継ぎが要求される。
この曲は桜井が作ったボカロ曲の中でも屈指の難曲で、人間がギリギリ謡える歌ランキングなんてものがあれば、間違いなく五本の指に入る超高難易度曲。
桜井はPC画面を見てもいいと言ったがこれは完全に罠。
一秒当たりに歌い上げる単語が多すぎて、歌詞を全く知らない場合は目で追うのは不可能。
歌詞を完璧に暗記して、よほど謡い込んでいないと攻略は無理だろう。
PCの正面で呼吸を整える要。
桜井の難題に薄井は息を吞む。
「では、始めるぞ」
「お願いします」
桜井が手元のマウスを操作すると同時、流れ出す軽快なドラムのビート。
そこに加わるベースとギターのアップテンポな伴奏。
短い前奏が終わり、そして……
⦅それは真夏の日太陽の下ひまわり畑輝く君♪澄み切った空焼けるような日差しどこまでも白♪眩しくて眩しくて眩しくて眩しくて眩しくて眩しすぎて♪……⦆
部屋の空気が変わる……
要の身体に真昼野ステラが憑依する。
息継ぎ無し、この間十秒足らず。
最初にして最高の難関のひとつだと言われる入りを完璧に謡いきるステラ。
このパートはテンポの速さも然る事ながら、ボリュームのある高音を求められる為、歌い手の呼吸が一気に消費される。
大抵のシンガーは息が続かず途中でつまずいてしまう鬼畜仕様。
歌の完成度に桜井は驚愕し、薄井は沸き上がる。
⦅キラキ~ラ♪太陽~は焼けるようで~♪ひまわりは歌うようで~♪……⦆
間奏を挟んでのABメロは比較的ゆったり目のテンポ。
入りは高音域中心だったのに対してこちらは中低音域が中心。
緩急の差が激しく意外にリズムが取りづらい。
丁寧な発声と音程、リズム感、広い音域帯を安定して謡う歌唱力が要求される。
そしてステラはその全てを完璧に熟す。
だが本番はここから……
この曲の難関の一つ。それはサビ。
⦅それは輝くような日々弾ける笑顔二度とは戻らない夏♪小麦色の肌の君終わりがくる夏休み♪会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて♪……⦆
再びの超高速テンポ。
先ほどまでがゆったりだった為、ここでの切り替えは謡い慣れたシンガーでも難しい。
ステラはこの部分も見事に謡い上げる。
その完璧すぎる歌に言葉を失う桜井。
一方薄井はと言えば、限界オタク化して今にも叫び出しそうになる自分を抑えるので必死だった。
⦅クラクラ~、太陽が暑すぎて~♪ひまわりの影で一休み~♪……⦆
この後やってくるのは落ちサビでの転調と怒涛の超高速超高音ラスサビ。
普通のシンガーなら呼吸が奪われるか、あるいは舌が絡まるかして生歌では謡えないであろう最高難易度のパート。
固唾を呑んで見守る薄井……
だがそれは杞憂だった。
目の前にいるステラ……
金剛寺要は幼い頃より音楽一家の中で英才教育を受け、音楽学校の歌唱部門では首席の成績を修める俊英。
⦅沈む夕日ひまわりの下零れる涙♪遠くへ行く君終わりゆく夏休みもう戻らない初恋♪苦しくて苦しく苦しくて苦しくてでも愛しくて♪……おぉぉぉおぉぉ~~~♪
沈んだ太陽ひまわりの下報われない恋、それでもいいそれでもいい愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~♪…………⦆
人間の限界に挑んだ極悪難易度曲を完璧に謡い切ったステラ。
もしここにカラオケマシーンがあったなら間違いなく100点満点をつけるだろう。
⦅〈Sun Flower〉でした。ご清聴ありがとうございました⦆
「うおぉぉぉぉおおおおお!!!ステラちゃ~~~~ん!!!」
「…………」
アウトロが流れる中、薄井と桜井に向かってお辞儀するステラ━━
━━桜井は絶句した。完璧に謡い上げたからだけではない。
ステラは歌詞に合わせてファルセットにエッジボイス、ビブラートにしゃくりにロングトーンといったテクニックを使い分けていたのに加え、フェイクで遊ぶ余裕まであった。
普通ならば歌詞を追うだけで精一杯の〈Sun Flower〉で……
これは真昼野ステラの歌唱力が尋常ではない事を示していた。
桜井に音楽の知識があったからこそ気づけた真昼野ステラの特異性。
隣で能天気且つ純粋に真昼野ステラの曲を楽しんでいる薄井とは感じ方がまるで違った。
「どうだ?スゲーだろ?」
「……あぁ」
したり顔の薄井に呆然と応じる桜井。
彼もまた、真昼野ステラの歌声に魅了されてしまったのだ。
だがボカロPであり作曲家でもある桜井透……
無明Pは冷静に別の事を懸念していた。
「おい、薄井。真昼野ステラの歌声を100%のクオリティでネットに載せようと思ったら、一級品以上の機材が必要になるぞ」
「……いくらだ?」
「最低でも100万だ」
「マジか!?」
「言っておくが最低ラインだぞ」
「…………」
厳しい現実冷ややかに言い放つ桜井━━
━━興奮から一転。
冷や水を頭からぶっかけられたような心境に陥る薄井。
今、彼は頭の中で電卓を超高速で弾いていた。
「はぁ~~~~~っ……本格的に金集めんとな…………」
「言っておくが僕は報酬面においても一切妥協しないからな」
「…………」
ここ最近で一番デカいため息を漏らす薄井。
分かってはいたけど避けては通れない茨の道。
情け容赦のない言葉を吐き出すクソ陰キャを拳で分からせてやりたくなる気持ちを必死で抑える。
⦅どうでした!?薄井さん!桜井さん!⦆
「……はぁ~、まぁやるしかないよな」
歌い終わった直後の興奮がまだ抜けきれず、頬を紅潮させる要。
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