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第二章_小悪魔シンガーと母子の絆
第九話_花のライブ
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山田花代は少し浮かれていた。
時刻は二十三時。
西東京市西八王子町の歓楽街付近のとあるボロアパート。
通称“昼寝荘”の一室にて。
山田花代は母と夕食を食べていた。
夕食の内容は花代がコンビニから格安で仕入れた賞味期限切れ寸前のお弁当とインスタントのお味噌汁。
世間一般の基準で言えば少しばかり質素ではあるが、二人にとってはご馳走だった。
山田家は花代と母“幸子”、二人だけの母子家庭。
山田家の生活は決して楽ではない。
主な収入源は幸子のパートによるもの。
幸子はとある理由で高校を卒業してすぐに花代を身籠った。
花代の血縁上の父親はいわゆるろくでなしで幸子が懐妊したと知った瞬間に雲隠れした。
花代の祖父母……つまり幸子の両親は幸子の事を不良娘と断じ勘当した。
当時の日本は就職氷河期。
学も無くスキルも無い幸子がやれる事はほとんどなかった。
子持ちでも働けるパートの仕事を見つけて働く。
それすらままならない時は借金をする。
幼い花代の世話をしながら食いつなぐにはそうするしかなかった。
今でこそ、花代がバイトをして生活費を手助けしてくれることもあり何とかなっているが、昔の暮らしぶりは悲惨そのものだった。
そんな過去を想えば、まともな食事にありつける今は恵まれている。
そう自分の心を慰めながら花代が白身魚のフライをつついていると……
「花代ちゃん。今日はなんか楽しそうね。いい事でもあったの?」
ニコニコと笑う母の声。
花代はハッとした。
指摘されて初めて自分の表情筋が緩んでいる事に気付いたのだ。
「うん、実はコンビニで新しい後輩が出来たんだけど……その人がとてもいい人で」
「あら?もしかして男の子?」
「……もう!ママ!!そんなんじゃないよ!!!」
母のからかうような声。
花代は顔がボッと赤くなるのを感じた。
確かに要はいい人だが母が勘違いしているような感情は無い。
「あらあら、ごめんなさい。ようやく花代ちゃんにも春が来たのかな?て思って」
「だから違うって!!要さんはただの友達で!!」
「あら?要さんっていうのね?その子は男の子?それとも女の子?」
「……男の人だよ」
からかう事を止めない母にじっとりとした目を向ける花代。
これ以上やると娘が本気で怒り出すと幸子は悟った。
顔の前で手を合わせて謝罪しながら娘に話を促す。
「その人は金剛寺要さんっていうんだけど、とってもいい人で音楽大学に通ってるの」
「ふ~ん……音楽……ねぇ~」
「それでね…………」
嬉しそうに今日バイト先であった事を語る花代。
そんな娘の姿に静かに相槌を打つ母。
要はとても大きな男なのに女性よりも繊細な心の持ち主である事。
紳士的で物腰が柔らかで細かい気遣いが出来る事。
自分が高い所の物を取ろうとしていたら声を掛ける前に取ってくれた事。
重い物は率先して運んでくれた事。
彼がいる時は普段は厄介な客も迷惑行動を起こさない事。
自分が『将来お金持ちになってママに楽をさせたい』と言ったら(Vシンガーの事は内緒)涙ぐみながら協力するって言ってくれた事。
話を進めていくうちに感情が昂るのを感じた。
早口になっている事を自覚した。
要は花代にとって初めての友人だった。
嬉しそうに話す娘の姿に幸子の頬も思わず緩む。
「よかったわね、花代ちゃん。でも今日の話はここまで。そろそろお仕事に行かないと」
時計の針は二十三時半を指していた。
これから幸子は夜勤のパート。
お弁当ガラを片付ける母に後ろ髪を引かれるような表情を向ける花代。
「もう、そんな顔しないの。話はまた明日の朝にでもしましょう」
「うん……気を付けてね」
「は~い。じゃあ、花代ちゃん。行ってきます」
「行ってらっしゃい……ママ」
しょんぼりと項垂れる花代の頭を痩せた手のひらが優しく撫でる。
「いつもありがとうね。ママ頑張ってくるから、花代ちゃんはちゃんとお休みするのよ」
「……は~い」
名残惜しそうに離れていく手のひらの温もり。
母が残した優しい声は建付けの悪い扉の音にかき消される。
小さな足音を立て離れていく母。
いつも通りそれを見送る娘。
母の姿が見えなくなったところで花代は思わずため息を吐いた。
「はぁ~……そりゃバレるよね」
がっくりと肩を落とす花代。
おそらくVシンガーの事はバレていないだろう。
だが何かやっている事は間違いなく感づかれている。
なんせ親子が住むのは1DKの小さな部屋。
そこにいきなりパソコンやマイクなどの配信機器を持ち込めばバレない方がおかしい。
ちなみにこれらの機器は全て中古もしくは知り合いからの貰い物で合計1万円そこそこで揃えた物だ。
回線料金は自分のバイト代から払っているし、母に用途を聞かれた時には調べ物やチャットをする為と説明している。
「さて、そろそろ配信の準備をしないと……今日のセトリ(セットリスト)は……」
てきぱきと機材の準備を始める花代。
活動を始めておよそ五ヶ月。
平日は一時間程度。
母が早めに仕事に出る土曜日や、学校やバイトが休みの時は2時間程度。
週五日ほどの頻度で配信。
地道な活動のおかげでようやく収益化条件も達成できた。
少額ではあるが広告収入やスパチャ(投げ銭)も入るようになってきた。
明るい未来に胸を弾ませながら、花代はPCの電源をONにする。
画面の中には小生意気そうだが可愛らしい小悪魔の少女。
黒と白のゴスロリ衣装。
アッシュブロンドに黒のメッシュのボブショートヘア。
土気色の肌に黒曜石のような黒い瞳。
背中には小さなコウモリの翼。
顔の左上から右下にかけて縫い合わせたような継接ぎ傷。
これらのホラー要素を美しくまとめる黄金比の顔立ち。
不気味さと幼い可愛らしさを併せ持った悪魔のアバター。
花代のもう一つの姿……ローザ=フィオーレ=フォン=フェルトベルク。
時刻は午前零時、配信開始の時間だ。
⦅こんローズ♪待たせたわね“使い魔”共♪魔界からやってきたエリート小悪魔美少女ローザ様よ。今日も我を崇め奉る為に馳せ参じた事、誠に大儀であるぞ!!⦆
[こんローズ][待ってました!!][ローザ様~~!][永遠井光:今日もご尊顔を拝める事、恐悦至極と存じます][こんローズ][ローザたんぺろぺろ][ローザ様、踏んで下さい][K2:こんローズ]
使い魔はローザのFN。
開始前から30人以上の待機。
最初からいるのはほぼ常連達。
みんな熱狂的なファンだが変態と言う名の紳士が紛れ込んでいるのが玉に瑕。
⦅うわっ!何!?キモッ!踏むって何を?馬鹿なの?死ぬの?相変わらずキショい畜生共ね……⦆
[罵倒助かる][ありがとうございます!][永遠井光:流石はローザ様。ツッコミがキレッキレですね][何を踏むってそりゃナニでしょう][相変わらずここは紳士の巣窟だなwww][おいおい治安悪すぎだろwww][K2:はは……相変わらずですね][変態しかいねぇ日本オワタ][はぁはぁ] [うわ、引くわ] [息荒くするのやめろwww]
⦅うわぁ!キショ過ぎ!!ちょっと教育が必要そうね。まずは綺麗な曲であんたらの穢れた魂を浄化しないと……⦆
[浄化とな?][これはもしかして?][来るか、来るか][K2:ワクワク][いつものやつか?][初見です。いつものやつって何?][永遠井光:初見さんいらっしゃい][まぁ、見てりゃ分かるよ][弾幕準備!!][いつでも行けるぜ!!]
謡うと言った途端に行儀が良くなる使い魔達。
彼らは全力でローザとの交流を楽しんでいるのだ。
悪ふざけは配信を盛り上げる為のスパイス。
だからこそ花代……ローザもクソ生意気な小娘をロールプレイしている。
そして彼らはローザの歌を心から待ち望んでいる。
だからこそ……全力で謡う。
⦅一曲目!耳をかっぽじって聞きなさい!!〈Falling〉!!⦆
[キターーー][おおぉ!!][〈Falling〉……だと][天使ちゃん降臨!!][悪魔なのに?][🎶🦇🌹🎶🦇🌹][弾幕フライング草][俺、この曲好き]
〈Falling〉はとあるアニメの主題歌。
そのアニメは天界で地上を眺めていた天使ちゃんが主人公に興味を持ち堕天するところから始まるラブコメ。
主人公はいわゆる草食系男子で天使ちゃんの気持ちには全く気付かないけど、地上に降りて右も左も分からない天使ちゃんに何かと世話を焼きながら、少しずつ心を開いていく。
天使ちゃんも主人公と接する内に恋心や愛情のような好意を抱くのだが、その感情の正体が分からずモヤモヤした気持ちを抱える。
そんな男女のもどかしい心情を爽やかに謡い上げた名曲。
この曲で求められるのは豊かな感情表現。
メロディーラインが比較的素直でアレンジが利きやすい分、歌い手の表現力が試される。
⦅吹き抜けるか~ぜ~♪舞い上がる~花び~ら~~~♪翼失くした天使の~~輝く羽と~~~♪⦆
[🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🎶🎶🎶🎶] [🎶🦇🌹] [🌹🌹🌹🌹] [🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🦇🦇🦇🦇] [🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🎶🎶🎶🎶🎶]…………
エモーショナルな歌声。
🦇=悪魔、🌹=ローザ、🎶=シンガーの弾幕で歌を盛り上げる使い魔達。
コメント欄の盛り上がりと共にローザのテンションも右肩上がりに上昇。
⦅今日も明日も明後日も~~~♪ずっとず~っとこんな日々が続けば~~いいの~に~~~♪変わらない~でも愛~~~しき~~~♪あなたとの日々よ~~~♪………⦆
[👏👏👏] [👏👏👏][8888][👏👏👏][👏👏👏👏][K2:素敵でした][👏👏👏][888][\500 今日はとても良かった][👏👏👏👏][\10000 永遠井光:ローザ様最高❤][👏👏👏👏][\200 エモすぎる] [👏👏👏👏]……
キラキラと爽やかだけど、ほんの少し切ない歌。
ウキウキする反面、どこかジーンとする歌声。
謡い切ったローザに使い魔から拍手と喝采。
⦅〈Falling〉……でした。拍手、弾幕ありがとう!!××さん、スパチャありがとう『今日はとても良かった』……嬉しい。いつも以上って意味よね(圧)。永遠井光さんも……赤スパ(高額投げ銭)!!『ローザ様最高❤』うんうん、そうでしょう。事実陳列罪ありがとうね。それから××さん……⦆
拍手に満面の笑顔でお礼を返すローザ。
謡ってくれてありがとう。
聞いてくれてありがとう。
感想をありがとう。
答えてくれてありがとう。
ここにはエンタメの理想であり存在意義と言っても過言ではないモノ……
感謝の好循環が確かに存在した。
まさに深夜のライブ。
ここは“昼寝荘”。
住人が皆、夜の仕事に従事している事がその名前の由来。
ここには誰もいない。
この歌声を直接聞く者はどこにもいない。
誰もいない部屋の中、歌声だけが響く。
そして歌声はネットの波に乗って世界中に響き渡る。
ローザは……花代はえも言えぬ高揚感に包まれていた。
今日は良い日だ。
友達ができた。
ママと楽しい食事ができた。
使い魔のみんなと楽しい配信ができた。
きっと幸せとはこういう事なのだろうと思った。
こんな日々がずっと続けばいいのに……
そう願わずにはいられなかった。
時刻は二十三時。
西東京市西八王子町の歓楽街付近のとあるボロアパート。
通称“昼寝荘”の一室にて。
山田花代は母と夕食を食べていた。
夕食の内容は花代がコンビニから格安で仕入れた賞味期限切れ寸前のお弁当とインスタントのお味噌汁。
世間一般の基準で言えば少しばかり質素ではあるが、二人にとってはご馳走だった。
山田家は花代と母“幸子”、二人だけの母子家庭。
山田家の生活は決して楽ではない。
主な収入源は幸子のパートによるもの。
幸子はとある理由で高校を卒業してすぐに花代を身籠った。
花代の血縁上の父親はいわゆるろくでなしで幸子が懐妊したと知った瞬間に雲隠れした。
花代の祖父母……つまり幸子の両親は幸子の事を不良娘と断じ勘当した。
当時の日本は就職氷河期。
学も無くスキルも無い幸子がやれる事はほとんどなかった。
子持ちでも働けるパートの仕事を見つけて働く。
それすらままならない時は借金をする。
幼い花代の世話をしながら食いつなぐにはそうするしかなかった。
今でこそ、花代がバイトをして生活費を手助けしてくれることもあり何とかなっているが、昔の暮らしぶりは悲惨そのものだった。
そんな過去を想えば、まともな食事にありつける今は恵まれている。
そう自分の心を慰めながら花代が白身魚のフライをつついていると……
「花代ちゃん。今日はなんか楽しそうね。いい事でもあったの?」
ニコニコと笑う母の声。
花代はハッとした。
指摘されて初めて自分の表情筋が緩んでいる事に気付いたのだ。
「うん、実はコンビニで新しい後輩が出来たんだけど……その人がとてもいい人で」
「あら?もしかして男の子?」
「……もう!ママ!!そんなんじゃないよ!!!」
母のからかうような声。
花代は顔がボッと赤くなるのを感じた。
確かに要はいい人だが母が勘違いしているような感情は無い。
「あらあら、ごめんなさい。ようやく花代ちゃんにも春が来たのかな?て思って」
「だから違うって!!要さんはただの友達で!!」
「あら?要さんっていうのね?その子は男の子?それとも女の子?」
「……男の人だよ」
からかう事を止めない母にじっとりとした目を向ける花代。
これ以上やると娘が本気で怒り出すと幸子は悟った。
顔の前で手を合わせて謝罪しながら娘に話を促す。
「その人は金剛寺要さんっていうんだけど、とってもいい人で音楽大学に通ってるの」
「ふ~ん……音楽……ねぇ~」
「それでね…………」
嬉しそうに今日バイト先であった事を語る花代。
そんな娘の姿に静かに相槌を打つ母。
要はとても大きな男なのに女性よりも繊細な心の持ち主である事。
紳士的で物腰が柔らかで細かい気遣いが出来る事。
自分が高い所の物を取ろうとしていたら声を掛ける前に取ってくれた事。
重い物は率先して運んでくれた事。
彼がいる時は普段は厄介な客も迷惑行動を起こさない事。
自分が『将来お金持ちになってママに楽をさせたい』と言ったら(Vシンガーの事は内緒)涙ぐみながら協力するって言ってくれた事。
話を進めていくうちに感情が昂るのを感じた。
早口になっている事を自覚した。
要は花代にとって初めての友人だった。
嬉しそうに話す娘の姿に幸子の頬も思わず緩む。
「よかったわね、花代ちゃん。でも今日の話はここまで。そろそろお仕事に行かないと」
時計の針は二十三時半を指していた。
これから幸子は夜勤のパート。
お弁当ガラを片付ける母に後ろ髪を引かれるような表情を向ける花代。
「もう、そんな顔しないの。話はまた明日の朝にでもしましょう」
「うん……気を付けてね」
「は~い。じゃあ、花代ちゃん。行ってきます」
「行ってらっしゃい……ママ」
しょんぼりと項垂れる花代の頭を痩せた手のひらが優しく撫でる。
「いつもありがとうね。ママ頑張ってくるから、花代ちゃんはちゃんとお休みするのよ」
「……は~い」
名残惜しそうに離れていく手のひらの温もり。
母が残した優しい声は建付けの悪い扉の音にかき消される。
小さな足音を立て離れていく母。
いつも通りそれを見送る娘。
母の姿が見えなくなったところで花代は思わずため息を吐いた。
「はぁ~……そりゃバレるよね」
がっくりと肩を落とす花代。
おそらくVシンガーの事はバレていないだろう。
だが何かやっている事は間違いなく感づかれている。
なんせ親子が住むのは1DKの小さな部屋。
そこにいきなりパソコンやマイクなどの配信機器を持ち込めばバレない方がおかしい。
ちなみにこれらの機器は全て中古もしくは知り合いからの貰い物で合計1万円そこそこで揃えた物だ。
回線料金は自分のバイト代から払っているし、母に用途を聞かれた時には調べ物やチャットをする為と説明している。
「さて、そろそろ配信の準備をしないと……今日のセトリ(セットリスト)は……」
てきぱきと機材の準備を始める花代。
活動を始めておよそ五ヶ月。
平日は一時間程度。
母が早めに仕事に出る土曜日や、学校やバイトが休みの時は2時間程度。
週五日ほどの頻度で配信。
地道な活動のおかげでようやく収益化条件も達成できた。
少額ではあるが広告収入やスパチャ(投げ銭)も入るようになってきた。
明るい未来に胸を弾ませながら、花代はPCの電源をONにする。
画面の中には小生意気そうだが可愛らしい小悪魔の少女。
黒と白のゴスロリ衣装。
アッシュブロンドに黒のメッシュのボブショートヘア。
土気色の肌に黒曜石のような黒い瞳。
背中には小さなコウモリの翼。
顔の左上から右下にかけて縫い合わせたような継接ぎ傷。
これらのホラー要素を美しくまとめる黄金比の顔立ち。
不気味さと幼い可愛らしさを併せ持った悪魔のアバター。
花代のもう一つの姿……ローザ=フィオーレ=フォン=フェルトベルク。
時刻は午前零時、配信開始の時間だ。
⦅こんローズ♪待たせたわね“使い魔”共♪魔界からやってきたエリート小悪魔美少女ローザ様よ。今日も我を崇め奉る為に馳せ参じた事、誠に大儀であるぞ!!⦆
[こんローズ][待ってました!!][ローザ様~~!][永遠井光:今日もご尊顔を拝める事、恐悦至極と存じます][こんローズ][ローザたんぺろぺろ][ローザ様、踏んで下さい][K2:こんローズ]
使い魔はローザのFN。
開始前から30人以上の待機。
最初からいるのはほぼ常連達。
みんな熱狂的なファンだが変態と言う名の紳士が紛れ込んでいるのが玉に瑕。
⦅うわっ!何!?キモッ!踏むって何を?馬鹿なの?死ぬの?相変わらずキショい畜生共ね……⦆
[罵倒助かる][ありがとうございます!][永遠井光:流石はローザ様。ツッコミがキレッキレですね][何を踏むってそりゃナニでしょう][相変わらずここは紳士の巣窟だなwww][おいおい治安悪すぎだろwww][K2:はは……相変わらずですね][変態しかいねぇ日本オワタ][はぁはぁ] [うわ、引くわ] [息荒くするのやめろwww]
⦅うわぁ!キショ過ぎ!!ちょっと教育が必要そうね。まずは綺麗な曲であんたらの穢れた魂を浄化しないと……⦆
[浄化とな?][これはもしかして?][来るか、来るか][K2:ワクワク][いつものやつか?][初見です。いつものやつって何?][永遠井光:初見さんいらっしゃい][まぁ、見てりゃ分かるよ][弾幕準備!!][いつでも行けるぜ!!]
謡うと言った途端に行儀が良くなる使い魔達。
彼らは全力でローザとの交流を楽しんでいるのだ。
悪ふざけは配信を盛り上げる為のスパイス。
だからこそ花代……ローザもクソ生意気な小娘をロールプレイしている。
そして彼らはローザの歌を心から待ち望んでいる。
だからこそ……全力で謡う。
⦅一曲目!耳をかっぽじって聞きなさい!!〈Falling〉!!⦆
[キターーー][おおぉ!!][〈Falling〉……だと][天使ちゃん降臨!!][悪魔なのに?][🎶🦇🌹🎶🦇🌹][弾幕フライング草][俺、この曲好き]
〈Falling〉はとあるアニメの主題歌。
そのアニメは天界で地上を眺めていた天使ちゃんが主人公に興味を持ち堕天するところから始まるラブコメ。
主人公はいわゆる草食系男子で天使ちゃんの気持ちには全く気付かないけど、地上に降りて右も左も分からない天使ちゃんに何かと世話を焼きながら、少しずつ心を開いていく。
天使ちゃんも主人公と接する内に恋心や愛情のような好意を抱くのだが、その感情の正体が分からずモヤモヤした気持ちを抱える。
そんな男女のもどかしい心情を爽やかに謡い上げた名曲。
この曲で求められるのは豊かな感情表現。
メロディーラインが比較的素直でアレンジが利きやすい分、歌い手の表現力が試される。
⦅吹き抜けるか~ぜ~♪舞い上がる~花び~ら~~~♪翼失くした天使の~~輝く羽と~~~♪⦆
[🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🎶🎶🎶🎶] [🎶🦇🌹] [🌹🌹🌹🌹] [🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🦇🦇🦇🦇] [🎶🦇🌹🎶🦇🌹] [🎶🎶🎶🎶🎶]…………
エモーショナルな歌声。
🦇=悪魔、🌹=ローザ、🎶=シンガーの弾幕で歌を盛り上げる使い魔達。
コメント欄の盛り上がりと共にローザのテンションも右肩上がりに上昇。
⦅今日も明日も明後日も~~~♪ずっとず~っとこんな日々が続けば~~いいの~に~~~♪変わらない~でも愛~~~しき~~~♪あなたとの日々よ~~~♪………⦆
[👏👏👏] [👏👏👏][8888][👏👏👏][👏👏👏👏][K2:素敵でした][👏👏👏][888][\500 今日はとても良かった][👏👏👏👏][\10000 永遠井光:ローザ様最高❤][👏👏👏👏][\200 エモすぎる] [👏👏👏👏]……
キラキラと爽やかだけど、ほんの少し切ない歌。
ウキウキする反面、どこかジーンとする歌声。
謡い切ったローザに使い魔から拍手と喝采。
⦅〈Falling〉……でした。拍手、弾幕ありがとう!!××さん、スパチャありがとう『今日はとても良かった』……嬉しい。いつも以上って意味よね(圧)。永遠井光さんも……赤スパ(高額投げ銭)!!『ローザ様最高❤』うんうん、そうでしょう。事実陳列罪ありがとうね。それから××さん……⦆
拍手に満面の笑顔でお礼を返すローザ。
謡ってくれてありがとう。
聞いてくれてありがとう。
感想をありがとう。
答えてくれてありがとう。
ここにはエンタメの理想であり存在意義と言っても過言ではないモノ……
感謝の好循環が確かに存在した。
まさに深夜のライブ。
ここは“昼寝荘”。
住人が皆、夜の仕事に従事している事がその名前の由来。
ここには誰もいない。
この歌声を直接聞く者はどこにもいない。
誰もいない部屋の中、歌声だけが響く。
そして歌声はネットの波に乗って世界中に響き渡る。
ローザは……花代はえも言えぬ高揚感に包まれていた。
今日は良い日だ。
友達ができた。
ママと楽しい食事ができた。
使い魔のみんなと楽しい配信ができた。
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