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第二章_小悪魔シンガーと母子の絆
第二十話_歌姫?との邂逅
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美空三日月の胸はチクリと痛んだ。
場面は引き続き桜井家の居間。
時間は昼時。
桜井との顔合わせを終え、契約関係の確認した三人。
空腹になってきたのでこれから昼食にしようかと話が出た矢先。
⦅こんにちは~。薄井さん、桜井さん。いらっしゃいますか~~~⦆
玄関の方から可愛らしい少女の声。
玄関から居間まではそれなりに距離があるがはっきりと聞こえる圧倒的な声量。
その声に薄井が破顔する。
「あぁ、要君。来てくれたか。グッドタイミングだ」
嬉しそうな表情で玄関の方に向かおうとする薄井。
三日月は今まで見た事のない想い人の様子にチクリと胸の奥に痛みを感じた。
「あの……薄井先……薄井さん。今のは?」
「あぁ、真昼野ステラだ」
「…………」
三日月の問いに屈託のない笑みで応える薄井。
胸の奥の痛みが強くなったのを感じた。
現在、スターヌーンプロダクションで唯一のVシンガー。
薄井の最推し。
圧倒的な歌唱力と可愛らしい歌声、清楚な性格で人気急上昇中の歌姫。
一体どんな女性なのだろうか?
真昼野ステラは薄井の事をどう思っているのだろうか?
胸の痛みから沸き上がる黒いモヤモヤとした感情。
眉間に寄るしわ。
三日月は自らの嫉妬を自覚しながらそれを持て余していた。
「ご心配なく……少なくとも美空さんが思っているような展開にはなりませんから」
感情が漏れ出ていたのだろうか?
三日月の隣で苦笑いを浮かべる花代。
三日月の気恥ずかしくなると同時に彼女の反応に疑問を持った。
何故彼女の表情は引きつっているのだろう?
そうこうしている内に近づく足音。
心なしか、その音は三日月が想像したモノより大きいように思えた。
⦅こんにちは、薄井さん……あっ!花代さんも来てくれてたんですね⦆
「あぁ。それから昨日話した新しい事務員の美空三日月さんだ」
⦅あっ!失礼しました。初めまして、金剛寺要です⦆
「…………」
可愛らしい声は三日月が想像したより遥かに高い位置から降ってきた。
声の方向に視線をやるとそこには身長190cm超えで筋骨隆々、両手にスーパーの買い物袋をぶら下げ、柔和な笑みを湛える角刈りゴリラ。
予想の斜め上を行く現実に凍り付く三日月。
その様子に花代も苦笑い。
「う……薄井さん……これは?」
「いや、だから真昼野ステラだって」
⦅ごめんなさい。ビックリしましたよね?⦆
「いえ……そんなことは……」
⦅無理しなくてもいいですよ。みんな最初はびっくりするんですよ⦆
「そっか?俺はそうでもなかったけど」
⦅あなたは例外です⦆
驚きで目を見開く三日月。
柔らかい口調でフォローを入れる要。
ボケ倒す薄井に若干辛辣に当たるのは信頼の裏返しなのだろうか?
三日月は口をパクパクさせながら二人を見比べる。
「……なんか、いい雰囲気ですね」
三日月の隣で花代が言葉を零した。
その口元には小さな笑み。
三日月も小さく笑みを零した。
要の登場で先ほど桜井という陰気な男から受けた不安が和らいだようだ。
⦅薄井さん。桜井さんはどうしたんですか?⦆
「あいつは3D女子アレルギーで部屋に引きこもってる」
⦅3D……女子?⦆
「気にするな。君には一生縁の無い言葉だ」
⦅そう……ですか⦆
「あいつについては放っておいても大丈夫だ。どうせ昼飯が出来たらすっ飛んでくるだろうし」
⦅それもそうですね⦆
薄井の言葉に肩をすくめる要。
桜井の挙動不審はいつもの事らしい。
「どうせ持病のコミュ障が発症したのだろうな」と言いたげな顔で買い物袋と共にキッチンへと向かう要。
「その荷物は?」
そう呟いたのは花代だった。
買い物袋の中の大量の食料品に興味津々で目を丸くしていた。
それに答えたのは、ニマニマと口元を緩めた薄井。
「要君の提案でね。せっかく新しい人が来るから歓迎会がしたいって。ご馳走作るんだって大はしゃぎでね」
⦅ちょっ!薄井さん!そういうのは言っちゃダメです!!⦆
いたずらっ子のような笑みを浮かべる薄井。
顔を真っ赤にして抗議する要。
「ところでお金は足りた?後で精算するから領収書出しといてね」
⦅足しましたよ。5万円も使い切れるわけないじゃないですか⦆
「じゃあ、残りはお駄賃で」
「ダメですよ、薄井さん。会社のお金なんですからちゃんとしないと」
和気あいあいとした雰囲気。
不安げな顔を浮かべていた花代の表情も和らぎ、今は楽し気な笑顔。
三日月も空気感に載せられて、いい加減な薄井に鋭くツッコミを入れる。
「さぁ、お昼ご飯作っちゃいましょう。ワタシお腹空いて来ました」
⦅そうですね。花代さん、美空さんお料理は?⦆
「できますよ」
「私も問題ありません」
そして女性?三人はキッチンへと向かう。
弾けるような笑顔の要。
にっこりと柔らかく微笑む花代。
ポーカーフェイスに努めながら口元の緩みを隠し切れない三日月。
三日月は意気込んでいた。
ご馳走を作って、楽しい歓迎会にしよう……
そして薄井の胃袋をがっちりと掴むのだと。
場面は引き続き桜井家の居間。
時間は昼時。
桜井との顔合わせを終え、契約関係の確認した三人。
空腹になってきたのでこれから昼食にしようかと話が出た矢先。
⦅こんにちは~。薄井さん、桜井さん。いらっしゃいますか~~~⦆
玄関の方から可愛らしい少女の声。
玄関から居間まではそれなりに距離があるがはっきりと聞こえる圧倒的な声量。
その声に薄井が破顔する。
「あぁ、要君。来てくれたか。グッドタイミングだ」
嬉しそうな表情で玄関の方に向かおうとする薄井。
三日月は今まで見た事のない想い人の様子にチクリと胸の奥に痛みを感じた。
「あの……薄井先……薄井さん。今のは?」
「あぁ、真昼野ステラだ」
「…………」
三日月の問いに屈託のない笑みで応える薄井。
胸の奥の痛みが強くなったのを感じた。
現在、スターヌーンプロダクションで唯一のVシンガー。
薄井の最推し。
圧倒的な歌唱力と可愛らしい歌声、清楚な性格で人気急上昇中の歌姫。
一体どんな女性なのだろうか?
真昼野ステラは薄井の事をどう思っているのだろうか?
胸の痛みから沸き上がる黒いモヤモヤとした感情。
眉間に寄るしわ。
三日月は自らの嫉妬を自覚しながらそれを持て余していた。
「ご心配なく……少なくとも美空さんが思っているような展開にはなりませんから」
感情が漏れ出ていたのだろうか?
三日月の隣で苦笑いを浮かべる花代。
三日月の気恥ずかしくなると同時に彼女の反応に疑問を持った。
何故彼女の表情は引きつっているのだろう?
そうこうしている内に近づく足音。
心なしか、その音は三日月が想像したモノより大きいように思えた。
⦅こんにちは、薄井さん……あっ!花代さんも来てくれてたんですね⦆
「あぁ。それから昨日話した新しい事務員の美空三日月さんだ」
⦅あっ!失礼しました。初めまして、金剛寺要です⦆
「…………」
可愛らしい声は三日月が想像したより遥かに高い位置から降ってきた。
声の方向に視線をやるとそこには身長190cm超えで筋骨隆々、両手にスーパーの買い物袋をぶら下げ、柔和な笑みを湛える角刈りゴリラ。
予想の斜め上を行く現実に凍り付く三日月。
その様子に花代も苦笑い。
「う……薄井さん……これは?」
「いや、だから真昼野ステラだって」
⦅ごめんなさい。ビックリしましたよね?⦆
「いえ……そんなことは……」
⦅無理しなくてもいいですよ。みんな最初はびっくりするんですよ⦆
「そっか?俺はそうでもなかったけど」
⦅あなたは例外です⦆
驚きで目を見開く三日月。
柔らかい口調でフォローを入れる要。
ボケ倒す薄井に若干辛辣に当たるのは信頼の裏返しなのだろうか?
三日月は口をパクパクさせながら二人を見比べる。
「……なんか、いい雰囲気ですね」
三日月の隣で花代が言葉を零した。
その口元には小さな笑み。
三日月も小さく笑みを零した。
要の登場で先ほど桜井という陰気な男から受けた不安が和らいだようだ。
⦅薄井さん。桜井さんはどうしたんですか?⦆
「あいつは3D女子アレルギーで部屋に引きこもってる」
⦅3D……女子?⦆
「気にするな。君には一生縁の無い言葉だ」
⦅そう……ですか⦆
「あいつについては放っておいても大丈夫だ。どうせ昼飯が出来たらすっ飛んでくるだろうし」
⦅それもそうですね⦆
薄井の言葉に肩をすくめる要。
桜井の挙動不審はいつもの事らしい。
「どうせ持病のコミュ障が発症したのだろうな」と言いたげな顔で買い物袋と共にキッチンへと向かう要。
「その荷物は?」
そう呟いたのは花代だった。
買い物袋の中の大量の食料品に興味津々で目を丸くしていた。
それに答えたのは、ニマニマと口元を緩めた薄井。
「要君の提案でね。せっかく新しい人が来るから歓迎会がしたいって。ご馳走作るんだって大はしゃぎでね」
⦅ちょっ!薄井さん!そういうのは言っちゃダメです!!⦆
いたずらっ子のような笑みを浮かべる薄井。
顔を真っ赤にして抗議する要。
「ところでお金は足りた?後で精算するから領収書出しといてね」
⦅足しましたよ。5万円も使い切れるわけないじゃないですか⦆
「じゃあ、残りはお駄賃で」
「ダメですよ、薄井さん。会社のお金なんですからちゃんとしないと」
和気あいあいとした雰囲気。
不安げな顔を浮かべていた花代の表情も和らぎ、今は楽し気な笑顔。
三日月も空気感に載せられて、いい加減な薄井に鋭くツッコミを入れる。
「さぁ、お昼ご飯作っちゃいましょう。ワタシお腹空いて来ました」
⦅そうですね。花代さん、美空さんお料理は?⦆
「できますよ」
「私も問題ありません」
そして女性?三人はキッチンへと向かう。
弾けるような笑顔の要。
にっこりと柔らかく微笑む花代。
ポーカーフェイスに努めながら口元の緩みを隠し切れない三日月。
三日月は意気込んでいた。
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