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第二章_小悪魔シンガーと母子の絆
第四十二話_クリスマスコラボライブ~緊張の解し方~
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クリスマスコラボ直前。
要は心配そうに花代を眺めていた。
花代はガチガチに緊張していた。
リハーサルの後から特に元気が無い様子。
今日はスターヌーンプロダクション所属になって初のイベントだから無理もない。
「もうすぐスタートだけど、準備は良いかな?飲み物、トイレは済ませた?」
⦅ちょっとマネージャー……無神経な事言うんじゃないわよ⦆
「いや、今日は途中中断する気無いし……」
⦅そういう問題じゃないわ……⦆
薄井は花代の緊張をほぐそうと思ったのだが逆効果。
花代がローザの声で怒鳴るもいつものより覇気が無い。
思わず肩をすくめる薄井。
⦅マネージャーさん……ちょっと無神経すぎです。相手は女の子なんですよ⦆
そんなやり取りに要がため息を一つ。
「あっ!スマン!ステラたんと仕事するまで女の子と話す機会なんてほとんどなかったし」
⦅えっ!わたし男……⦆
「いや、要君は男だが、ステラたんは女性だろう?」
⦅いや……そうですけど……⦆
薄井の言葉のクロスカウンターに要がギョッとする。
……あれはスターヌーンプロが立ち上がった直後くらいの事。
薄井がこんな事を言っていた。
『要君。君は真昼野ステラだが、真昼野ステラは君じゃない』
それはV界隈における暗黙のルール……Vの中の人なんていないという話だ。
『君は確かに真昼野ステラの声であり、心であり、真昼野ステラの生みの親だ。だが真昼野ステラは真昼野ステラであって君ではない。だから君と真昼野ステラの性別が違っていようが気にする事はない。アニメの少年キャラを女性が演じるのと同じような事だ』
薄井との会話はもっぱら推し事についてだ。
ぶっちゃけ薄井とできる話はそれしかない。
たまには音楽の話もしたいのだが、
薄井は感性で音楽を聴くタイプなので理論的な話や音楽観の話はできない。
だが彼の推しについての考えやV業界についての見識は興味深いモノが多く、
要は彼との会話を好ましく思っている。
そしてそれは時に要自身の内面にも深く踏み込んだ。
『君は時折、自分と真昼野ステラを比較して、星学者に引け目を感じている様に思えるが、ぶっちゃけ無用の心配だ。だって金剛寺要と真昼野ステラは別人なんだから』
薄井は鈍くて聡い。
自身に対しての感情にはトコトン無関心だが、それ以外……
例えば要の引け目については的確に把握していた。
そしておそらく自分が気付いていない花代の悩みについても……
「ローザ様。ステラたんがおかしな事言いそうになったらフォローお願いしますね」
⦅……⦆
だからだろう。
今もこうしてステラをダシに使って、ローザを励ましている。
⦅何を当然のことを……あんたに言われるまでも無いわ⦆
薄井の一言で元気を取り戻す花代。
おそらく責任感の強い常識人の花代に役割を与える事で奮起させたのだろう
その口元には薄っすらと笑み。
緊張感はまだある。
でもそれは先ほどのような身体を縛るような重苦しいモノではない。
集中力を高めてくれるピリッとした心地よい緊張感が花代から伝わってくる。
「よし!準備はばっちりだな!じゃあ行くぞ!開始5秒前!!」
少女からシンガーの顔つきに変化するローザ。
要も釣られてステラの仮面を被る。
その横眼には手元のPCを素早く操作する薄井。
「3・2・1・・・キュー」
時刻は二十一時ジャスト。
真昼野ステラにとって……
ローザ=フィオーレ=フォン=フェルトベルクにとって……
そしてスターヌーンプロダクションにとって初のコラボライブの幕開けだ。
要は心配そうに花代を眺めていた。
花代はガチガチに緊張していた。
リハーサルの後から特に元気が無い様子。
今日はスターヌーンプロダクション所属になって初のイベントだから無理もない。
「もうすぐスタートだけど、準備は良いかな?飲み物、トイレは済ませた?」
⦅ちょっとマネージャー……無神経な事言うんじゃないわよ⦆
「いや、今日は途中中断する気無いし……」
⦅そういう問題じゃないわ……⦆
薄井は花代の緊張をほぐそうと思ったのだが逆効果。
花代がローザの声で怒鳴るもいつものより覇気が無い。
思わず肩をすくめる薄井。
⦅マネージャーさん……ちょっと無神経すぎです。相手は女の子なんですよ⦆
そんなやり取りに要がため息を一つ。
「あっ!スマン!ステラたんと仕事するまで女の子と話す機会なんてほとんどなかったし」
⦅えっ!わたし男……⦆
「いや、要君は男だが、ステラたんは女性だろう?」
⦅いや……そうですけど……⦆
薄井の言葉のクロスカウンターに要がギョッとする。
……あれはスターヌーンプロが立ち上がった直後くらいの事。
薄井がこんな事を言っていた。
『要君。君は真昼野ステラだが、真昼野ステラは君じゃない』
それはV界隈における暗黙のルール……Vの中の人なんていないという話だ。
『君は確かに真昼野ステラの声であり、心であり、真昼野ステラの生みの親だ。だが真昼野ステラは真昼野ステラであって君ではない。だから君と真昼野ステラの性別が違っていようが気にする事はない。アニメの少年キャラを女性が演じるのと同じような事だ』
薄井との会話はもっぱら推し事についてだ。
ぶっちゃけ薄井とできる話はそれしかない。
たまには音楽の話もしたいのだが、
薄井は感性で音楽を聴くタイプなので理論的な話や音楽観の話はできない。
だが彼の推しについての考えやV業界についての見識は興味深いモノが多く、
要は彼との会話を好ましく思っている。
そしてそれは時に要自身の内面にも深く踏み込んだ。
『君は時折、自分と真昼野ステラを比較して、星学者に引け目を感じている様に思えるが、ぶっちゃけ無用の心配だ。だって金剛寺要と真昼野ステラは別人なんだから』
薄井は鈍くて聡い。
自身に対しての感情にはトコトン無関心だが、それ以外……
例えば要の引け目については的確に把握していた。
そしておそらく自分が気付いていない花代の悩みについても……
「ローザ様。ステラたんがおかしな事言いそうになったらフォローお願いしますね」
⦅……⦆
だからだろう。
今もこうしてステラをダシに使って、ローザを励ましている。
⦅何を当然のことを……あんたに言われるまでも無いわ⦆
薄井の一言で元気を取り戻す花代。
おそらく責任感の強い常識人の花代に役割を与える事で奮起させたのだろう
その口元には薄っすらと笑み。
緊張感はまだある。
でもそれは先ほどのような身体を縛るような重苦しいモノではない。
集中力を高めてくれるピリッとした心地よい緊張感が花代から伝わってくる。
「よし!準備はばっちりだな!じゃあ行くぞ!開始5秒前!!」
少女からシンガーの顔つきに変化するローザ。
要も釣られてステラの仮面を被る。
その横眼には手元のPCを素早く操作する薄井。
「3・2・1・・・キュー」
時刻は二十一時ジャスト。
真昼野ステラにとって……
ローザ=フィオーレ=フォン=フェルトベルクにとって……
そしてスターヌーンプロダクションにとって初のコラボライブの幕開けだ。
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