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第三章_太陽に嫌われたVチューバーと枯れかけの白百合
第八話_大物Vチューバーとの邂逅
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「薄井さん……ここでいいんですよね」
「あぁ……そのはずだけど」
⦅表札の名前は“喜村”ですし、間違いないと思いますよ⦆
二月後半のとある日の昼下がり。
場所は西多摩川市町田町。
西多摩川市の南端に位置し、都会と自然の調和がとれた住みたい町ランキング上位の住宅地。
そんな町田町の高級住宅地に薄井、要、花代は立っていた。
彼らの目の前にはモダンな二階建て邸宅。
そのお値段はおそらく億を下らないだろう豪華な造り。
ここが今回自分達を呼び出した大物Vチューバー夢川キララの自宅。
小市民薄井と骨の髄まで貧乏根性が染み付いた苦労人花代はビビり散らかしていた。
この中で唯一堂々としているのは実家がお金持ちの要だけ。
ビビり倒す役立たず共を余所に、要がインターホンに手を掛けた。
ピンポーンという聞き馴染んだ呼び出し音。
インターホンの音は一緒なんだな。
そんな下らない事を考えながら、今まで役立たずだった薄井が再起動。
社長としての役割を思い出し、慌ててインターホン前で身構える。
『は~い』
インターホン越しに聞こえてきたのはおっとりしていて、でもどこか気怠そうな女性の声。
「初めましてぇ!わたくし……スターヌーンプロの薄井と申しますぅ!!」
またしてもコミュ障発動。
バクバクと早鐘を打つ心臓。
薄井の声が緊張で上擦る。
インターホンの向こう側からクスクスという笑い声。
心底可笑しそうで隠す素振りすら見せない。
『あぁ、エライすんません。ロック開けたさかい、入ってもろうてもえぇやろか?』
無邪気さと艶っぽさが入り混じった女性の声。
以前PC越しで話した時の固い公人としての声とは違った魅惑的な声。
異性なら少なからず惹きつけられる声だが、今の薄井は恥ずかしさの方が勝っていた。
女性と同じくクスクスと笑う要と花代の声を背に扉を開く。
「…………」
扉をくぐった瞬間、薄井は違和感を覚えた。
具体的になんといえばいいか分からない。
ただ何となく居心地が良かった。
「この部屋……ちょっと変です」
花代も薄井と同じく部屋に違和感を覚えたらしい。
だが、薄井とは違い居心地が悪そうな様子。
⦅この部屋……自然光が全然入っていないですね⦆
違和感の正体を指摘したのは要だった。
屋内は人工の光で程よく照らされていたが、昼間だというのに全く太陽光を取り入れていなかった。
窓は換気用の小さいモノだけで、その窓にも遮光カーテン。
よくよく家の様子を思い出してみれば、光を採る為の窓が一切無かったように思える。
薄井が居心地の良さを感じたのは、瞳に余計な日光が入って来なくなったからに他ならない。
逆に自然光を目いっぱい有効活用してきた花代は居心地の悪さを感じたのだろう。
「どうぞ~。遠慮せんと上がってんか~」
結構な時間、玄関先で立ち話をしていたようだ。
胡散臭い関西弁で呼びかけられた三人は慌てて靴を脱ぎ、奥へと進む。
三人で移動するには若干狭い廊下を進み、扉を開いた先に待ち受けていたのは二人の人物。
一人は長身で端正な顔つきの男……仮想恋歌社長柊潤。
そしてもう一人は女性だろうか。
その装いは異様。
白の表地に黒の裏地の長袖ワンピースドレス。
白の手袋。白のハイソックス。
そして何より特筆すべきは屋内だというのにフェイスカバー付きの白の帽子。
肌の露出が一切無い白一色の出で立ち。
「初めまして、スターヌーンプロダクションの皆様。ウチが“喜村笑美”……夢川キララです」
その口からは先ほど聞いた無邪気さと妖艶が入り混じった女性の声。
薄井は息を呑んだ。
目の前の小柄で真っ白な女性、喜村笑美こそが今回の依頼人。
夢川キララなのだと……
「あぁ……そのはずだけど」
⦅表札の名前は“喜村”ですし、間違いないと思いますよ⦆
二月後半のとある日の昼下がり。
場所は西多摩川市町田町。
西多摩川市の南端に位置し、都会と自然の調和がとれた住みたい町ランキング上位の住宅地。
そんな町田町の高級住宅地に薄井、要、花代は立っていた。
彼らの目の前にはモダンな二階建て邸宅。
そのお値段はおそらく億を下らないだろう豪華な造り。
ここが今回自分達を呼び出した大物Vチューバー夢川キララの自宅。
小市民薄井と骨の髄まで貧乏根性が染み付いた苦労人花代はビビり散らかしていた。
この中で唯一堂々としているのは実家がお金持ちの要だけ。
ビビり倒す役立たず共を余所に、要がインターホンに手を掛けた。
ピンポーンという聞き馴染んだ呼び出し音。
インターホンの音は一緒なんだな。
そんな下らない事を考えながら、今まで役立たずだった薄井が再起動。
社長としての役割を思い出し、慌ててインターホン前で身構える。
『は~い』
インターホン越しに聞こえてきたのはおっとりしていて、でもどこか気怠そうな女性の声。
「初めましてぇ!わたくし……スターヌーンプロの薄井と申しますぅ!!」
またしてもコミュ障発動。
バクバクと早鐘を打つ心臓。
薄井の声が緊張で上擦る。
インターホンの向こう側からクスクスという笑い声。
心底可笑しそうで隠す素振りすら見せない。
『あぁ、エライすんません。ロック開けたさかい、入ってもろうてもえぇやろか?』
無邪気さと艶っぽさが入り混じった女性の声。
以前PC越しで話した時の固い公人としての声とは違った魅惑的な声。
異性なら少なからず惹きつけられる声だが、今の薄井は恥ずかしさの方が勝っていた。
女性と同じくクスクスと笑う要と花代の声を背に扉を開く。
「…………」
扉をくぐった瞬間、薄井は違和感を覚えた。
具体的になんといえばいいか分からない。
ただ何となく居心地が良かった。
「この部屋……ちょっと変です」
花代も薄井と同じく部屋に違和感を覚えたらしい。
だが、薄井とは違い居心地が悪そうな様子。
⦅この部屋……自然光が全然入っていないですね⦆
違和感の正体を指摘したのは要だった。
屋内は人工の光で程よく照らされていたが、昼間だというのに全く太陽光を取り入れていなかった。
窓は換気用の小さいモノだけで、その窓にも遮光カーテン。
よくよく家の様子を思い出してみれば、光を採る為の窓が一切無かったように思える。
薄井が居心地の良さを感じたのは、瞳に余計な日光が入って来なくなったからに他ならない。
逆に自然光を目いっぱい有効活用してきた花代は居心地の悪さを感じたのだろう。
「どうぞ~。遠慮せんと上がってんか~」
結構な時間、玄関先で立ち話をしていたようだ。
胡散臭い関西弁で呼びかけられた三人は慌てて靴を脱ぎ、奥へと進む。
三人で移動するには若干狭い廊下を進み、扉を開いた先に待ち受けていたのは二人の人物。
一人は長身で端正な顔つきの男……仮想恋歌社長柊潤。
そしてもう一人は女性だろうか。
その装いは異様。
白の表地に黒の裏地の長袖ワンピースドレス。
白の手袋。白のハイソックス。
そして何より特筆すべきは屋内だというのにフェイスカバー付きの白の帽子。
肌の露出が一切無い白一色の出で立ち。
「初めまして、スターヌーンプロダクションの皆様。ウチが“喜村笑美”……夢川キララです」
その口からは先ほど聞いた無邪気さと妖艶が入り混じった女性の声。
薄井は息を呑んだ。
目の前の小柄で真っ白な女性、喜村笑美こそが今回の依頼人。
夢川キララなのだと……
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