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第四章_過去を悟る少女、未来に謡うVシンガー
第五話_ライブ見学に行こうその一
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八月半ば。世間が盆休みに入った頃の事。
スターヌーン事務所にて。
薄井は現地ライブの準備に奔走していた。
「もしもし”Nishi Tama Music House”様でいらっしゃいますか?わたくし、スターヌーンプロダクションの薄井と申します。今回は弊社のライブ企画にご協力頂きまして、誠にありがとうございます。
今後の予定について、打ち合わせを致したくお電話差し上げさせて頂いたのですが……」
「もしもし、宇美さんですか?現地ライブ用のグッズの原案についてですが……」
「桜井。ライブ用の新曲についてなんだけど……」
「さて、ホームページとSNSへの告知はばっちり。次は……」
薄井は無自覚のまま、馬車馬の如く働きまくっていた。
普通の人間ならとうに倒れているであろう仕事量。
それを楽しそうに且つ不気味な笑顔を浮かべながらこなす姿はもはやホラーだ。
⦅これは……流石にまずいですね⦆
「みかちゃん。薄井さんっていつ休みましたか?」
「この間の入院騒動以来一度も……」
⦅あの人、仕事と思ってないから質が悪いんですよね……⦆
ゾンビ薄井を眺めながら、ため息を吐く要、花代、三日月。
こんな納涼は誰も求めてはいない。
「どうした?雁首揃えてしけた面してよぉ」
不穏な空気を感じ取ってか、声を掛けてきたのは氷山。
三日月が黙って薄井の方を指し示す。
「なるほど、ありゃ確かにやべぇな」
「でしょ。どうやったらあの人に休みを取らせられるか……」
社長の惨状に氷山が顔を引きつらせる。
あーでもない、こうでもないと唸り声を上げる女性?陣。
「なぁ、社長って最近現地ライブに行ったか?」
良い案が出ない中、氷山がふと呟く。
その声に女性?陣がハッとした表情を浮かべる。
⦅そういえば見た事ありませんね。薄井さんが現地ライブに行ったとこ⦆
「ワタシ、てっきり現地には行かないタイプなんだと思っていました」
「盲点だったわ。そういえばあの人、鏑木ねじにいた頃はライブで有休使ってたわね」
「じゃあ、ライブに誘えばいいんじゃねぇか。現地ライブに向けた勉強ってことで」
⦅それだ!⦆「それだ!」「それだ!」
氷山の提案に三人の声がハモった。
これだけお膳立てすれば流石の薄井も断らないだろう。
「じゃあ決まりだな。チケットは俺が全員分手配しておくから……会社の経費でいいよな」
そう言いながら、氷山が気怠そうにパソコンを叩き始める。
「ちょっと待ってください。なんで頭数に氷山さんが入っているんですか」
「ケチ臭いこと言うなよ。俺がチケットと現地まで案内するんだし……それにあんたらでチケット買えんのか?」
「…………」
三日月はぐうの音も出なかった。
いくら薄井にV業界のあれこれを叩き込まれている最中とはいえ、実際にライブに行った事は無い為、色々と不安が付き纏う。
要と花代もその点については同様で現状、薄井に次いでこの業界に詳しい氷山に頼るのが一番だった。
「決まりだな。ちょうどいいイベントもあったし、予約取っておくからな」
⦅ちょうどいいイベント……ですか?⦆
「あぁ」
首を傾げる要に、氷山はパソコンから目を離さずに応えた。
「Liedだ」
⦅!!!⦆「!!!」「!!!」
女性?陣は驚愕した。
氷山が口にしたのは、Wチューブ登録者数百万人を超える超有名Vシンガーの名前だった。
スターヌーン事務所にて。
薄井は現地ライブの準備に奔走していた。
「もしもし”Nishi Tama Music House”様でいらっしゃいますか?わたくし、スターヌーンプロダクションの薄井と申します。今回は弊社のライブ企画にご協力頂きまして、誠にありがとうございます。
今後の予定について、打ち合わせを致したくお電話差し上げさせて頂いたのですが……」
「もしもし、宇美さんですか?現地ライブ用のグッズの原案についてですが……」
「桜井。ライブ用の新曲についてなんだけど……」
「さて、ホームページとSNSへの告知はばっちり。次は……」
薄井は無自覚のまま、馬車馬の如く働きまくっていた。
普通の人間ならとうに倒れているであろう仕事量。
それを楽しそうに且つ不気味な笑顔を浮かべながらこなす姿はもはやホラーだ。
⦅これは……流石にまずいですね⦆
「みかちゃん。薄井さんっていつ休みましたか?」
「この間の入院騒動以来一度も……」
⦅あの人、仕事と思ってないから質が悪いんですよね……⦆
ゾンビ薄井を眺めながら、ため息を吐く要、花代、三日月。
こんな納涼は誰も求めてはいない。
「どうした?雁首揃えてしけた面してよぉ」
不穏な空気を感じ取ってか、声を掛けてきたのは氷山。
三日月が黙って薄井の方を指し示す。
「なるほど、ありゃ確かにやべぇな」
「でしょ。どうやったらあの人に休みを取らせられるか……」
社長の惨状に氷山が顔を引きつらせる。
あーでもない、こうでもないと唸り声を上げる女性?陣。
「なぁ、社長って最近現地ライブに行ったか?」
良い案が出ない中、氷山がふと呟く。
その声に女性?陣がハッとした表情を浮かべる。
⦅そういえば見た事ありませんね。薄井さんが現地ライブに行ったとこ⦆
「ワタシ、てっきり現地には行かないタイプなんだと思っていました」
「盲点だったわ。そういえばあの人、鏑木ねじにいた頃はライブで有休使ってたわね」
「じゃあ、ライブに誘えばいいんじゃねぇか。現地ライブに向けた勉強ってことで」
⦅それだ!⦆「それだ!」「それだ!」
氷山の提案に三人の声がハモった。
これだけお膳立てすれば流石の薄井も断らないだろう。
「じゃあ決まりだな。チケットは俺が全員分手配しておくから……会社の経費でいいよな」
そう言いながら、氷山が気怠そうにパソコンを叩き始める。
「ちょっと待ってください。なんで頭数に氷山さんが入っているんですか」
「ケチ臭いこと言うなよ。俺がチケットと現地まで案内するんだし……それにあんたらでチケット買えんのか?」
「…………」
三日月はぐうの音も出なかった。
いくら薄井にV業界のあれこれを叩き込まれている最中とはいえ、実際にライブに行った事は無い為、色々と不安が付き纏う。
要と花代もその点については同様で現状、薄井に次いでこの業界に詳しい氷山に頼るのが一番だった。
「決まりだな。ちょうどいいイベントもあったし、予約取っておくからな」
⦅ちょうどいいイベント……ですか?⦆
「あぁ」
首を傾げる要に、氷山はパソコンから目を離さずに応えた。
「Liedだ」
⦅!!!⦆「!!!」「!!!」
女性?陣は驚愕した。
氷山が口にしたのは、Wチューブ登録者数百万人を超える超有名Vシンガーの名前だった。
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