VSingerS【バーチャルシンガーズ】~俺は歌姫【ゴリラ】の敏腕マネージャー〜

黄昏湖畔

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第四章_過去を悟る少女、未来に謡うVシンガー

第六話_ライブ見学に行こうその二

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 八月終盤、盆も明けて世間様が労働に勤しみだした水曜日の昼間。
 西多摩川市八王子町の小さなライブハウスの入口付近にて。
 そこには興奮した薄井に引きつられたスターヌーンプロの一同がいた。

「よっし!みんな!今日は盛り上がっていくぞ!」

 今日は待ちに待ったLiedのライブ当日。
 薄井のテンションは右肩上がりで上昇中だった。

「おぉぉぉぉおおおおおおおおおおぉ~~~~!」
「おぉ~~」
「おっ、おぉ……」
「社長。道のど真ん中ではしゃがないで下さい」

 もっとも一緒に盛り上がる氷山以外はそのテンションについて行けていない模様。
 恥ずかしそうに余所行きおとこの声で合わせる要。
 同じく恥ずかしそうに俯く花代。
 そして小言を口にする三日月。

Vオタ野郎二人以外は周囲の奇異の目に耐えられなかった。

「ところで薄井さん。なんでこんな時間から集合なんですか?」

 首を傾げながら問いかけたのは要だった。
 それに同意する様に花代と三日月も首を縦に振る。

「なんでって、これからゼロ次会だろ?」
「だよな。他に何があるってんだ?」

 薄井は思わず首を傾げた。
 ゼロ次会って普通じゃないの?と思ったからだ。
 氷山も薄井同様首を傾げた。
 どうやら自分と同じ考えらしい。
 オタク同士の共通認識に薄井は安心感を覚えた。

「そこ二人。通じ合ってないで説明して下さい」

 要がじっとりとした目で二人に詰め寄る。
 身長190センチメートル越えの要に睨まれれば、流石の薄井もビビり倒す。

「ゼロ次会ってヤツはいわばファン同士で行うライブ前の顔合わせだな」
「顔合わせ……ですか?」
「あれ?意外だったかな?」
「はい、薄井さんがそういう人付き合いをするとは思えませんでしたから」
「…………」

 首を傾げる要に、薄井は黙り込む。
 残りの三人からもクスクスと忍び笑い。
 自覚はしているが、いざ他人に指摘されると中々に堪える。
 真実の残酷さに目を背ける為に、薄井は咳払いを一つ。

「まぁ、こうしてファン同士が顔を合わせる機会って中々ないし、仲良くなっていれば企画の協力とかグッズの交換とかもできるから」
「どういう事ですか?」
「まぁ、その辺は実際にゼロ次会をしながら……近くに手ごろなファミレスがあるし」
「リサーチ済み……ですか」

 薄井の説明に要と花代が首を傾げ、三日月が用意周到さに呆れた表情を浮かべる。

「では行くとしますか」
「おぉぉぉおおおおお~~~!」
「……」「……」「……」
 困惑する三人と付き合いの良いオタ仲間を引き連れ、薄井が歩き出す。
 イベントを思う存分楽しむ為には下準備が肝心。
 推し事は常に本気。
 それが薄井の信条なのだ。
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