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第四章_過去を悟る少女、未来に謡うVシンガー
第十四話_休んでもいいんだよ
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薄井は思わず首を傾げた。
要に連れられてやって来たのは、何の変哲もない公園だった。
「要君?なんでここに?」
⦅近かったからです⦆
問いに答えているようで全く答えていない返しに薄井はますます首を捻った。
⦅薄井さん。座って下さい⦆
「う……うん」
薄井は要に言われるまま、近くのベンチに腰掛けた。
戸惑う薄井を眺めながら、満足気に要も隣に腰掛ける。
「…………」
⦅…………⦆
沈黙……やかましいセミの声。
一年前と同じ目玉焼きが焼けそうな太陽光線。
あの日は鬱陶しくて仕方なかったのに、今はそれすら愛おしい。
⦅薄井さん。楽しい事をやっていると時間を忘れちゃいますよね⦆
「そうだね」
今、自分の耳に届くのはセミの声だけじゃない。
⦅楽しい事って、ずっとやっていると知らない間に疲れちゃうんですよ⦆
「そうかも……しれないね」
自分の隣には同じ夢を見る同志がいる。
⦅わたしだってそういう時があります。謡うのはとても楽しいけど、連続で百曲も謡えば普通は倒れちゃいます⦆
「そう言えばやったね……百曲耐久」
苦楽を共にした仲間がいる。
「……そう言えば、ずっと地声で話してるね」
⦅わたしも少し頑張ってみようかなって⦆
「……ほどほどにね」
⦅薄井さんこそ……⦆
穏やかに語り掛ける要の声が心地良い。
薄井は穏やかな気持ちでそっと目を閉じる……
⦅休んでも~いいよ~♪
休んでも~いいよ~♪疲れたなら目を瞑ろう~♪
心は雨模様だから♪今は眠ろうよ♪
休んでも~いいよ~♪
休んでも~いいよ~♪疲れたなら目を瞑ろう~♪
走り続けた心に~♪安らかな眠りを~~♪⦆
懐かしい歌。
最近はとんと聞かなくなった歌。
薄井はうずくまった。
走り過ぎて疲れた心を癒す為。
滲む涙を堪える為。
「やっぱり……君だったんだ」
薄井は誰にも聞こえない声で呟いた。
あの時の子供は彼だったのだと……今、確信した。
要に連れられてやって来たのは、何の変哲もない公園だった。
「要君?なんでここに?」
⦅近かったからです⦆
問いに答えているようで全く答えていない返しに薄井はますます首を捻った。
⦅薄井さん。座って下さい⦆
「う……うん」
薄井は要に言われるまま、近くのベンチに腰掛けた。
戸惑う薄井を眺めながら、満足気に要も隣に腰掛ける。
「…………」
⦅…………⦆
沈黙……やかましいセミの声。
一年前と同じ目玉焼きが焼けそうな太陽光線。
あの日は鬱陶しくて仕方なかったのに、今はそれすら愛おしい。
⦅薄井さん。楽しい事をやっていると時間を忘れちゃいますよね⦆
「そうだね」
今、自分の耳に届くのはセミの声だけじゃない。
⦅楽しい事って、ずっとやっていると知らない間に疲れちゃうんですよ⦆
「そうかも……しれないね」
自分の隣には同じ夢を見る同志がいる。
⦅わたしだってそういう時があります。謡うのはとても楽しいけど、連続で百曲も謡えば普通は倒れちゃいます⦆
「そう言えばやったね……百曲耐久」
苦楽を共にした仲間がいる。
「……そう言えば、ずっと地声で話してるね」
⦅わたしも少し頑張ってみようかなって⦆
「……ほどほどにね」
⦅薄井さんこそ……⦆
穏やかに語り掛ける要の声が心地良い。
薄井は穏やかな気持ちでそっと目を閉じる……
⦅休んでも~いいよ~♪
休んでも~いいよ~♪疲れたなら目を瞑ろう~♪
心は雨模様だから♪今は眠ろうよ♪
休んでも~いいよ~♪
休んでも~いいよ~♪疲れたなら目を瞑ろう~♪
走り続けた心に~♪安らかな眠りを~~♪⦆
懐かしい歌。
最近はとんと聞かなくなった歌。
薄井はうずくまった。
走り過ぎて疲れた心を癒す為。
滲む涙を堪える為。
「やっぱり……君だったんだ」
薄井は誰にも聞こえない声で呟いた。
あの時の子供は彼だったのだと……今、確信した。
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