異世界召喚された勇者達は召喚された本当の理由をまだ知らない

昆布海胆

文字の大きさ
3 / 4

後編 次期魔王復活の日

しおりを挟む
その世界の北の最果て、そこに残された魔王が居た場所に素手の勇者は居た。
この世界でも魔王を除けば最強と言われる魔物達を鍛え尽くした拳一つで撃破した素手の勇者は幹部と思われる魔物の言葉に驚きを隠せなかった。

「本当なのか?」
「くくく・・・お前がいくら強かったとしても魔王様は最強となって復活する。既にその時は間近と迫っているのだ」

胸倉を掴んで持ち上げていた魔物を放り捨て素手の勇者は走り出した。
自分を召喚した王女、クレアの元を目指して・・・

そして、時を同じくして槍の勇者は自室のベットにクレア王女を押し倒していた。
まるで全てを諦めたような表情で目の前の男を見るクレアに槍の勇者は他の女で培った愛撫を駆使する。

「濡れないわけじゃないんですね・・・」
「えぇ・・・」

槍の勇者はベットの上ではだけたクレア王女の前で自身のリミッターを解除する。
魔物を相手にする場合、通常の人間の身体能力ではまるで歯が立たない。
そのレベルの生物を相手にする程の身体能力を保持する事が出来る者は自身にリミッターをかけてその力を抑制して生活を送るものである。
つまり女性と性行為を行なう際に解除するなんてのは本来ありえないのである。

「それじゃ、いきますよ」
「いつでも・・・いいですよ」

クレアの体に覆いかぶさり槍の勇者はその体を一気に押し進めた!
しかし、結果は同じであった・・・

「ぐっぐぅぅぅぅううう・・・」
「やはり無理でしたか・・・」

自らの股間を押さえて蹲る槍の勇者、その前に立ち悲しそうに俯くクレア王女。
槍の勇者は情けない姿勢のまま先程のクレアの言葉を思い起こしていた。

クレア王女、その正体は過去に魔王を倒した鉄壁の戦乙女と呼ばれる英雄だったのだ。
史上最強の防御力を保持した彼女は魔王の全力攻撃ですら僅かな擦り傷を付けるのが限界な程硬かった。
クレアはその防御力を頼りに時間を掛けて魔王を削り倒したのだ。
そして、魔王は最後に・・・

『我が肉体は滅びるが次なる魔王はお前の体内に宿らせてやる!』
『なっ?!』
『本来であれば最強の隠匿術を持つ魔物の体内で次期魔王は育てられるのだがお前ならばその必要も無いだろう。なにより生まれてくる次期魔王はお前のステータスを受け継いで最強の守備力を保持して生まれてくるであろう』

そう告げ呪いの様な魔法を駆使してクレアの体内に次期魔王を送り込んだのであった。
数年にも及ぶ研究の結果、クレアの体内に宿る次期魔王は彼女の子宮内に存在していた。
そこへ攻撃を仕掛ける事が出来れば生まれる前の魔王は非常に弱くそのまま倒す事が可能なのであるが一つ問題があった・・・
そう、彼女の全ての攻撃を防ぐ防御力である。
研究の結果、クレアの処女膜を破る事が出来れば次期魔王を倒す事が出来る事が分かっているにも関わらず、それが今まで不可能とされていたのだ。
そして、数年前に魔王対策として受け継がれてきた勇者を異世界から召喚しその力を借りると言う伝承を紐解きクレアは最後の賭けに出ていたのだ。

呼び出された4人の勇者、その中でも最も力が強い斧の勇者が最初に選ばれたが結果は言うまでもないだろう。
次に選ばれたのが補助魔法を使える剣の勇者であった。だが結果は斧の勇者と同じく彼女の防御力の前に・・・
そして、最後に貫く事に関して最も適していると思われる槍を使う勇者を選んだのであるが・・・
結果は見ての通りだったのだ。

「申し訳ありませんでした。元の世界に帰られるのでしたら最初にお伝えした通り記憶と時間は戻した状態で帰れますので・・・」

腰を曲げたまま股間を押さえる槍の勇者にそう言い残してクレアは部屋を出て行く・・・
最後の素手の勇者に期待した所で彼のステータスは4人の中で最弱、希望は無いだろうとクレアは自室に戻るのであった・・・

その日の夜更け、城へ帰りついた素手の勇者はその禍々しい気配を感じ取り王女の寝室を目指して城内を駆け抜けていた。
勿論城内に居る兵士は素手の勇者の存在に直ぐに気が付くがクレア自身から彼等の場合は必ず通すように厳命されていたので素通りである。
そして、王女の部屋の扉を開いたと同時に部屋内部から恐ろしいほどの瘴気が噴出していた!

「なっ?!これは?!」

その部屋の中央でネグリジェ姿のクレアは自身の腹部を抑えて苦しんでいた。
そして、部屋を開けた時に城内に噴出した瘴気に驚いて飛び起きた剣の勇者と槍の勇者が駆けつける。

「素手の勇者?!」
「お前なんでこんな所に?!」
「いまはそれどころじゃないみたいだ」

そう告げる素手の勇者の視線の先を追うと王女クレアが腹部を押さえて苦しんでいる。
二人はそれを見て直ぐに理解した、クレア自身から聞かされていたからである。
つまり、魔王が復活する・・・

「素手の勇者!お前ならもしかしたら・・・」
「王女の腹の中には次期魔王が宿らされているんだ!」
「そうか・・・腹の中か・・・」

そう言って素手の勇者は王女の方へ近寄る。
一体何をするつもりなのかと二人の勇者が見詰める前で素手の勇者はクレア王女に対してスキルを使用した。
『金剛力』
それは自身と触れている対象の体を気の力で強化して防御力を上げるスキル。
少々前屈みになっている槍の勇者を見た素手の勇者はクレア王女を救う為にこの手段を選んだのである。

「こ・・・これは?!」
「一時的に守備力を1.2倍にしました」

素手の勇者は世界を巡った時に様々な情報を得ていた。
その中には勿論鉄壁の戦乙女の情報も沢山在った。
魔王と戦った時に彼女の守備力は高すぎて魔王の攻撃でかすり傷しか付けられなかったと知っていたのである。
そして、その守備力は槍の勇者の突破力でも歯が立たなかったのを理解して考えた素手の勇者。
その結果、思いついた方法とは押して駄目なら引いてみろである!

「お腹が・・・楽になった・・・」

先程まで中から魔王が突き破って出てきそうになっていた腹部は徐々に小さく戻っていっていた。
そして、クレア王女の下腹部から噴出していた瘴気が徐々に弱々しくなっていき・・・遂に消え去った。

「俺達の勝利だ!」

誰もがポカーンとする中に素手の勇者の宣言が響き渡る。
この瞬間、次期魔王は子孫を残す事無く消滅しこの世界から魔王が消失したのであった・・・
その死因は鉄壁の乙女の体から誕生する筈が逆に防御力に圧殺されて死んだと言うことはこの場に居る者達だけの秘密とされるのであった・・・
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...