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しおりを挟む結局わたしは顔色が悪いから、という理由で営業部長に帰された。
(悪い人ではないんだけどね)
お昼ご飯に冷凍パスタを温めて食べて、テレビを見ていると、なんだか眠くなってきた。テレビの画面で時間を確認すると二時前だ。昼に寝たら、夜寝れなくなるんじゃないか。そう思っても、この眠気には抗えそうもなかった。
(……今日くらい良っか)
諦めて、ノロノロとベッドに行く。
シングルサイズのベッドに寝転がれば、スマホを見る余裕もなく、眠気が訪れた。
***
ピンポン、とインターフォンが鳴る。
起き上がることが億劫で、立ち去るのを待っても、何度も鳴った。平日の昼間に訪ねてくるなんて、勧誘か何かだろう。そう思いながら、仕方なく立ち上がって、インターフォンの通話ボタンを押す。
『桃子さん。桐山です』
『えっ』
ドアスコープを覗くと、確かに彼はそこに居た。玄関の扉を開ければ、桐山くんはコンビニの袋を両手に持って、立っていたのだ。
「……どうしたの?」
「部長から桃子さんが体調不良で帰ったと聞きまして……心配になって昼間に電話もしたんですけど、繋がりませんでしたし」
桐山くんとは彼のマンションを出る前に連絡先を交換している。
けれど、電話に出なかったからといって、わざわざ仕事中にやってくるのはいかがなものか。
「桐山くん……」
どう言おうかと悩みながら声をかけると、彼は「だって」と続ける。
「もう夕方なのにメッセージも既読になっていないから、桃子さんが倒れたかと思って……」
「え? もう夕方なの?」
「はい。そうですけど……」
彼に腕時計を見せてもらって固まる。本当にもう六時を過ぎている。
思っていたよりも寝過ぎてしまったようだ。
「ごめん。寝ていて……スマホも見ていないの」
「そうでしたか」
素直に謝れば、彼はホッと息を吐く。
余計な心配をかけさせたことを申し訳なかった。
「あの。せっかくだから、お茶でも飲む?」
居た堪れなさから誘えば、彼はキラリと目を輝かせた。
「良いんですか!」
満面の笑みに、なんだか嫌な予感がした。
でも自分から言った手前。引くことができなくて、ぎこちなく頷く。
「ありがとうございます」
その言葉通りに彼が玄関に入る。そして、桐山くんはドアを閉めると、今にも舌舐めずりしそうな顔で「男を簡単に部屋に入れるのは良くないですよ」と言ったのだ。
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