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慎兄さんは濃い青色の車で迎えに来てくれた。二海兄さんが乗っているコンパクトカーと呼ばれるものより少しだけ大きい気がする。車に詳しくない僕には種類なんてわからないけど、とにかく慎兄さんにぴったりでかっこいい車だと思った。
そんな車の助手席に僕はいま乗っている。運転している慎兄さんが気になってチラチラ盗み見ていると「本当に用事なかったの?」と聞かれて慌てて前を向いた。チラ見していたのがばれたのかと思って、「だ、大丈夫です」と前を向いたまま答える。
「金曜日だから、てっきりデートとか入ってるんじゃないかと思ってたんだけど」
「で、デートなんて、そんなのないです」
答え方が変だったのか、慎兄さんがちょっとだけ笑ったような気がした。
(運転してる慎兄さんなんてレアすぎる。……もうちょっとくらい見てもいいよね)
それにこんなチャンスは二度とない。そう思ったら我慢できなかった。頭は前を見たまま何度もチラチラと運転席を見る。かっこよすぎる横顔に見惚れていると、僕の視線に気づいたのか慎兄さんが流し目みたいな感じでこっちを見た。
(か、かっこよすぎてつらい)
運転する姿も流し目もかっこよすぎてクラクラした。こんなにもかっこいい慎兄さんの隣に座れるなんて、年末の宝くじが当たるより絶対にすごい。
「てっきり彼女でもいるのかと思ってた」
「そ、そんな人いません!」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じた。これが二海兄さんの車なら賑やかな音楽で気にならないのに、静かな車内だとやけに大きく聞こえて恥ずかしくなる。
「そっか。二海に何度聞いても教えてくれなくてさ」
「え? 二海兄さんが何て、」
「でも三春くん可愛いから、すぐに恋人なんてできそうだけど」
「か、可愛いって……」
「あ、男に可愛いはナシか」
慌てて首を横に振った。兄さんたちに言われると微妙な気持ちになるけど、慎兄さんに言われるのは悪くない。というより慎兄さんになら何を言われても嬉しくなる。
「店で借りてる駐車場、ちょっと離れてるから先に店の前で下ろすね」
「あ、はい」
そういって車が止まったのは、あのお洒落な美容院の前だった。僕が下りるとかっこいい車が音を立てずに去って行く。すっかり暗くなった中、小さくなっていく車のライトを見送ってから改めてお店を見た。
今日は臨時休業とかで、ブラインドが下りているから中の様子はわからない。それなのに美容院に来ることになったのは、少しだけ伸びた髪の毛が気になると慎兄さんが言ったからだ。
(僕は全然気にならないけど、やっぱり美容師だからかな)
都会でヘアメイクなんてすごい仕事をしていたくらいだから、ちょっと伸びただけでも気になるのかもしれない。そんなすごい人にタダで切ってもらうなんて贅沢すぎやしないだろうか。
(「俺が気になってるだけだから」って言ってたけど、本当にいいのかな)
それにこの前も割引券より安くしてもらった。「ほかのお客さんには内緒だよ」なんて口に人差し指を当てながら小声で言う慎兄さんがかっこよすぎて一瞬だけ気が遠くなった。そのせいで遠慮するのを忘れてしまった。
(内緒だよって言った慎兄さんもかっこよかったなぁ)
人差し指を口に当てながらニコッて笑った顔は、髪を切ってくれているときと違って色気があったように思う。
(い、色気って何言ってんだ)
顔が一気に熱くなった。慌てて両手でパタパタ顔をあおいでいると「お待たせ」とかっこいい声が聞こえてきて、ますます顔が熱くなる。
振り返るとモデルにしか見えない慎兄さんが立っていた。暗い中でもスポットライトが当たっているみたいにキラキラ眩しくて仕方がない。
(こんなかっこいい慎兄さんと二人きりなんて、どうしよう)
前回以上に緊張しながら誰もいないお店の中に入った。
「あの、本当にいいんですか?」
「うん?」
「だって今日はお店休みだし、それにお金も……」
「俺が勝手に気にしてるだけだから気にしなくていいよ」
「でも、」
「俺好みにさせてもらったお礼だと思って。それより俺の我が儘に付き合わせちゃってごめんね?」
「つ、つき合わされてるなんて、そんなこと思ってません」
「あはは。三春くんは相変わらずいい子だなぁ」
頭をポンと撫でられて顔から火が出るかと思った。きっと真っ赤になっているに違いない顔を見られたくなくて、俯いたままマントを着けてお洒落な椅子に座る。
(うぅ……静かすぎてますます緊張してきた)
前回と違って音楽も流れていなければお客さんやお店の人たちの話し声もしない。そんな中で慎兄さんと二人きりだなんて緊張しないわけがない。前回以上にガチガチに固まっている僕とは違い、慎兄さんは慣れた手つきでシュッシュッと後ろ髪を切り始めた。
そうっと鏡越しに慎兄さんを見た。真剣な表情はやっぱりかっこよくて惚れ惚れする。長くて器用な指が僕の髪に何度も触り、その指がたまに耳や首に触れる。そのたびに触れた場所がカッと燃えるように熱くなった。
(落ち着け……落ち着け……)
呪文のように何度もそう言い聞かせた。
(あんまり見ないようにしないと……でも、こんなチャンスそうそうないんだから見ておきたい気もするし……どうしよう……!)
見たい気持ちと、あんまり見たら怪しまれるんじゃないかと不安が入り混じって頭がグルグルする。そうこうしているうちに「はい、終わったよ」という声がしてホッとした。同時に「もっと見ておけばよかった」と残念な気持ちになる。
「うん、これで半月はもつかな」
鏡を持った慎兄さんが「後ろ、すっきりしたよ」と言って合わせ鏡にして見せてくれた。たしかにすっきりしたような気もするけど、自分の髪型に無頓着だからかよくわからない。それよりも僕を見ながら微笑んでいる鏡の中の慎兄さんのほうが気になって、自分の髪の毛なんてそっちのけで慎兄さんばかり見ていた。
「じゃ、ちょっと待ってて」
「はい」
マントみたいなものを取った慎兄さんが、床に散らばっている髪の毛をホウキで集め始めた。本当は手伝ったほうがいいんだろうけど、普段ほとんど掃除をしない僕では邪魔になるような気がして声をかけることができない。
「やっぱり僕って駄目だな」としょげながらソファで大人しく待つ。少ししてから「お待たせ」と言って慎兄さんが店の奥から戻って来た。慌てて立ち上がろうとしたタイミングでピロンと着信音が鳴る。
「おっと、ちょっとごめんね」
鳴ったのは慎兄さんのスマホだった。レジのほうに歩いて行きながらズボンの後ろポケットからスマホを取り出している。そのまま画面を見ているということは届いたメッセージに返信をしているのかもしれない。
(慎兄さんのほうこそ恋人とかいないのかな)
後ろ姿までもかっこいい慎兄さんを見ながらそう思った、途端に胸がキリキリと痛くなる。慎兄さんはこんなにかっこいいんだから恋人がいてもおかしくない。都会にいたときもモテただろうし、そういえば高校生のときは二海兄さんみたいなファンクラブもあったと聞いている。
(高校のときから恋人、いたんだろうな)
慎兄さんくらいかっこいいなら恋人の一人や二人……って、さすがに二人は駄目か。でもファンならたくさんいそうな気がする。そういう僕だってファンみたいなものだ。
(そっか、ファンだったらずっと好きでもおかしくないか)
それに世の中は“推し活”が流行っている。慎兄さんはアイドルではないけど、僕にとってはアイドル以上の存在だ。
僕の“好き”はファンの“好き”とは違う。でも、この“好き”は持ち続けていたら駄目なものだ。それにファンなら慎兄さんに気持ちがばれても誤魔化すことができる。
「ごめんね」
慎兄さんの声にハッとした。「ごめんね」って、もしかして……。
「ついでにこのゴミもまとめてくるから、もう少し待っててくれるかな?」
そう言ってレジ近くに置いてあったゴミ箱を持ち上げた。きっと僕の髪の毛と一緒にゴミ袋にまとめるんだろう。
「はい、大丈夫です」
一瞬「用事が入ったから」と言われるのかと思った。さっきのメッセージが彼女からのもので、このあと会うことになったから……そう言われるんじゃないかと思って胸がギシギシと痛む。
(僕は慎兄さんのファンなんだって、たったいま思ったばかりなのに……)
それなのに、慎兄さんに恋人がいるかもと思っただけで胸が押し潰されてしまいそうだ。せっかく抑え込もうとしていた“好き”という気持ちがあふれ出そうになる。
(僕、なんか変だ)
駄目だと思えば思うほど慎兄さんへの“好き”が強くなっていく。前回切ってもらったときのこと、今日の車で見たかっこいい横顔、後ろ髪を整えてくれている真剣な顔、どの慎兄さんもかっこよくて、ただのファンになるなんてできそうにない。
(ただのファンなんて、やっぱり僕には無理だ)
俯くと握り締めた自分の手が目に入った。ぎゅうっと力を入れながら、どうにもならない自分の気持ちが嫌になる。
「三春くん、どうかした?」
「え……?」
顔を上げたら、コートと僕のパーカーを手にした慎兄さんがすぐそばに立っていた。
「顔色が悪いね。もしかして体調がよくなかった?」
「だ、大丈夫です」
「このあと一緒に夕飯でも食べようかと思ってたんだけど、やめとこうか?」
「そ、れは……」
一緒にご飯を食べたい。こんなチャンスは二度とないかもしれない。それなのに喉が詰まって返事をすることができなかった。
(まだ一緒にいたい。でも、一緒にいたら僕の気持ち、ばれそうな気がする)
何も言えずに俯くと、慎兄さんが足元にしゃがむのが見えた。
そんな車の助手席に僕はいま乗っている。運転している慎兄さんが気になってチラチラ盗み見ていると「本当に用事なかったの?」と聞かれて慌てて前を向いた。チラ見していたのがばれたのかと思って、「だ、大丈夫です」と前を向いたまま答える。
「金曜日だから、てっきりデートとか入ってるんじゃないかと思ってたんだけど」
「で、デートなんて、そんなのないです」
答え方が変だったのか、慎兄さんがちょっとだけ笑ったような気がした。
(運転してる慎兄さんなんてレアすぎる。……もうちょっとくらい見てもいいよね)
それにこんなチャンスは二度とない。そう思ったら我慢できなかった。頭は前を見たまま何度もチラチラと運転席を見る。かっこよすぎる横顔に見惚れていると、僕の視線に気づいたのか慎兄さんが流し目みたいな感じでこっちを見た。
(か、かっこよすぎてつらい)
運転する姿も流し目もかっこよすぎてクラクラした。こんなにもかっこいい慎兄さんの隣に座れるなんて、年末の宝くじが当たるより絶対にすごい。
「てっきり彼女でもいるのかと思ってた」
「そ、そんな人いません!」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じた。これが二海兄さんの車なら賑やかな音楽で気にならないのに、静かな車内だとやけに大きく聞こえて恥ずかしくなる。
「そっか。二海に何度聞いても教えてくれなくてさ」
「え? 二海兄さんが何て、」
「でも三春くん可愛いから、すぐに恋人なんてできそうだけど」
「か、可愛いって……」
「あ、男に可愛いはナシか」
慌てて首を横に振った。兄さんたちに言われると微妙な気持ちになるけど、慎兄さんに言われるのは悪くない。というより慎兄さんになら何を言われても嬉しくなる。
「店で借りてる駐車場、ちょっと離れてるから先に店の前で下ろすね」
「あ、はい」
そういって車が止まったのは、あのお洒落な美容院の前だった。僕が下りるとかっこいい車が音を立てずに去って行く。すっかり暗くなった中、小さくなっていく車のライトを見送ってから改めてお店を見た。
今日は臨時休業とかで、ブラインドが下りているから中の様子はわからない。それなのに美容院に来ることになったのは、少しだけ伸びた髪の毛が気になると慎兄さんが言ったからだ。
(僕は全然気にならないけど、やっぱり美容師だからかな)
都会でヘアメイクなんてすごい仕事をしていたくらいだから、ちょっと伸びただけでも気になるのかもしれない。そんなすごい人にタダで切ってもらうなんて贅沢すぎやしないだろうか。
(「俺が気になってるだけだから」って言ってたけど、本当にいいのかな)
それにこの前も割引券より安くしてもらった。「ほかのお客さんには内緒だよ」なんて口に人差し指を当てながら小声で言う慎兄さんがかっこよすぎて一瞬だけ気が遠くなった。そのせいで遠慮するのを忘れてしまった。
(内緒だよって言った慎兄さんもかっこよかったなぁ)
人差し指を口に当てながらニコッて笑った顔は、髪を切ってくれているときと違って色気があったように思う。
(い、色気って何言ってんだ)
顔が一気に熱くなった。慌てて両手でパタパタ顔をあおいでいると「お待たせ」とかっこいい声が聞こえてきて、ますます顔が熱くなる。
振り返るとモデルにしか見えない慎兄さんが立っていた。暗い中でもスポットライトが当たっているみたいにキラキラ眩しくて仕方がない。
(こんなかっこいい慎兄さんと二人きりなんて、どうしよう)
前回以上に緊張しながら誰もいないお店の中に入った。
「あの、本当にいいんですか?」
「うん?」
「だって今日はお店休みだし、それにお金も……」
「俺が勝手に気にしてるだけだから気にしなくていいよ」
「でも、」
「俺好みにさせてもらったお礼だと思って。それより俺の我が儘に付き合わせちゃってごめんね?」
「つ、つき合わされてるなんて、そんなこと思ってません」
「あはは。三春くんは相変わらずいい子だなぁ」
頭をポンと撫でられて顔から火が出るかと思った。きっと真っ赤になっているに違いない顔を見られたくなくて、俯いたままマントを着けてお洒落な椅子に座る。
(うぅ……静かすぎてますます緊張してきた)
前回と違って音楽も流れていなければお客さんやお店の人たちの話し声もしない。そんな中で慎兄さんと二人きりだなんて緊張しないわけがない。前回以上にガチガチに固まっている僕とは違い、慎兄さんは慣れた手つきでシュッシュッと後ろ髪を切り始めた。
そうっと鏡越しに慎兄さんを見た。真剣な表情はやっぱりかっこよくて惚れ惚れする。長くて器用な指が僕の髪に何度も触り、その指がたまに耳や首に触れる。そのたびに触れた場所がカッと燃えるように熱くなった。
(落ち着け……落ち着け……)
呪文のように何度もそう言い聞かせた。
(あんまり見ないようにしないと……でも、こんなチャンスそうそうないんだから見ておきたい気もするし……どうしよう……!)
見たい気持ちと、あんまり見たら怪しまれるんじゃないかと不安が入り混じって頭がグルグルする。そうこうしているうちに「はい、終わったよ」という声がしてホッとした。同時に「もっと見ておけばよかった」と残念な気持ちになる。
「うん、これで半月はもつかな」
鏡を持った慎兄さんが「後ろ、すっきりしたよ」と言って合わせ鏡にして見せてくれた。たしかにすっきりしたような気もするけど、自分の髪型に無頓着だからかよくわからない。それよりも僕を見ながら微笑んでいる鏡の中の慎兄さんのほうが気になって、自分の髪の毛なんてそっちのけで慎兄さんばかり見ていた。
「じゃ、ちょっと待ってて」
「はい」
マントみたいなものを取った慎兄さんが、床に散らばっている髪の毛をホウキで集め始めた。本当は手伝ったほうがいいんだろうけど、普段ほとんど掃除をしない僕では邪魔になるような気がして声をかけることができない。
「やっぱり僕って駄目だな」としょげながらソファで大人しく待つ。少ししてから「お待たせ」と言って慎兄さんが店の奥から戻って来た。慌てて立ち上がろうとしたタイミングでピロンと着信音が鳴る。
「おっと、ちょっとごめんね」
鳴ったのは慎兄さんのスマホだった。レジのほうに歩いて行きながらズボンの後ろポケットからスマホを取り出している。そのまま画面を見ているということは届いたメッセージに返信をしているのかもしれない。
(慎兄さんのほうこそ恋人とかいないのかな)
後ろ姿までもかっこいい慎兄さんを見ながらそう思った、途端に胸がキリキリと痛くなる。慎兄さんはこんなにかっこいいんだから恋人がいてもおかしくない。都会にいたときもモテただろうし、そういえば高校生のときは二海兄さんみたいなファンクラブもあったと聞いている。
(高校のときから恋人、いたんだろうな)
慎兄さんくらいかっこいいなら恋人の一人や二人……って、さすがに二人は駄目か。でもファンならたくさんいそうな気がする。そういう僕だってファンみたいなものだ。
(そっか、ファンだったらずっと好きでもおかしくないか)
それに世の中は“推し活”が流行っている。慎兄さんはアイドルではないけど、僕にとってはアイドル以上の存在だ。
僕の“好き”はファンの“好き”とは違う。でも、この“好き”は持ち続けていたら駄目なものだ。それにファンなら慎兄さんに気持ちがばれても誤魔化すことができる。
「ごめんね」
慎兄さんの声にハッとした。「ごめんね」って、もしかして……。
「ついでにこのゴミもまとめてくるから、もう少し待っててくれるかな?」
そう言ってレジ近くに置いてあったゴミ箱を持ち上げた。きっと僕の髪の毛と一緒にゴミ袋にまとめるんだろう。
「はい、大丈夫です」
一瞬「用事が入ったから」と言われるのかと思った。さっきのメッセージが彼女からのもので、このあと会うことになったから……そう言われるんじゃないかと思って胸がギシギシと痛む。
(僕は慎兄さんのファンなんだって、たったいま思ったばかりなのに……)
それなのに、慎兄さんに恋人がいるかもと思っただけで胸が押し潰されてしまいそうだ。せっかく抑え込もうとしていた“好き”という気持ちがあふれ出そうになる。
(僕、なんか変だ)
駄目だと思えば思うほど慎兄さんへの“好き”が強くなっていく。前回切ってもらったときのこと、今日の車で見たかっこいい横顔、後ろ髪を整えてくれている真剣な顔、どの慎兄さんもかっこよくて、ただのファンになるなんてできそうにない。
(ただのファンなんて、やっぱり僕には無理だ)
俯くと握り締めた自分の手が目に入った。ぎゅうっと力を入れながら、どうにもならない自分の気持ちが嫌になる。
「三春くん、どうかした?」
「え……?」
顔を上げたら、コートと僕のパーカーを手にした慎兄さんがすぐそばに立っていた。
「顔色が悪いね。もしかして体調がよくなかった?」
「だ、大丈夫です」
「このあと一緒に夕飯でも食べようかと思ってたんだけど、やめとこうか?」
「そ、れは……」
一緒にご飯を食べたい。こんなチャンスは二度とないかもしれない。それなのに喉が詰まって返事をすることができなかった。
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