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第二章
新人
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「えらい疲れた顔をしているなぁ」
お昼休みの時間、声を掛けられて俺は顔を上げた。
目の前の席に、クラスメートの鮎川幸太郎が座ってきた。
幸太郎は中学から同じ学校で、そのせいか何かと話しかけてくる。
俺自身に社交性があるとは言い難く、正直コミュ障と言っても差し支えないレベルだ。だから、普段親しくつるんでいる奴もいないし、ましてや恋人などというものは、居たためしがない。
その上、特に部活動もしていないので、俺に話しかけるのは幸太郎ぐらいだ。
もっともその方が、俺自身としては気が楽だったりする。
幸太郎はいかにも今時の若者って感じで、流行りに目ざとく、社交性も高いので、友人関係も広い。
半分欠伸まじりで答えた。
「昨日のバイトが大変だったんだ」
昨日の黒狼のおかげで、疲れ切っていた。
俺の席は窓際にあり、外から心地よい風が入ってくる。疲れを癒しながら、昼寝するにはもってこいで、今まさに、そうしようとしていたところだ。
正直、話し掛けられたことを、少々迷惑に感じた。
「そういえば知っているか? 昨日、街中に赤目が出たらしいぞ」
「本当かよ?」
昼寝を邪魔された上、疑わしき話の内容に、顔が険しくなる。
赤目とは、特別特定外来生物と位置付けられ、今から約二十年前、世界各地に突然出現した、黒い球体から現れる異形の怪物だ。
その生態はひどく好戦的で、極めて獰猛、無差別に人間を襲ってくる。
姿形は一定しておらず、総じて特徴的な赤い目を持っていた。
だが、黒い球体が出現する場所は、ほぼ決まっていて、そこは汚染区と名称され、現在は完全に封鎖されている。
現在も赤目の出現は、際限なく続いているのだが、民間の警備会社に所属する猟人と呼ばれる、特別に資格を持つ者たちが、汚染区に入って定期的に駆除しているので、基本的に町中に出てくることは無い。
そんな俺を気にすることなく、幸太郎は続けた。
「二組のやつが、武装警察を見たってよ」
「なるほど……」
それなら可能性は高いな。
武装警察とは通称で、正式名称は特殊武装起動警察隊と言い、警察に所属する赤目専門の特殊部隊だ。
専用の防護服に身を包み、自動小銃と象徴的な大きな手斧を装備しているので、その姿は一目瞭然だ。
黒い球体は稀ではあるが、汚染区以外にも出現することがある。
その場合は、警察が対処することになっており、武装警察が出動して駆除をしていた。
つまり、武装警察がいた=赤目がいたことになる。
幸太郎が突然、中庭を指さした。
「オイ、見てみろよ! 生徒会長がいるぜ!」
それに対して疲れていたことに加え、街中に武装警察が出動した件が気になって、適当に返事を返した。
「ああ……そうかい」
俺の気のない返事に、幸太郎は驚きの顔を浮かべた。
「反応悪いな」
「普通だろ、学校だから生徒会長ぐらいいるだろうし、特に興味もないしな……」
学校の生徒会長などに、関心はない。因みに総理大臣が誰だろうが、大統領に誰がなろうとも、書記長が誰になっても気にはならない。
それが一般的な、高校生というものだ。
俺の返事に、幸太郎はさらに驚きの表情を浮かべた。
「マジか! わが校のアイドルに興味が無いと?」
「……アイドル?」
幸太郎は口から唾を飛ばして説明しだした。
「容姿端麗、文武両道、品行方正、才色兼備の上に、気軽な性格から人気も絶大で、非公式ながらファンクラブまであるぞ!」
「……それ本当か?」
赤目が町中に出現した話よりも、更に疑わしい内容だ。
「本当だよな?」
幸太郎が周りに同意を求めると、近くにいた連中が皆、頷いた。
どうやら本当みたいだな……というか何だ、その連帯感は?
そんなに凄いものかと思って、中庭を覗いて見ると、一人の女生徒が校舎に入って行く、後姿が見えた。
どうやらタイミングを逃したようで、そのお姿を拝見することは出来なかった。
最も自分のような人間と、縁があるとは思えなかったので、それに対しては、直ぐに興味が無くなった
週末になると、原付を飛ばして、バイト先へと向かった。
そこは古い三階建ての建物で、表の看板には、小鳥遊赤目対策研究所と書かれてある。
少々難解な名称をしているが、要は赤目を駆除する会社だ。
つまり俺のバイトは、猟人である。
一階部分は駐車場となっており、その奥に狭い階段があった。
階段を上がって、二階のドアを開けると、声を掛けた。
「おはようございます。」
すると、中から若い女性が、同じように返してくれた。
「おはようございます」
事務員の蜂須賀美咲だ。
二階は入り口側が事務所で、奥の方に更衣室があった。
そのまま進んで、更衣室のドアを開けると、お馴染みの顔が居たので声を掛けた。
「おはようございます」
声を掛けられた男は、片手を上げて返事を返した。
「オウ、おはようさん」
同僚のシゲさんこと、熊谷茂雄である。
頼れるベテラン猟人で、濃い髭面にガッシリとした体格は、まるでファンタジーの世界に出でくる、ドアーフのようだ。
防護服に着替えながら、シゲさんに話しかけた。
「シゲさん、今日はいつもの鳥狩りですよね?」
「そうだな……先週と比べると簡単だろ?」
シゲさんは、含みある笑みを浮かべた。
それに苦笑いを浮かべて返した。
「毎回あんなのだと、身が持ちませんよ」
茂雄は肯定するように、豪快に笑った。
「アッハッハァーーそりゃそうだ!」
ふと、幸太郎の話が頭に浮かんだ。
「そういえば、同じ日に武装警察も、出動していたみたいですね」
「ああ、らしいな。別件で違う日にもあったらしいぞ」
「へ~~珍しいですね」
「そうだな」
赤目が汚染区以外に出現することは、全く無い訳ではない。
だが、それでも多くて月に一回ぐらいで、週に二回はちょっと多い。
着替えを済ませると、シゲさんと共に三階に向かった。
三階は所長室と、武器保管庫になっていた。
そこのドアを、ノックして開いた。
「失礼します」
部屋に入ると、中に三人の人がいた。
髪をオールバックにし、細身で身長の高い男性と、坊主頭に厳つい顔、たくましい体つきの男性、それと防護服に身を包み、ヘルメットを小脇に抱えた、見慣れない若い女性一人。
男性たちの方は、この会社の主である小鳥遊所長に、会社の狩人を管理する猪口主任だ。
いつものように挨拶を交わすと、小鳥遊所長が口を開いた。
「皆さんに、ご紹介します」
小鳥遊所長は、微笑みながら話を続けた。この人はいつもこんな感じで、怒ったところを見たことが無かった。
「今日から皆さんと一緒に、お仕事をする蜂須賀絹江さんです。どうか仲良くやってください」
緊張した様子で、若い女性が頭を下げた。
「蜂須賀絹江といいます。よろしくお願いします」
こちらも続けて頭を下げる。
「柏木狛彦といいます。よろしくお願いします」
「熊谷茂雄だ。よろしく」
続いて、猪口主任が大きな地声で口を開いた。
コチラは小鳥遊所長と正反対で、いつも小言が多く、少々口うるさい。
「蜂須賀さんの研修はもう済んでいる。狙撃を中心に訓練を終えているので、今日からみんなと一緒に、現場に出てもらうつもりだ」
女性の狩人とは少々珍しい。まったくいない訳では無いのだが、荒事が多い業界のせいだろうが、その数は少なかった。
外見から察するに、自分とそんなに変わらない年齢のようだし、防護服越しだがスタイルも良く、きれいな顔立ちでかなりの美人さんだ。
この業界には、あまり似つかわしくない感じだが、何か特別な事情でもあるのだろうか?
小鳥遊所長が、温和な表情で聞いてきた。
「何か、ご質問はありますか?」
右手を上げて質問してみる。
「事務の蜂須賀さんと、親類とかですか?」
女性はキッパリと否定した。
「いいえ、違います」
少し珍しい苗字だったので、そうだと思ったけど違ったようだ。猟人になったのも、その辺の絡みかと思ったけど。
「一応分かりやすくする為に、下の名前で呼んだ方が良いですかね?」
絹江さんが、少々物言いたげな様子で答える。
「……ハイ」
ちょっと気になったが、一応肯定していたので流すことにした。
小鳥遊所長が続ける。
「他にご質問がありますか?」
シゲさんが右手を上げた。
「どんな感じ?」
これは小鳥遊所長や、猪口主任に対してだろう。
シゲさんの意図するところは分かる。初対面でいきなり実戦を、共にしなければならないという話だが、狩人の職務は命の危険があるだけに、なかなか「ハイ、そうですか」と、簡単に納得することは出来ない。
絹江さんが、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべている。
小鳥遊所長が、質問に答えた。
「一通り訓練を行いまして、問題なしと判断しました。その辺つきましては、私が保証しましょう」
猪口主任が続く。
「それに訓練の結果、狙撃に適性を見受けられた。経験を積んで長ずれば、良い狙撃手になるだろう」
この二人がこう言うのなら、問題ないのだろう。
シゲさんも、一応納得している感じだ。
それからいくつかの軽い確認をして、質問を切り上げた。
「……それでは、お仕事のお話に移させてもらいます」
小鳥遊所長の言葉に、猪口主任が続いた。
「今回の狩りについて――」
今回の狩りについての概要説明が終わると、小鳥遊所長が二重に施錠されている銃の保管ロッカーと、同じく二重に鍵が掛かった弾薬の保管ロッカーを解放してくれた。
絹江さんは米国製のボルトアクション式のライフルを取り出し、俺は前回の装備に米国製の散弾銃を加えて、シゲさんは同じ散弾銃に古い45口径のオートを取り出した。
それぞれの武器に必要な弾薬を用意すると、持ち出しの書類を記入して、小鳥遊所長と、猪口主任に最終確認をしてもらって準備完了だ。
一階の駐車場まで降りると、会社のトラックに荷物を積み込んで、汚染区へと出発した。
お昼休みの時間、声を掛けられて俺は顔を上げた。
目の前の席に、クラスメートの鮎川幸太郎が座ってきた。
幸太郎は中学から同じ学校で、そのせいか何かと話しかけてくる。
俺自身に社交性があるとは言い難く、正直コミュ障と言っても差し支えないレベルだ。だから、普段親しくつるんでいる奴もいないし、ましてや恋人などというものは、居たためしがない。
その上、特に部活動もしていないので、俺に話しかけるのは幸太郎ぐらいだ。
もっともその方が、俺自身としては気が楽だったりする。
幸太郎はいかにも今時の若者って感じで、流行りに目ざとく、社交性も高いので、友人関係も広い。
半分欠伸まじりで答えた。
「昨日のバイトが大変だったんだ」
昨日の黒狼のおかげで、疲れ切っていた。
俺の席は窓際にあり、外から心地よい風が入ってくる。疲れを癒しながら、昼寝するにはもってこいで、今まさに、そうしようとしていたところだ。
正直、話し掛けられたことを、少々迷惑に感じた。
「そういえば知っているか? 昨日、街中に赤目が出たらしいぞ」
「本当かよ?」
昼寝を邪魔された上、疑わしき話の内容に、顔が険しくなる。
赤目とは、特別特定外来生物と位置付けられ、今から約二十年前、世界各地に突然出現した、黒い球体から現れる異形の怪物だ。
その生態はひどく好戦的で、極めて獰猛、無差別に人間を襲ってくる。
姿形は一定しておらず、総じて特徴的な赤い目を持っていた。
だが、黒い球体が出現する場所は、ほぼ決まっていて、そこは汚染区と名称され、現在は完全に封鎖されている。
現在も赤目の出現は、際限なく続いているのだが、民間の警備会社に所属する猟人と呼ばれる、特別に資格を持つ者たちが、汚染区に入って定期的に駆除しているので、基本的に町中に出てくることは無い。
そんな俺を気にすることなく、幸太郎は続けた。
「二組のやつが、武装警察を見たってよ」
「なるほど……」
それなら可能性は高いな。
武装警察とは通称で、正式名称は特殊武装起動警察隊と言い、警察に所属する赤目専門の特殊部隊だ。
専用の防護服に身を包み、自動小銃と象徴的な大きな手斧を装備しているので、その姿は一目瞭然だ。
黒い球体は稀ではあるが、汚染区以外にも出現することがある。
その場合は、警察が対処することになっており、武装警察が出動して駆除をしていた。
つまり、武装警察がいた=赤目がいたことになる。
幸太郎が突然、中庭を指さした。
「オイ、見てみろよ! 生徒会長がいるぜ!」
それに対して疲れていたことに加え、街中に武装警察が出動した件が気になって、適当に返事を返した。
「ああ……そうかい」
俺の気のない返事に、幸太郎は驚きの顔を浮かべた。
「反応悪いな」
「普通だろ、学校だから生徒会長ぐらいいるだろうし、特に興味もないしな……」
学校の生徒会長などに、関心はない。因みに総理大臣が誰だろうが、大統領に誰がなろうとも、書記長が誰になっても気にはならない。
それが一般的な、高校生というものだ。
俺の返事に、幸太郎はさらに驚きの表情を浮かべた。
「マジか! わが校のアイドルに興味が無いと?」
「……アイドル?」
幸太郎は口から唾を飛ばして説明しだした。
「容姿端麗、文武両道、品行方正、才色兼備の上に、気軽な性格から人気も絶大で、非公式ながらファンクラブまであるぞ!」
「……それ本当か?」
赤目が町中に出現した話よりも、更に疑わしい内容だ。
「本当だよな?」
幸太郎が周りに同意を求めると、近くにいた連中が皆、頷いた。
どうやら本当みたいだな……というか何だ、その連帯感は?
そんなに凄いものかと思って、中庭を覗いて見ると、一人の女生徒が校舎に入って行く、後姿が見えた。
どうやらタイミングを逃したようで、そのお姿を拝見することは出来なかった。
最も自分のような人間と、縁があるとは思えなかったので、それに対しては、直ぐに興味が無くなった
週末になると、原付を飛ばして、バイト先へと向かった。
そこは古い三階建ての建物で、表の看板には、小鳥遊赤目対策研究所と書かれてある。
少々難解な名称をしているが、要は赤目を駆除する会社だ。
つまり俺のバイトは、猟人である。
一階部分は駐車場となっており、その奥に狭い階段があった。
階段を上がって、二階のドアを開けると、声を掛けた。
「おはようございます。」
すると、中から若い女性が、同じように返してくれた。
「おはようございます」
事務員の蜂須賀美咲だ。
二階は入り口側が事務所で、奥の方に更衣室があった。
そのまま進んで、更衣室のドアを開けると、お馴染みの顔が居たので声を掛けた。
「おはようございます」
声を掛けられた男は、片手を上げて返事を返した。
「オウ、おはようさん」
同僚のシゲさんこと、熊谷茂雄である。
頼れるベテラン猟人で、濃い髭面にガッシリとした体格は、まるでファンタジーの世界に出でくる、ドアーフのようだ。
防護服に着替えながら、シゲさんに話しかけた。
「シゲさん、今日はいつもの鳥狩りですよね?」
「そうだな……先週と比べると簡単だろ?」
シゲさんは、含みある笑みを浮かべた。
それに苦笑いを浮かべて返した。
「毎回あんなのだと、身が持ちませんよ」
茂雄は肯定するように、豪快に笑った。
「アッハッハァーーそりゃそうだ!」
ふと、幸太郎の話が頭に浮かんだ。
「そういえば、同じ日に武装警察も、出動していたみたいですね」
「ああ、らしいな。別件で違う日にもあったらしいぞ」
「へ~~珍しいですね」
「そうだな」
赤目が汚染区以外に出現することは、全く無い訳ではない。
だが、それでも多くて月に一回ぐらいで、週に二回はちょっと多い。
着替えを済ませると、シゲさんと共に三階に向かった。
三階は所長室と、武器保管庫になっていた。
そこのドアを、ノックして開いた。
「失礼します」
部屋に入ると、中に三人の人がいた。
髪をオールバックにし、細身で身長の高い男性と、坊主頭に厳つい顔、たくましい体つきの男性、それと防護服に身を包み、ヘルメットを小脇に抱えた、見慣れない若い女性一人。
男性たちの方は、この会社の主である小鳥遊所長に、会社の狩人を管理する猪口主任だ。
いつものように挨拶を交わすと、小鳥遊所長が口を開いた。
「皆さんに、ご紹介します」
小鳥遊所長は、微笑みながら話を続けた。この人はいつもこんな感じで、怒ったところを見たことが無かった。
「今日から皆さんと一緒に、お仕事をする蜂須賀絹江さんです。どうか仲良くやってください」
緊張した様子で、若い女性が頭を下げた。
「蜂須賀絹江といいます。よろしくお願いします」
こちらも続けて頭を下げる。
「柏木狛彦といいます。よろしくお願いします」
「熊谷茂雄だ。よろしく」
続いて、猪口主任が大きな地声で口を開いた。
コチラは小鳥遊所長と正反対で、いつも小言が多く、少々口うるさい。
「蜂須賀さんの研修はもう済んでいる。狙撃を中心に訓練を終えているので、今日からみんなと一緒に、現場に出てもらうつもりだ」
女性の狩人とは少々珍しい。まったくいない訳では無いのだが、荒事が多い業界のせいだろうが、その数は少なかった。
外見から察するに、自分とそんなに変わらない年齢のようだし、防護服越しだがスタイルも良く、きれいな顔立ちでかなりの美人さんだ。
この業界には、あまり似つかわしくない感じだが、何か特別な事情でもあるのだろうか?
小鳥遊所長が、温和な表情で聞いてきた。
「何か、ご質問はありますか?」
右手を上げて質問してみる。
「事務の蜂須賀さんと、親類とかですか?」
女性はキッパリと否定した。
「いいえ、違います」
少し珍しい苗字だったので、そうだと思ったけど違ったようだ。猟人になったのも、その辺の絡みかと思ったけど。
「一応分かりやすくする為に、下の名前で呼んだ方が良いですかね?」
絹江さんが、少々物言いたげな様子で答える。
「……ハイ」
ちょっと気になったが、一応肯定していたので流すことにした。
小鳥遊所長が続ける。
「他にご質問がありますか?」
シゲさんが右手を上げた。
「どんな感じ?」
これは小鳥遊所長や、猪口主任に対してだろう。
シゲさんの意図するところは分かる。初対面でいきなり実戦を、共にしなければならないという話だが、狩人の職務は命の危険があるだけに、なかなか「ハイ、そうですか」と、簡単に納得することは出来ない。
絹江さんが、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべている。
小鳥遊所長が、質問に答えた。
「一通り訓練を行いまして、問題なしと判断しました。その辺つきましては、私が保証しましょう」
猪口主任が続く。
「それに訓練の結果、狙撃に適性を見受けられた。経験を積んで長ずれば、良い狙撃手になるだろう」
この二人がこう言うのなら、問題ないのだろう。
シゲさんも、一応納得している感じだ。
それからいくつかの軽い確認をして、質問を切り上げた。
「……それでは、お仕事のお話に移させてもらいます」
小鳥遊所長の言葉に、猪口主任が続いた。
「今回の狩りについて――」
今回の狩りについての概要説明が終わると、小鳥遊所長が二重に施錠されている銃の保管ロッカーと、同じく二重に鍵が掛かった弾薬の保管ロッカーを解放してくれた。
絹江さんは米国製のボルトアクション式のライフルを取り出し、俺は前回の装備に米国製の散弾銃を加えて、シゲさんは同じ散弾銃に古い45口径のオートを取り出した。
それぞれの武器に必要な弾薬を用意すると、持ち出しの書類を記入して、小鳥遊所長と、猪口主任に最終確認をしてもらって準備完了だ。
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