運命の落とし穴

恩田璃星

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運命の再会 1

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 いっそ男に生まれたかったと思ったことなんて、数えきれないー

***

 あー、失敗した。

 やっぱりワンピースこんな服着てくるんじゃなかった。

 走りにくいったらありゃしない。

 スカートのせいで歩幅は限られるし、梅雨特有の湿度の高い空気と、ストッキングとの不必要な相乗効果が、膝から上をプチサウナ状態にしている。

 トドメは、いつも絶対履かないヒール高めのパンプス。

 ちょっと気を抜くと足首をやられそう。

 せっかくの日曜日のお昼時。

 私、何で大通りを全力で走ってるんだっけ?

 そうだ。

 それもこれも、毎日のように会社にまで電話をかけてきて、「とにかく、行くだけでいいから!!」としつこくお見合いを勧めてきたお母さんのせいだ!!

 ん?いやいや…、おばあさんに駅で道を訊かれた時に、「急いでるから」とちゃんと断れなかった自分のせいか。

 どちらにせよ、全く結婚する気もなく、写真も釣書も見ないで臨んでいるお見合いとは言え、約束の時間に遅れるなんて、社会人失格だ。

 なんて、ごちゃごちゃ考えているうちに、今日のお見合い会場、ホテルのラウンジに着いた。

 息も切れ切れに、予約の名前を伝えて、席に案内される。

 店員さんが「お連れ様がお見えです」と足を止めるなり、

 「遅くなって申し訳ありません!!」

 相手の顔も見ないまま、まずは頭を下げると、ツーッとこめかみから汗が一筋垂れる感触。

 ううっ。

 こそばゆい…。

 「大丈夫ですよ。時間ぴったりですし」

 一呼吸置いて、相手の男性が寛大な言葉をくれた。

 良かった。優しい人みたいで。

 でも、逆に怒って帰ってくれた方が、都合が良かったのに。

 と、自分本位なことを考えつつ、ゆっくりと頭を上げた。

 そこで初めて、今日のお相手とバッチリ目が合った。

 私の目が点になり、背中の一気に汗が冷えていく。

 「どうせ人に道でも訊かれて、断り切れずに案内してたんでしょう?相変わらずお人好しですね、奏音かのんさん」

 「は、はだ、羽立はだて…くん!?」

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