運命の落とし穴

恩田璃星

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重なり合う平行線6

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 決死のお強請ねだりをしてみせたのに、羽立くんは望みを叶えてくれるどころか、体を支えていた腕をへなへなと折り、私の胸の上に頭を乗せて脱力している。

 「奏音さん…?何今の…もしかして、わざとですか??」

 え。

 むしろ逆に何?

 何か変なこと言った?

 私はただ、どうしても『ちくび』と言うのが憚られて、『先っぽ』って言い換えただけなんだけど。

 こちらの困惑が伝わったのか、羽立くんは

 「…な訳ないですよね。ほんと、敵わない」

と呟いてグッと腕に力を入れ直し、口を軽く開けた。

 「はあぁっ」

 待ち焦がれていた、甘く痺れるような刺激に思わず羽立くんの頭を抱え込む。

「…ぁっ、んんんっ、あ、あ、あ、」

 やわやわと舐め回したり、強く押しつぶしたり、弾くように舌先で転がしたり。

 羽立くんの口内は、羽立くんに完全に支配された空間となり、快楽を知ったばかりの私の胸は、彼の意のままに翻弄された。

 左胸を一頻り愛撫され、じんじんと疼く先端がようやく解放されたかと思ったら、今度は右胸を口に含まれた。

 「ぅやあっ!」

 「…待ちくたびれてビンビンになってますね、こっち」

 「ああああっ!?」

 左胸のときにはされなかった甘噛みをされると、右胸を攻められている間ずっと燻っていた身体の奥底の疼きが急に強まった気がする。

 こんなに気持ちいのに全然足りない。

 もっと、もっと、シて欲しい。

 もどかしくて、気が狂いそうで、左胸のときと同じくらい長い愛撫の間、抱え込んでいた羽立くんの頭を撫で回していた。

 やっと胸から唇を離すと、羽立くんは私の頬を撫で、両頬に一度ずつ短いキスをした。

 ボサボサの頭をした羽立くんの、やたら熱のこもった目が、私の目の奥を探る。

 やがてゆっくりと目を伏せ、少し緊張した声で次の行為を知らされた。

 「下、触りますね」

 固い声の割に、ベルトにかけた手の動きはとてもスムーズだ。

 難なく両足からズボンが抜き取られ、ショーツだけ身につけた状態にさせられた。

 

 上半身のように先に全て脱がされると思って待っていたら、深いキスをされ、ショーツの隙間から羽立くんの手が差し入れられた。

 ゆっくり、ゆっくり…下に下りていく手とキスが、敏感な部分に辿り着く前に、ピタリと止まった。

 「奏音さん…?」

 「は、はい?」

 「どういうことですか?」

 「え?何が?」

 「何でツルツルなんですか!?」

 「え?えっ!?だ、だって、円香とエステに行ったら、円香にもお店の人にも『今どき常識だ』って勧められて…ち、違うの?」

 よりによって、このシチュエーションで羽立くんにそんなことを指摘されるなんて、恥ずかしくて死にそうだ。

 それに、今さらじゃない?

 この間全部見られたと思ってたのに。

 タオルで鼻を押さえてたから死角になっていたんだろうか。

 私が一人狼狽えまくっていると、羽立くんは小さく舌打ちをして、キスと手の進行を再開した。

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