運命の落とし穴

恩田璃星

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 「…っ、あっ、ああっ」

 これまでの羽立くんの愛撫とも、矢吹のそれとも違う、少し荒っぽい手つき。

 私の薄い体から矢吹の残滓を必死でかき集めているかのような。

 馬鹿だなぁ。

 いくら想ったって報われないのに。

 でも、もっと馬鹿なのは私。

 羽立くんが求めているのは、私じゃないことを知っていながら、こんなにも羽立くんに乱される。

 『狂ってるな』

 矢吹に言われた言葉が頭の奥で聞こえた気がした。

 それを打ち消すように羽立くんが私の膝裏を抱えた。

 本来あるはずのものがない私のソコは、どうやっても矢吹に触れられた痕跡を隠しようがない。

 おまけに羽立くんに触れられて、更にはしたなく濡れているはずだ。

 「ココも…あの人に…」

 羽立くんは言いながらぐしょぐしょになっている蜜壺に指を埋め、中を弄った。

 「あっ…ああっ!」

 唯一矢吹残っていた矢吹の余韻を掻き出すように動いたかと思ったら、あっさりと引き抜かれた。

 「…こんなになるまで愛された?」

 私の蜜できらめく指を愛おしそうに、でも、苦しそうに舐めながら、質問は続く。

 「奏音さん…どうしたらいい?奏音さんは、どうしたらあの人のこと諦めてくれる…?」

 羽立くんが、ゆっくりとベルトに手をかけ、熱く大きな塊を取り出し、そのまま私の入り口にあてがう。

 「このまま、俺ので奏音さんのナカ何度も何度もいっぱいにして…奏音さんが妊娠したら…諦めてくれる?」

 のぼせ上がった頭から、ザーッと音がしそうなほど一気に血の気が引いたのが分かった。

 羽立くんを好きだと気づいた日から、訪れるはずのない、一つになるこの瞬間をずっと夢見続けてきたのに。

 どんな形でもいいから、と願ってきたのに。

 胸の痛みも、体の痛みも、全部引き受ける覚悟はとっくにできてる。

 でも、私の醜いエゴに、無関係な新しい命を巻き込むわけにはいかない。

 「まっ、待って羽立く…」

 「あの人のことはあんな自然に『海斗』って呼んでたのに…俺のことはいつになったらちゃんと『昴』って呼んでくれるんだよ?」

 え?

 あれ??

 なんか、嫉妬のベクトル、おかしくない??

 私が真意をはかりかねている間に、羽立くんは制止を無視してゆっくりと腰を落とし始めた。

 羽立くんが入ってきちゃうー

 「ちょ、いっ、やめ、やめて!」

 反射的に腰を引いて侵入を阻止しようとすると、腰骨をガッシリと掴まれ拘束された。

 「いやだ、やめない。相手が誰でも関係ない。絶対渡さない。いいから黙って俺のものになれ」

 渡さないって、誰を、誰に?

 口にしようとした瞬間、キスで唇を塞がれ、一気に奥まで貫かれた。

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