運命の落とし穴

恩田璃星

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 「どうして…?何で昴が海斗のこと好きだったって知ってるの?」

 「…思い出すのも忌々しいから答えたくない。それより…やっぱり奏音も知ってたんだな。アイツが俺のこと好きだったってこと」

 羽立くんがつけた痕を徹底的に避けながら、矢吹は私の肌に新たな痕をつけていく。

 「奏音が昨日すぐに俺のことを羽立に相談しなかったのは、俺に羽立をとられると思ったから?」

 正確には足立さんのせいなんだけど。
 矢吹と再会したことを羽立くんに話せなかった理由は図星過ぎて、何も言い返せない。

 「…マジか。冗談でも勘弁して」

 背中を机に密着させていてホックが外せないからか、矢吹はブラジャーのカップを引き下げ、先端を口に含んだ。

 「…っ」

 ねちねちと舌で乳首を嬲りながら、意地悪く矢吹が囁く。

 「何度も言うけど、お前騙されてるって。羽立はお前を通して俺のことを抱いたんだよ」

 「違、う…」

 「本当に?」

 昨夜、私も途中まで全く同じように感じていた。
 でも、絶対に違う。
 羽立くんが求めたのは、間違いなく私。

 「違う!!」

 キッパリと言い切っても、矢吹はしつこく食い下がって私を揺さぶってくる。

 「ゲイなんかと結婚したら、一生余計な不安につきまとわれるんだぞ。男相手に浮気を疑ったり、『本当に私で満足してくれてるのか』って悩んだり…」

 「不安になるのなんて、相手がゲイだろうと、そうでなかろうと、誰と結婚したってきっと同じでしょう?大体、海斗だって何人もの女の子とそういう関係になってるくせに!!」

 「俺は奏音と再会してから誰とも寝てない。…言っただろ?奏音がいてくれれば、本当の自分になれるって。俺には奏音が必要なんだ」

 「ごめん、無理だよ。私、海斗に触れられても、本当にもう何も感じない」

 私の言葉にカッとなった矢吹は、私のズボンのボタンを外し、無遠慮に下着の中に手を突っ込んだ。

 そして、指の腹をあてがわれると、本当にソコがほとんど潤んでいないのが自分でも分かった。


 「ね?海斗、こんなのもう終わりにしよう?」

 「…分かった」

 と、言ったくせに。
 海斗は一気に下着ごと私のスーツのパンツを引き下げた。

 「…望みどおりさっさと終わらせてやる」

 「!嫌ぁっ!!」

 ただでさえ手を縛り上げられているのに、矢吹の力に叶うはずがない。

 それを知っているのか、悠然とベルトのバックルを外す無機質な音が神経を激しく逆撫でる。

 嫌!
 絶対嫌だ!!

 思い切り足をばたつかせると、矢吹は両膝裏を持ち上げ、私の動きを封じて言った。

 「本当に羽立アイツに抱かれたなら、一気に挿れても大丈夫だよな?」

 いよいよ矢吹の滾ったものが私に侵入して来ようとした時―

 「ハイ、そこまでー」

 ミーティングルームのドアが開いて入ってきたのは、さっき廊下で会った、黒髪黒縁メガネの男だった。

 「「!?」」

 矢吹は慌てて自分のモノをしまい、着ていたスーツのジャケットを脱いで私の下半身を覆った。

 「…誰だお前!?」

 「そんな間抜けな格好で凄まれても怖くねえって。あ、ちなみにここであんたがしたことは、全部あのカメラで押さえてあるから」

 男が顎で位置を知らせる先には、不自然な場所に箱が置かれている。
 よく見ると、小さく開けられた穴からカメラのレンズのようなものがのぞいている。

 「分かったらさっさと常盤奏音から離れろよ」

 え?
 この呼び方、もしかしてー

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