運命の落とし穴

１４－７

　私から離れて行った矢吹と入れ替わるように私に近づき、腕を縛っていたネクタイをめんどくさそうに解く男の顔をまじまじと見る。

　「み、宮本くん！！？」

　「気づくの遅っ！！」

　「地味過ぎて全然分かんなかったんだもん！！何でここに！？」

　「そりゃあ、他ならぬ昴の頼みで仕方なく」

　「ならもっと早く助けてよ！！」

　「あー…うん、まあ、そうだな。でも、決定的な場面まで撮らないと証拠として使えないし、ギリセーフだから良しとしろよ」

  「ギリギリにも程があるわよ！」

まだ収まりきらない恐怖のせいで、いつも以上にツッコミがキツ目になる私の口を止めたのは、矢吹だった。

　「羽立の？…俺なら絶対に好きな女のピンチを他の男に助けさせたりしないけどな」

　私をピンチに陥れた張本人のくせに、自分の方が羽立くんよりも私のことを好きだとでも言いたいのだろうか。

　「しょうがないだろ？昴は今、大事な商談中なんだから。でも、そろそろ終わる頃だから、一緒に来いよ。最上階だったっけ？」

　「最上階って…まさか？」

　目を丸くした私を見て、宮本くんは悪戯っぽく笑った。

　「そ。昴が今商談してる相手は、ここの会社の社長」

　大事な仕事があるとは聞いていたけど、まさかうちの会社とだったなんて。

　「ってことで、行くぞ。…もちろん、そこのアンタもな」

　二人から少し離れたところで乱れた着衣を整えてから、足早に社長室に向かった。