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「変な勘違いするな!俺がニヤけてたのは、奏音さんが俺のキスを羨ましいって言ってくれたからだ!」
宮本くんと矢吹を威嚇するように羽立くんが咆えた。
そ、そうだったのか。
「…あんまり嬉しそうな顔してるから、海斗が満更でもなさそうなのを喜んでるのかなって私も思ってたよ」
羽立くんの気持ちを確かめるように胸の中から羽立くんを見上げる。
「そんなに顔に出てました?」
私を見下ろすのは、ちょっと照れたような、バツの悪そうな顔。
「だって…俺、まだちゃんと奏音さんの口から『好き』って言ってもらってないんだから、仕方ないじゃないですか」
そう言えば、羽立くんは私に電話ではっきり『好きです』と言ってくれたけど、結局私は言わずじまいになっていたのだ。
「後で二人きりのときに、ちゃんと聞かせてくださいね」
耳もとに、低く、艶かしい声で囁かれた私が
「え」
と漏らして赤い顔で硬直しているとー
「やめろ!奏音、目を覚ませって。俺の言ったとおりだろう?ゲイなんかと結婚したら、一生今みたいに余計な心配することになるんだって!!」
ミーティングルームで襲われかけたときにも同じようなことを言っていた。
そして、その怒れる瞳は、私たちを見ているようで見ていない。
「羽立が奏音を好きだと言うのは一時的な錯覚だ!錯覚しているうちにまかり間違って子どもでもできたらどうする?ゲイは、女も子どもも捨てて、男に走るぞ?結局は男しか愛せないんだ。ゲイっていうのはそういう生き物なんだから!!」
「海斗、いい加減にしなさい」
あまりの剣幕に気圧され、私は矢吹の頬が叩かれた音を聞くまで、気づいていなかった。
ソファに座っていたはずの善家社長が立ち上がっていたことにも。
そして、矢吹の視線の先にいたのが善家社長だったことにも。
「羽立さん、申し訳ない。大切な商談の場で社員が失礼なことを」
「いえ、こちらこそ社長の前で大変失礼いたしました。なにせこちらの二人とは色々と縁が深くて。もうお察しとは思いますが、常盤奏音さんは私の婚約者であり、御社の社員。御子息は俺の初恋の人です。こっぴどく振られましたけど」
羽立くんが矢吹との関係を隠すことなく説明するのを聞いても、もう驚かなかった。
「そのことについても父親として申し訳ない。高校生という多感な時期に、息子はきっと貴方を深く傷つけたのでしょうね」
当時の羽立くんに寄り添い、労るような謝罪は、同じような経験があるからだろう。
同性の相手を好きになり、拒絶された経験がー
「ハ…こんな時だけ父親ヅラかよ。俺のことをちゃんと息子と思ってるなら、あんたがこれまで俺と母さんにしてきた仕打ちを洗いざらい話して、奏音にゲイと結婚したらどうなるか教えてやってくれよ!!」
やはり、矢吹は私と羽立くんの未来に、自分の両親を重ねていたのだ。
一度確信してしまえば、私と羽立くんは善家社長夫妻とは違うと分かっていても、その口から語られる真実が怖くなる。
どうか、幸せな結婚生活だと言って欲しい。
祈るような気持ちで善家社長の言葉を待つ。
「―確かに私たちの結婚は失敗でした」
期待を裏切る結果に、軽くめまいがした。
宮本くんと矢吹を威嚇するように羽立くんが咆えた。
そ、そうだったのか。
「…あんまり嬉しそうな顔してるから、海斗が満更でもなさそうなのを喜んでるのかなって私も思ってたよ」
羽立くんの気持ちを確かめるように胸の中から羽立くんを見上げる。
「そんなに顔に出てました?」
私を見下ろすのは、ちょっと照れたような、バツの悪そうな顔。
「だって…俺、まだちゃんと奏音さんの口から『好き』って言ってもらってないんだから、仕方ないじゃないですか」
そう言えば、羽立くんは私に電話ではっきり『好きです』と言ってくれたけど、結局私は言わずじまいになっていたのだ。
「後で二人きりのときに、ちゃんと聞かせてくださいね」
耳もとに、低く、艶かしい声で囁かれた私が
「え」
と漏らして赤い顔で硬直しているとー
「やめろ!奏音、目を覚ませって。俺の言ったとおりだろう?ゲイなんかと結婚したら、一生今みたいに余計な心配することになるんだって!!」
ミーティングルームで襲われかけたときにも同じようなことを言っていた。
そして、その怒れる瞳は、私たちを見ているようで見ていない。
「羽立が奏音を好きだと言うのは一時的な錯覚だ!錯覚しているうちにまかり間違って子どもでもできたらどうする?ゲイは、女も子どもも捨てて、男に走るぞ?結局は男しか愛せないんだ。ゲイっていうのはそういう生き物なんだから!!」
「海斗、いい加減にしなさい」
あまりの剣幕に気圧され、私は矢吹の頬が叩かれた音を聞くまで、気づいていなかった。
ソファに座っていたはずの善家社長が立ち上がっていたことにも。
そして、矢吹の視線の先にいたのが善家社長だったことにも。
「羽立さん、申し訳ない。大切な商談の場で社員が失礼なことを」
「いえ、こちらこそ社長の前で大変失礼いたしました。なにせこちらの二人とは色々と縁が深くて。もうお察しとは思いますが、常盤奏音さんは私の婚約者であり、御社の社員。御子息は俺の初恋の人です。こっぴどく振られましたけど」
羽立くんが矢吹との関係を隠すことなく説明するのを聞いても、もう驚かなかった。
「そのことについても父親として申し訳ない。高校生という多感な時期に、息子はきっと貴方を深く傷つけたのでしょうね」
当時の羽立くんに寄り添い、労るような謝罪は、同じような経験があるからだろう。
同性の相手を好きになり、拒絶された経験がー
「ハ…こんな時だけ父親ヅラかよ。俺のことをちゃんと息子と思ってるなら、あんたがこれまで俺と母さんにしてきた仕打ちを洗いざらい話して、奏音にゲイと結婚したらどうなるか教えてやってくれよ!!」
やはり、矢吹は私と羽立くんの未来に、自分の両親を重ねていたのだ。
一度確信してしまえば、私と羽立くんは善家社長夫妻とは違うと分かっていても、その口から語られる真実が怖くなる。
どうか、幸せな結婚生活だと言って欲しい。
祈るような気持ちで善家社長の言葉を待つ。
「―確かに私たちの結婚は失敗でした」
期待を裏切る結果に、軽くめまいがした。
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