運命の落とし穴

恩田璃星

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***
 
 俺が女を嫌いな理由
 
 ①    ワガママ
 ②    自己中
 ③    すぐ群れる
 
 今夜の奏音さん、(程度はともかくとして)少なくとも①…、もしかすると②にも当てはまりそうなのに、愛おしいと思ってしまうなんて。
 
 恋愛は人をバカにする。
 あの日から、こんな感覚ずっと忘れていた。
 
 一緒に寝たいと言われたとき、鉄の心で断るのが最善だということはわかっていたのに、それができなかったのは、相当重症ということだ。
 昨夜、奏音さんにかなりむごいことをした自覚はあったのだから。
 
 矢吹さんが奏音さんの身体中に触れた痕を見て、頭が沸騰しそうなほど逆上してしまった。
 その結果、奏音さんの言葉を信じずに、無理やり体をこじ開けた挙句、いくら婚約中とは言え、気持ちも伝えてもいないのに中出しー
 
 事後、奏音さんの体からは、血液と精液が混ざり合った濃いピンク色の液体が、トロトロと大量に溢れていた。
 
 考えれば考えるほど最低だ。
 なのに、あの時の、『全て』を舐めとってしまいたい衝動を思い出してしまい、下半身が疼いてしまった。
 
 このままだと昨夜の二の舞になってしまう。
 
 奏音さんはさっきバスルームに行ったばかり。
 いくらあの人が烏の行水でも、一回抜く時間くらいあるだろう。
 
 同居初日に見てしまった奏音さんの綺麗な裸がフラッシュバックして、昨夜奏音さんの中で暴れたソレは、もう完全に固くなっている。
 スウェットの紐を緩めてから、履き口に指をかけ、下着ごとおろそうとした時―
 
 「は…昴?入っていい?」
 
 奏音さんがノックをしながらドアの向こうで遠慮がちに尋ねた。
 
 パチンとゴムが肌を弾く音が間抜けに響く。
 
 危なかったーーーー
 
 慌てて下半身を布団で覆う。
 
 「どうぞ」
 
 なんて涼しい声で答えながら、今夜の戦いをより熾烈なものにしてしまった自分を心の中で呪っていた。


 シンプルな白いパジャマに身を包んだ奏音さんが、「お邪魔します」と言いながらマットレスに膝をかけた。
 
 不意に、ふわりといい香りが鼻腔をくすぐった。
 あんな短時間でちゃんと体洗えるんだなと感心すると、やはりどうしてもあの裸つるペタを連想してしまって、勃ち上がったモノに更に熱が溜まる。
 
 そんな状態であることは(多分)知らないながらも、奏音さんは俺には触れない距離に華奢な体を横たえた。
 
 よく見ると、まだ髪が少し濡れている。
 
 同じ家にいるというのに、そんなに早く俺に会いたかったのかと思うと、胸のあたりが擽ったい。
 
 そして完勃ちのソコは治まるどころか、触れてもないのに先が濡れそうな状態になっている。
 
 ああ…嬉しいけど、やっぱりもう少しゆっくり風呂に入ってくれれば良かったのに!!
 
 「…昴、ごめんね」
 
 !!?
 
 心の声に呼応するかのような奏音さんの謝罪に、思わず体がビクッとなった。
 
 俺、今、無意識に口に出してた!?
 もしかして、さっきナニしようとしてたかバレてる!?
 
 いや、そんなことあるはずない。
 精一杯冷静なフリをして尋ねる。
 
 「ごめんって、何が?」

 「昴が一番辛い時に話聞いてあげなくて」
 
 ああ、俺がもう誰も好きにならないと決めた、あの日のことを言っているのか。
 
 もう10年も前のことだし、今更奏音さんが気に病むことなんてないけれど。 
 この荒ぶる煩悩を鎮めるにはちょうどいいかもしれない。
 
 そう考えて、少しだけ昔話をすることにした。
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