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第三章
最後の決戦
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光に吸い込まれ、風の流れるままに落ちていくと、放り投げられるように、どこかへと体が投げ出された。
そのまま渇いた土の上に打ち付けられると、私は慌てて体を起こす。
見渡す限りの荒野の中央には、タクミの両親が並ぶ様に倒れていた。
彼らが使っただろう壮大な魔力は、上空に激しい渦を作り上げている。
私は魔力を追う様に視線をあげると、彼らが開いたのだろう時空の歪みが、雷電を走らせながら徐々に塞がっていく姿が目に映った。
まずいわ……っっ。
慌てて歪みへと手を伸ばし魔力を飛ばすと、自分の中にある魔力を放出していく。
裂け目をこじ開けるように一気に魔力を打ち込むと、バリバリッと激しく光が飛び散った。
魔力を通して……改めて彼らの魔力に触れると、その壮大さに脚が小さく震え始める。
何なのこの魔力量……。
私が想定していたよりもずっと多いわ……。
歪みへと魔力を打ち続ける中、私は必死に防御魔法の魔力値を測定していった。
100……300……400……いえ500以上あるわ。
こんなの私だけの魔力じゃ足りない!
エヴァンは……エヴァンはどこにいるの?
焦るままにエヴァンの存在を探してみるが……近くに彼の姿はどこにも見当たらない。
キョロキョロと必死に荒野を見渡してみると……遠くの方に横たわったエヴァンを見つけた。
「エヴァン!!!」
そう叫んでみるも、彼はピクリとも動かない。
見る限り怪我があるわけではないようだが……気を失っている様子だ。
うそでしょう。
どうしよう……どうすれば……。
あたふたとする中、ふと胸元にある魔力玉を感じると、私はそこで動きを止める。
魔力を放出したままに、パリバリバリッと頭上で雷電が飛び散る中、私はそっと懐へと手を伸ばした。
水風船のような魔力玉をギュッと握りしめるが……、私は慌てて手を離す。
ダメ……これは……これを使えば……エヴァンを元の世界へ戻すことが出来ない。
それは絶対ダメよ!
魔力を放出し続け、どれぐらい時間がたったのだろうか……。
空は次第に朝焼け色に映り、太陽の光が辺りを照らしていく。
そんな中、歪みから見える防御魔法には、一向に変化はなかった。
魔力がどんどん失われていく感覚に、次第に焦りが出てくると、歪みが徐々に小さくなっていくのがわかる。
このままだと……閉じてしまう。
どうしよう……どうしよう……。
何か何か……、エヴァンが起きてくれさえすれば……。
私は勢いよく顔を上げエヴァンへ視線を向けてみるが……彼は土の上に突っ伏したままにピクリとも動いていない。
「エヴァン、お願い!!!……エヴァン!!!!!!!」
そう必死に叫んでみると、荒野全体に木霊していく。
目覚めない彼の姿に焦燥する中、魔力が枯渇し始めてるのか……徐々に体にだるさを感じ始めた。
ダメ……しっかりするのよ!!
私は何とか脚に力を入れ、必死に腕を持ち上げると、ありったけの魔力を手に集中させていく。
打ち続ける中、膨大になる魔力に竜巻が巻きおこり、砂ぼこりを舞い上がっていく。
もっと、もっと魔力がいるわ……。
肩で息をしながらも、精一杯腕を上げると、歪みを強く睨みつける。
しかし一向に変化のない歪みに、徐々に体力が削られていくと、グラリと視界が揺れ、霞んでいった。
っっ……まだ、まだ出来るでしょう……頑張りなさいよ自分。
やっとここまできたんだもの……最後の最後まであきらめちゃだめ。
タクミの為……いえ、みんなの為よ。
タクミの姿に、アーサーの姿、ブレイクの姿に、レックスの姿、ネイトの姿、セーフィロの姿、そして一番傍で私を支えてくれたエヴァンの姿が脳裏によぎると、私は倒れそうになる体に渇を入れ、必死に支えていた。
何度も自分自身を叱咤しながらも、魔力を放ち続ける中……突然にグラリと大きく体が傾いた。
ダメ、倒れる……っっ。
疲れ切った体は、傾く体を立て直すことが出来ぬままに、土の上へと落ちていく。
そのまま放っていた魔法が歪みからずれそうになった瞬間に、私の体が大きな腕に支えられた。
ハッと顔を上げると、長いプラチナの髪が視界に映る。
「エヴァン!!」
「すみません。……あの歪みにある、防御魔法を壊せばいいのですか?」
彼の姿に私は深く頷くと、杖が私の前へ突き刺さる。
「杖に魔力を集めて下さい。手から放出するよりも、私の杖を通した方が魔力は集まりやすい。……二人の魔力であの歪みを一気に落としましょう」
彼の声に私はすぐに杖へ魔力を込めると、エヴァンの魔力と私の魔力が合わさっていく。
緑の光と、白い光が螺旋状に伸びていくと、歪みを一直線に突き刺さった。
するとバリバリバリッと何かがひび割れる音が荒野に響き渡る中、私は精一杯の魔力を杖へ集めていく。
絞り出す様に残り少ない魔力を杖に集めると、私は祈るように瞳を閉じた。
もう魔力は残っていない……自分の体を支えることもできない。
だが強風に流されそうになる私の体を、エヴァンは力強く支えてくれる。
その力に私は必死で脚に力を入れると、渇いた土をしっかりと踏みしめた。
「お願い……壊れて!!!」
そう叫んだ瞬間……バリンッと何かが砕ける音が響く。
蓄積された魔力が歪みから溢れ出し、大きな爆発となり爆風が起こった。
慌てて顔を上げると、歪みから粉々になった魔力の破片が、雪のように荒野に降り注いでいった。
そのまま渇いた土の上に打ち付けられると、私は慌てて体を起こす。
見渡す限りの荒野の中央には、タクミの両親が並ぶ様に倒れていた。
彼らが使っただろう壮大な魔力は、上空に激しい渦を作り上げている。
私は魔力を追う様に視線をあげると、彼らが開いたのだろう時空の歪みが、雷電を走らせながら徐々に塞がっていく姿が目に映った。
まずいわ……っっ。
慌てて歪みへと手を伸ばし魔力を飛ばすと、自分の中にある魔力を放出していく。
裂け目をこじ開けるように一気に魔力を打ち込むと、バリバリッと激しく光が飛び散った。
魔力を通して……改めて彼らの魔力に触れると、その壮大さに脚が小さく震え始める。
何なのこの魔力量……。
私が想定していたよりもずっと多いわ……。
歪みへと魔力を打ち続ける中、私は必死に防御魔法の魔力値を測定していった。
100……300……400……いえ500以上あるわ。
こんなの私だけの魔力じゃ足りない!
エヴァンは……エヴァンはどこにいるの?
焦るままにエヴァンの存在を探してみるが……近くに彼の姿はどこにも見当たらない。
キョロキョロと必死に荒野を見渡してみると……遠くの方に横たわったエヴァンを見つけた。
「エヴァン!!!」
そう叫んでみるも、彼はピクリとも動かない。
見る限り怪我があるわけではないようだが……気を失っている様子だ。
うそでしょう。
どうしよう……どうすれば……。
あたふたとする中、ふと胸元にある魔力玉を感じると、私はそこで動きを止める。
魔力を放出したままに、パリバリバリッと頭上で雷電が飛び散る中、私はそっと懐へと手を伸ばした。
水風船のような魔力玉をギュッと握りしめるが……、私は慌てて手を離す。
ダメ……これは……これを使えば……エヴァンを元の世界へ戻すことが出来ない。
それは絶対ダメよ!
魔力を放出し続け、どれぐらい時間がたったのだろうか……。
空は次第に朝焼け色に映り、太陽の光が辺りを照らしていく。
そんな中、歪みから見える防御魔法には、一向に変化はなかった。
魔力がどんどん失われていく感覚に、次第に焦りが出てくると、歪みが徐々に小さくなっていくのがわかる。
このままだと……閉じてしまう。
どうしよう……どうしよう……。
何か何か……、エヴァンが起きてくれさえすれば……。
私は勢いよく顔を上げエヴァンへ視線を向けてみるが……彼は土の上に突っ伏したままにピクリとも動いていない。
「エヴァン、お願い!!!……エヴァン!!!!!!!」
そう必死に叫んでみると、荒野全体に木霊していく。
目覚めない彼の姿に焦燥する中、魔力が枯渇し始めてるのか……徐々に体にだるさを感じ始めた。
ダメ……しっかりするのよ!!
私は何とか脚に力を入れ、必死に腕を持ち上げると、ありったけの魔力を手に集中させていく。
打ち続ける中、膨大になる魔力に竜巻が巻きおこり、砂ぼこりを舞い上がっていく。
もっと、もっと魔力がいるわ……。
肩で息をしながらも、精一杯腕を上げると、歪みを強く睨みつける。
しかし一向に変化のない歪みに、徐々に体力が削られていくと、グラリと視界が揺れ、霞んでいった。
っっ……まだ、まだ出来るでしょう……頑張りなさいよ自分。
やっとここまできたんだもの……最後の最後まであきらめちゃだめ。
タクミの為……いえ、みんなの為よ。
タクミの姿に、アーサーの姿、ブレイクの姿に、レックスの姿、ネイトの姿、セーフィロの姿、そして一番傍で私を支えてくれたエヴァンの姿が脳裏によぎると、私は倒れそうになる体に渇を入れ、必死に支えていた。
何度も自分自身を叱咤しながらも、魔力を放ち続ける中……突然にグラリと大きく体が傾いた。
ダメ、倒れる……っっ。
疲れ切った体は、傾く体を立て直すことが出来ぬままに、土の上へと落ちていく。
そのまま放っていた魔法が歪みからずれそうになった瞬間に、私の体が大きな腕に支えられた。
ハッと顔を上げると、長いプラチナの髪が視界に映る。
「エヴァン!!」
「すみません。……あの歪みにある、防御魔法を壊せばいいのですか?」
彼の姿に私は深く頷くと、杖が私の前へ突き刺さる。
「杖に魔力を集めて下さい。手から放出するよりも、私の杖を通した方が魔力は集まりやすい。……二人の魔力であの歪みを一気に落としましょう」
彼の声に私はすぐに杖へ魔力を込めると、エヴァンの魔力と私の魔力が合わさっていく。
緑の光と、白い光が螺旋状に伸びていくと、歪みを一直線に突き刺さった。
するとバリバリバリッと何かがひび割れる音が荒野に響き渡る中、私は精一杯の魔力を杖へ集めていく。
絞り出す様に残り少ない魔力を杖に集めると、私は祈るように瞳を閉じた。
もう魔力は残っていない……自分の体を支えることもできない。
だが強風に流されそうになる私の体を、エヴァンは力強く支えてくれる。
その力に私は必死で脚に力を入れると、渇いた土をしっかりと踏みしめた。
「お願い……壊れて!!!」
そう叫んだ瞬間……バリンッと何かが砕ける音が響く。
蓄積された魔力が歪みから溢れ出し、大きな爆発となり爆風が起こった。
慌てて顔を上げると、歪みから粉々になった魔力の破片が、雪のように荒野に降り注いでいった。
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