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第四章
残された時間
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彼と闇の中を進み続ける中、ふと繋いでいる自分の右腕が霞んで見えた。
思わず二度見すると、目の錯覚だったのだろうか……腕は、はっきり目に映る。
気のせいかしら……。
暗い世界に居すぎて、目がおかしいのかしらね……。
私は軽く首を振り、眉間へ手をやると、違和感に気が付いた。
そっと瞼を持ち上げると、シルバーのリングから、小さな光が漏れだしている。
驚きのあまり、目を大きく見開きリングをじっと眺めていると、リングは細かい粒子となって徐々に徐々に浮かんでいった。
蒸発するかのようにどんどん粒子が溢れ始めると、リングの形がどんどん崩れ落ちていく。
その様子に目を反らすことが出来ない。
次第にリングの感触が消え去っていく様に、上手く呼吸することが出来なっていった。
なんで……リングが……どうして……?
そう頭の中に浮かんだ瞬間、この世界で出会った彼女の声が再生されていく。
(そのリングが消えてしまえば、それはゲームオーバーや)
ゲームオーバー。
即ちリングが消えてしまえば、私はもう戻ることが出来ない……。
チリチリになって消えていくリングに体が震え始めると、足が思う様に進まなくなっていく。
そんな私の様子に気が付いたのか、エヴァンはここへきて初めて立ち止まると、徐に振り返った。
彼の顔を見ることも出来ないまま私は頭を垂れると、左手を彼の前へ掲げて見せる。
「エヴァン……リングが……」
私は震える唇を必死に動かしながらボソボソと呟くと、エヴァンは私の腕を強く引っ張り、焦った様子で暗闇の中を駆けだしていく。
私は縺れそうになる脚を必死に動かしながら、道などない闇の中をエヴァンに連れられるままに、駆け抜けて行った。
涙が頬を伝う中、リングから光がこぼれると、道しるべのように後方へ落ちていく。
止めることもできぬままに、潤んだ瞳でリングを只々見つめるていると、エヴァンの声が耳に届いた。
「あそこです、あの歪みを抜ければ……もう少し……っっ」
その声に進む速度がさらに早くなると、息苦しさに肩が激しく揺れ動く。
それでも必死に足を進めていくと、視線の先に見覚えのある歪みが目に映った。
それは突然に……何もない空間にポッカリと亀裂が入っている。
バリバリバリッと雷電が響くと、歪みがゆっくりと塞がり始めていた。
歪みまであと少しというところまでやってくると……突然に強く握りしめられていた彼の温もりが、失われていく。
この感覚には覚えがある。
これは……消える前兆……。
あぁ……間に合わない……。
「はぁ、はぁ、はぁ、エヴァン……ごめんなさい。……もう時間がないみたい……」
歪みを目前に腕が、脚が……徐々に透明へと透けていく。
とうとう私は走り続けることが出来なくなると、彼の背を眺めるままに、その場に取り残された。
脚を動かそうと、腕を伸ばそうと試みるが……それはどこにもない。
エヴァンは焦った様子で振り返ると、悲し気に揺れるエメラルドの瞳と視線が絡んだ。
「……っっ、私は絶対に諦めません。今度こそ必ず一緒に戻るのですから!!!」
その声が響くと、彼は私の体を持ち上げようと手を伸ばした。
その姿に私も残っている手を伸ばしてみるが……もう彼を掴む事も触れる事も、感じる事もが出来ない。
彼の手が私の体をすり抜けていく中、歪みから激しい風が吹き始めた。
「ごめんなさい……エヴァン。私はいつも助けてもらってばっかりね……。でも来てくれて嬉しかった。もう一度あなたに出会えて、幸せだった。ありがとう」
エヴァンのローブが風で激しくたなびくと、彼の体が歪みへと引き寄せられていく。
彼は必死に何かを叫んでいるようだが、私にはもうその声を聞き取ることはが出来なかった。
風を感じることも、進むこともできぬままに、只々彼の姿を見送る中、彼の姿はどんどん遠ざかってい行く。
あぁ……もう少しだったのに……。
希望が絶望へと変わる中、彼は風に運ばれていくと、そのまま深い深い歪みの中へ落ちていく。
そんな中、薄れゆく左手に徐に視線を向けてみると、薬指についていたはずのシルバーリングは、跡形もなく消えてなくなっていた。
バリバリッと激しい音に顔を上げると、歪みがゆっくりと塞がっていく。
もう私は戻れないのだと……彼女が言っていたようにゲームオーバーなのだと悟ると、深い闇が私を包み込んでいった。
最後に彼に会えた。
それでよかったじゃない。
そう自分に言い聞かせてみるが、胸が……心が激しく痛み叫び始める。
一緒に戻りたかった。
あの世界へ戻って……彼の話を聞くはずだったのに……。
約束を果たしたかった。
いやよ、死にたくないわ……。
消えたくない!!!
私がそこにいた事実を……なかったことになんてしたくないの。
声に鳴らない悲鳴に支配されていく中、私の体が闇に溶け込んでいく。
このまま消えてしまう……そう思った刹那、ふと背中に温もりを感じた。
涙で視界が歪む中、徐に振り返ってみると……視線の先には、もう出会う事もない……そう思っていた彼の姿そこにあった。
思わず二度見すると、目の錯覚だったのだろうか……腕は、はっきり目に映る。
気のせいかしら……。
暗い世界に居すぎて、目がおかしいのかしらね……。
私は軽く首を振り、眉間へ手をやると、違和感に気が付いた。
そっと瞼を持ち上げると、シルバーのリングから、小さな光が漏れだしている。
驚きのあまり、目を大きく見開きリングをじっと眺めていると、リングは細かい粒子となって徐々に徐々に浮かんでいった。
蒸発するかのようにどんどん粒子が溢れ始めると、リングの形がどんどん崩れ落ちていく。
その様子に目を反らすことが出来ない。
次第にリングの感触が消え去っていく様に、上手く呼吸することが出来なっていった。
なんで……リングが……どうして……?
そう頭の中に浮かんだ瞬間、この世界で出会った彼女の声が再生されていく。
(そのリングが消えてしまえば、それはゲームオーバーや)
ゲームオーバー。
即ちリングが消えてしまえば、私はもう戻ることが出来ない……。
チリチリになって消えていくリングに体が震え始めると、足が思う様に進まなくなっていく。
そんな私の様子に気が付いたのか、エヴァンはここへきて初めて立ち止まると、徐に振り返った。
彼の顔を見ることも出来ないまま私は頭を垂れると、左手を彼の前へ掲げて見せる。
「エヴァン……リングが……」
私は震える唇を必死に動かしながらボソボソと呟くと、エヴァンは私の腕を強く引っ張り、焦った様子で暗闇の中を駆けだしていく。
私は縺れそうになる脚を必死に動かしながら、道などない闇の中をエヴァンに連れられるままに、駆け抜けて行った。
涙が頬を伝う中、リングから光がこぼれると、道しるべのように後方へ落ちていく。
止めることもできぬままに、潤んだ瞳でリングを只々見つめるていると、エヴァンの声が耳に届いた。
「あそこです、あの歪みを抜ければ……もう少し……っっ」
その声に進む速度がさらに早くなると、息苦しさに肩が激しく揺れ動く。
それでも必死に足を進めていくと、視線の先に見覚えのある歪みが目に映った。
それは突然に……何もない空間にポッカリと亀裂が入っている。
バリバリバリッと雷電が響くと、歪みがゆっくりと塞がり始めていた。
歪みまであと少しというところまでやってくると……突然に強く握りしめられていた彼の温もりが、失われていく。
この感覚には覚えがある。
これは……消える前兆……。
あぁ……間に合わない……。
「はぁ、はぁ、はぁ、エヴァン……ごめんなさい。……もう時間がないみたい……」
歪みを目前に腕が、脚が……徐々に透明へと透けていく。
とうとう私は走り続けることが出来なくなると、彼の背を眺めるままに、その場に取り残された。
脚を動かそうと、腕を伸ばそうと試みるが……それはどこにもない。
エヴァンは焦った様子で振り返ると、悲し気に揺れるエメラルドの瞳と視線が絡んだ。
「……っっ、私は絶対に諦めません。今度こそ必ず一緒に戻るのですから!!!」
その声が響くと、彼は私の体を持ち上げようと手を伸ばした。
その姿に私も残っている手を伸ばしてみるが……もう彼を掴む事も触れる事も、感じる事もが出来ない。
彼の手が私の体をすり抜けていく中、歪みから激しい風が吹き始めた。
「ごめんなさい……エヴァン。私はいつも助けてもらってばっかりね……。でも来てくれて嬉しかった。もう一度あなたに出会えて、幸せだった。ありがとう」
エヴァンのローブが風で激しくたなびくと、彼の体が歪みへと引き寄せられていく。
彼は必死に何かを叫んでいるようだが、私にはもうその声を聞き取ることはが出来なかった。
風を感じることも、進むこともできぬままに、只々彼の姿を見送る中、彼の姿はどんどん遠ざかってい行く。
あぁ……もう少しだったのに……。
希望が絶望へと変わる中、彼は風に運ばれていくと、そのまま深い深い歪みの中へ落ちていく。
そんな中、薄れゆく左手に徐に視線を向けてみると、薬指についていたはずのシルバーリングは、跡形もなく消えてなくなっていた。
バリバリッと激しい音に顔を上げると、歪みがゆっくりと塞がっていく。
もう私は戻れないのだと……彼女が言っていたようにゲームオーバーなのだと悟ると、深い闇が私を包み込んでいった。
最後に彼に会えた。
それでよかったじゃない。
そう自分に言い聞かせてみるが、胸が……心が激しく痛み叫び始める。
一緒に戻りたかった。
あの世界へ戻って……彼の話を聞くはずだったのに……。
約束を果たしたかった。
いやよ、死にたくないわ……。
消えたくない!!!
私がそこにいた事実を……なかったことになんてしたくないの。
声に鳴らない悲鳴に支配されていく中、私の体が闇に溶け込んでいく。
このまま消えてしまう……そう思った刹那、ふと背中に温もりを感じた。
涙で視界が歪む中、徐に振り返ってみると……視線の先には、もう出会う事もない……そう思っていた彼の姿そこにあった。
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