[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章4:異世界は突然に

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男は肩を広がらにズカズカと中へ入ってくると、扉の前にはもう一人別の男の姿が見える。
私は獣人の少年を床へ寝かせ立ち上がると、子供たちを守るように前へと進み出た。
しかし男はこちらには目もくれずに、子供達へと向かっていく。

「ちょっと待ちなさい、何をするつもりなの?」

「ふんっ、威勢のいい女だな」

男は楽しそうに笑うと、私へと顔を向け、こちらへと歩いてきた。
ニタニタと不気味に笑う男を冷たく睨み続ける中、彼は私を見下ろす様に冷めた瞳を浮かべる。

「子供を起こして、今すぐここから出ろ。逃げようなんて考えるなよ。逃げようとすれば……どうなるかわかるよな?」

男は強い口調でそう命令すると、懐からキラリと光るナイフを取り出した。
ギラギラと光るナイフへ自分の顔が映り込む中、私は素直に深く頷いて見せる。
私の様子に男は満足げに笑みを浮かべると、ナイフを懐へと戻していった。

男が離れていく姿を横目に、そっと開いた扉の先へ視線を向けてみると、どこかの街に着いた感じではなさそうだ。
薄暗い外は整備されていない道に、煩いほどの虫の声が響く中、私は慌てて子供たちを起こしていく。
子供たちは眠い目を擦りながらに体を起こすと、私は子供たちの手をしっかりと握り、ゆっくり外へ連れ出していった。

外へ出ると、そこは森の中だった。
肌寒い風を感じる中、木々が並び鬱蒼と茂る叢の先には小屋が見える。
知っている森ではなさそうね……。
私は子供たちと手を引きながらに辺りをじっくり見渡してみるが、ここがどこなのかさっぱり見当がつかない。
只言えることは……今まで訪れたどの場所よりも、魔力の量が少ないという事だけはわかる。
こんなに緑が溢れているのに……どうしてなのかしら。

そんな事を考えていると、男は私たちをせっつくように歩かせる。
そのまま寂れた小屋へと連れられて行くと、私たちは牢屋のような場所へ押し込まれた。
冷たい石畳に突き飛ばされ、寂れた鉄の棒が並ぶ中、男はギギッと音を立てながらに扉を閉めると、ガチャリと鍵が閉まる音が響きわたる。

するとコツコツと足音が響いたかと思うと、檻の前に数人の男が姿を現した。
今目の前にいる彼らを見る限りでも、5人の仲間がいるようだ。
きっとまだ他にもいるわよね……。

私は子供たちを檻の隅へと集め、男たちの視界から子供たち隠す様に庇うと、檻の向こう側を強く睨みつける。
そんな私の様子に男たちの嘲笑う声が耳に届く中、黄色いバンダナをした男が一歩足を踏み出すと、周りの男たちが道を空けていった。
バンダナから緑髪が見え、他の男達よりもひと際でかいその男は、アンバー色の瞳を細めながらに私たちを見下ろした。
腕から覗く筋肉を見る限り……殴られれば一発ノックアウトね……。
そんな男をじっと睨みつける中、バンダナの男は見定めるような視線を私へ向けると、ニヤリと口角をあげた。

「ほう、これは珍しいな。黒い髪に、黒い瞳か。いい拾い物した。それに容姿も申し分ない。これは高く売れるぞ」

腕を組み偉そうに話す男の言葉に、周りの男たちは同意を示していく。
その堂々とした態度、威圧感に……きっとこいつがリーダーで間違いない……。
でもこの男から……魔力を全然感じないわ。
周りの男達も同じ……ガタイが良く戦闘能力は高そうだが、この程度の魔力では、魔法を使えるとは思えない。
注意深く彼らを見つめていると、バンダナの男は檻へ背を向けると、近くの男を呼び寄せた。

「この女は店には下ろさねぇ、マニアの貴族に売れば高く買ってくれるだろう。……おい、お前、すぐに例の変態貴族へ連絡を取れ、明日街の娼婦館へ来いとな」

明日街へ……という事は、今日はここで夜を明かすのね。
なら彼らに襲撃をかけるチャンスは……寝静まってから。
でもきっと見張りはいるわよね……。
まぁ……でも凍らせてしまえば問題ないか。
あれやこれや考えを巡らせていると、男は凍り付くような鋭い視線を浮かべ、スッと目を細めながらに私を睨みつけた。

「おい女。逃げようなんて思うなよ。お前が逃げた時は、子供全員皆殺しだ。後は……おいお前ら、商品に手を出すことは許さねぇからな。もし手を出せば……その場で公開処刑だ」

低く脅す様な物言いに、思わず肩がビクッと跳ねる中、周りの男達も委縮するように同意を示していく。
逃げたら殺すか……。
でも逃げるつもりなんてない。
私は戦って……ここから脱出するのよ。
先ほど見た月は、まだ昇りきっていなかったわ。
夜が明けるまで、まだまだは時間ある。
慎重に行きましょう。

ようやく男たちが牢から去っていくと、虫の音に交じり、遠くの方から複数人の話し声が耳に届く。
聞こえる限り……結構な人数がいるようだ。
耳をじっと澄ませていると、黴臭く冷たい牢屋の中で、子供たちは怯え始めた。
私はそんな子供達へ振り返ると、ニッコリと笑みを浮かべて見せる。

「大丈夫よ。お姉さんが絶対に助けるからね」

「うぅっ……本当に?」

「パパ……ママ……ヒィック、ウゥゥッ」

今にも泣きだしそうな子供たちをあやす中、檻の隅には先ほどの獣人と言われた少年が小さく丸まっていた。

「君もこっちへおいで、大丈夫だから」

そう声をかけてみると、獣人に対して良くない印象を持った女の子が、顔を背けながらに私の傍から離れていく。
そんな彼女の様子に小さく息を吐きだすと、私は子供達から体を離し、少年の横へと腰かけた。
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