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第五章
新章5:異世界は突然に
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私が隣へ腰かけると、獣人の少年はパッと顔を上げながらに、ふさふさの尻尾をフリフリと揺らしていた。
これは……可愛すぎでしょう……っっ。
その可愛らしい姿に思わず抱きしめたい衝動がこみ上げてくると、私は必死にそれを抑え込む。
ダメよ……そんなにグイグイいってしまっては……。
だってこの子は、人間に怯えているように見えるわ。
ここは慎重にコミュニケーションをとっていかないと……。
私は心を落ち着かせるように、その場で大きく深呼吸を繰り返すと、少年へニッコリと笑みを浮かべた。
「人間は怖いかしら……?」
そう問いかけてみると、少年は頭を垂れながらに小さく頷いた。
先ほど殴らないでと言っていたし……彼は人間から暴力をうけていたのだろう。
私はそっと彼の髪へと触れてみると、少年の肩が小さく跳ねる。
怖くないよと思い込めて優しく撫でてみると、少年は徐に顔を上げ、私を見上げるように視線を向けた。
「……人間は怖い……でもお姉さんは怖くない……」
澄んだグレーの瞳がウルウルと揺れる姿に、思わず手が伸びると、気づいた時には私は少年を抱きしめていた。
突然の事に体を硬直させた少年の様子に慌てて体を離すと、澄んだグレーの瞳を覗き込む。
「ごめんなさい。あまりに可愛かったから……ついね……」
すると少年は目を大きく見開いたかと思うと、頬を染めながらに、照れた様子で笑みを返してくれた。
そうして牢屋で子供達と過ごす中、どれぐらい時間がたったのだろうか……隙間風が牢屋に入り、肌寒さを感じる。
その風にのって、美味しそうな匂いが鼻を掠めると、グゥ~と小さく腹の虫が鳴いた。
子供達も空腹なのだろう……お腹を押さえながらに、悲しそうな表情を浮かべている。
しかし……ここへ食事が運ばれてくる気配はない。
まぁ……それはそうでしょうね。
一日ぐらい食事を抜いたとしても、人間は死なないし。
明日商品として売るつもりなのだから、わざわざ食事を与える必要もないわ。
外からはガヤガヤとどんちゃん騒ぎをしているだろうか……男たちの笑い声や、楽しそうな声が耳に届く。
はぁ……一体何をしているのかしらね……。
通常であれば彼らはきっと追われる身のはず。
人身売買なんて事をして、捕まらないはずないわ。
この場所がどこかはわからないけれど、これだけ騒げるところを見ると、安全な場所なのだろう。
そんな事を考えていると、コツコツコツと足音が響き渡った。
私はスッと立ち上がり錆びた鉄格子の傍へ寄ると、そこには二人のシルエットが目に映る。
何やら瓶を片手に千鳥足で歩く男は、檻の前に立ち止まると、私を舐め回す様な視線を向けた。
「おい、お前俺の相手をしろ」
酒臭いその息に顔を歪める中、私は強く男を睨みつけると、小さく口を開いた。
「……さっきあなた達のボスが、商品に手を出すなと言っていたんじゃないの」
「ああぁ!!!見つからなきゃいいんだよ。あんた処女じゃないだろう?なら何の問題もない。襲ってもわからないんだからなぁ。ガハハハッ」
碌でもないやつね……。
私は深いため息をつくと、後ろから別の男がほろ酔いの様子で、牢へと顔を向けていた。
「俺はそっちのかわいこちゃんに相手してもらおうかな。グヘヘヘ」
ゲスな笑いを浮かべながらに、牢屋にいる女の子へ視線を向けると、彼女の顔が真っ青に染まっていく。
ガタガタと体を震わせる姿を、男は楽しそうに眺めると、懐から牢屋のカギを取り出した。
ガチャと鍵が開く音が響くと、ギギギッと音を立てながらに扉が開け、男は彼女へ元へゆっくりと近づいていく。
「待ちなさいよ。私があなた達の二人、まとめて相手をしてあげるわ」
彼女へ伸ばさそうになる咄嗟に手を掴むと、私はローブを脱ぎ捨て肌を男へ見せつける。
「ほう、良い体してんじゃねぇか。これは楽しめそうだ。ほらっ、さっさと出ろ」
男はマジマジと私の姿を眺めると、ゲスな笑いを浮かべたままに私の腕を拘束していく。
手首をロープで硬く縛られると、鈍い痛みが走った。
何だかこんな事ばかり起こるわね……。
そう心の中で呆れる中、そのまま強引に開け放たれた扉へと連れ出されると、二人から香る強烈なアルコールの匂いに、頭が痛くなっていく。
ここでロープを解いてすぐにでも凍らせてやりたいが……まだ早い。
きっと彼らはボスからも仲間からも離れた場所へ、私を連れて行くのだろう。
その時に……それに色々と聞きたい事もあるしね。
男達はロープを強く引っ張ると、こけそうになりながらも私は足を進めていく。
すると獣人の少年が私の元へ走り寄ると、引き留めるように服の裾を握りしめた。
「お姉さん……ダメだよ……。行かないで……」
怯えながら震える声でそう呟く姿に、一気に頭痛が吹き飛んでいく。
それに同意するように、先ほど指名され震えていた女の子も私の傍へ来ると、縋りつくように体を寄せた。
私はそんな二人へ優しい笑みを浮かべて見せると、深く頷いて見せる。
「ありがとう。でも私は大丈夫よ、心配しないで。すぐに戻って来るから、ここで待っていてくれる。それまでみんなの事をよろしくね」
そう優しく諭すと、獣人の少年は今にも泣きだしそうにクシャクシャに顔を歪めた。
「ははっ、すぐ戻るだってよ~」
「面白れぇ~、グチャグチャになるまで相手してもらおうぜ」
男の笑い声が木霊する中、私はそのまま男達へ連れて行かれると、牢屋から少女の泣き声が微かに耳に届いた。
これは……可愛すぎでしょう……っっ。
その可愛らしい姿に思わず抱きしめたい衝動がこみ上げてくると、私は必死にそれを抑え込む。
ダメよ……そんなにグイグイいってしまっては……。
だってこの子は、人間に怯えているように見えるわ。
ここは慎重にコミュニケーションをとっていかないと……。
私は心を落ち着かせるように、その場で大きく深呼吸を繰り返すと、少年へニッコリと笑みを浮かべた。
「人間は怖いかしら……?」
そう問いかけてみると、少年は頭を垂れながらに小さく頷いた。
先ほど殴らないでと言っていたし……彼は人間から暴力をうけていたのだろう。
私はそっと彼の髪へと触れてみると、少年の肩が小さく跳ねる。
怖くないよと思い込めて優しく撫でてみると、少年は徐に顔を上げ、私を見上げるように視線を向けた。
「……人間は怖い……でもお姉さんは怖くない……」
澄んだグレーの瞳がウルウルと揺れる姿に、思わず手が伸びると、気づいた時には私は少年を抱きしめていた。
突然の事に体を硬直させた少年の様子に慌てて体を離すと、澄んだグレーの瞳を覗き込む。
「ごめんなさい。あまりに可愛かったから……ついね……」
すると少年は目を大きく見開いたかと思うと、頬を染めながらに、照れた様子で笑みを返してくれた。
そうして牢屋で子供達と過ごす中、どれぐらい時間がたったのだろうか……隙間風が牢屋に入り、肌寒さを感じる。
その風にのって、美味しそうな匂いが鼻を掠めると、グゥ~と小さく腹の虫が鳴いた。
子供達も空腹なのだろう……お腹を押さえながらに、悲しそうな表情を浮かべている。
しかし……ここへ食事が運ばれてくる気配はない。
まぁ……それはそうでしょうね。
一日ぐらい食事を抜いたとしても、人間は死なないし。
明日商品として売るつもりなのだから、わざわざ食事を与える必要もないわ。
外からはガヤガヤとどんちゃん騒ぎをしているだろうか……男たちの笑い声や、楽しそうな声が耳に届く。
はぁ……一体何をしているのかしらね……。
通常であれば彼らはきっと追われる身のはず。
人身売買なんて事をして、捕まらないはずないわ。
この場所がどこかはわからないけれど、これだけ騒げるところを見ると、安全な場所なのだろう。
そんな事を考えていると、コツコツコツと足音が響き渡った。
私はスッと立ち上がり錆びた鉄格子の傍へ寄ると、そこには二人のシルエットが目に映る。
何やら瓶を片手に千鳥足で歩く男は、檻の前に立ち止まると、私を舐め回す様な視線を向けた。
「おい、お前俺の相手をしろ」
酒臭いその息に顔を歪める中、私は強く男を睨みつけると、小さく口を開いた。
「……さっきあなた達のボスが、商品に手を出すなと言っていたんじゃないの」
「ああぁ!!!見つからなきゃいいんだよ。あんた処女じゃないだろう?なら何の問題もない。襲ってもわからないんだからなぁ。ガハハハッ」
碌でもないやつね……。
私は深いため息をつくと、後ろから別の男がほろ酔いの様子で、牢へと顔を向けていた。
「俺はそっちのかわいこちゃんに相手してもらおうかな。グヘヘヘ」
ゲスな笑いを浮かべながらに、牢屋にいる女の子へ視線を向けると、彼女の顔が真っ青に染まっていく。
ガタガタと体を震わせる姿を、男は楽しそうに眺めると、懐から牢屋のカギを取り出した。
ガチャと鍵が開く音が響くと、ギギギッと音を立てながらに扉が開け、男は彼女へ元へゆっくりと近づいていく。
「待ちなさいよ。私があなた達の二人、まとめて相手をしてあげるわ」
彼女へ伸ばさそうになる咄嗟に手を掴むと、私はローブを脱ぎ捨て肌を男へ見せつける。
「ほう、良い体してんじゃねぇか。これは楽しめそうだ。ほらっ、さっさと出ろ」
男はマジマジと私の姿を眺めると、ゲスな笑いを浮かべたままに私の腕を拘束していく。
手首をロープで硬く縛られると、鈍い痛みが走った。
何だかこんな事ばかり起こるわね……。
そう心の中で呆れる中、そのまま強引に開け放たれた扉へと連れ出されると、二人から香る強烈なアルコールの匂いに、頭が痛くなっていく。
ここでロープを解いてすぐにでも凍らせてやりたいが……まだ早い。
きっと彼らはボスからも仲間からも離れた場所へ、私を連れて行くのだろう。
その時に……それに色々と聞きたい事もあるしね。
男達はロープを強く引っ張ると、こけそうになりながらも私は足を進めていく。
すると獣人の少年が私の元へ走り寄ると、引き留めるように服の裾を握りしめた。
「お姉さん……ダメだよ……。行かないで……」
怯えながら震える声でそう呟く姿に、一気に頭痛が吹き飛んでいく。
それに同意するように、先ほど指名され震えていた女の子も私の傍へ来ると、縋りつくように体を寄せた。
私はそんな二人へ優しい笑みを浮かべて見せると、深く頷いて見せる。
「ありがとう。でも私は大丈夫よ、心配しないで。すぐに戻って来るから、ここで待っていてくれる。それまでみんなの事をよろしくね」
そう優しく諭すと、獣人の少年は今にも泣きだしそうにクシャクシャに顔を歪めた。
「ははっ、すぐ戻るだってよ~」
「面白れぇ~、グチャグチャになるまで相手してもらおうぜ」
男の笑い声が木霊する中、私はそのまま男達へ連れて行かれると、牢屋から少女の泣き声が微かに耳に届いた。
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