[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章5:ランギの街で

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昼食を食べ終え、大通りへ戻ろうとすると、まだ人が多く集まりざわざわと騒がしい。
先ほどの女の仲間なのだろうか……この辺りをキョロキョロと探し回る人影が目に付くと、私たちは身をひそめながらにしばらく広場で休んでいた。
何気ないお話をしながらに様子を覗っていると、気がつけば太陽は幾分傾いていた。

諦めたのだろうか……キョロキョロとこの辺りをうろついていた人影がなくなり、私は先ほどの大通りへと視線を向けると、人の通りが大分少なくなってきていた。
その様子に私はシナンの手をしっかり握りしめると、行きましょうかと微笑みかけ、広場を後にした。


そうして買い物の続きを終え、日が暮れ始める中、私たちは無事に家へ帰ってきたが……カミールはまだ戻っていないようだ。
時機に戻って来るわよね……。
部屋に入り、購入した荷物を片づけると、シナンに今日買った服を着させてみる。
シナンはモジモジと恥ずかしそうに新しい服へ袖を通すと、サイズはピッタリで淡い緑色のブリオー姿は、とてもよく似合っていた。
可愛いわぁ……、でも18歳の子に可愛いは禁句かしらね……。
私はそっと言葉を飲み込むと、とても似合っているわとシナンへ微笑みかけた。

家事をしながらに、和気あいあいシナンと過ごしていると、外はどっぷりと日が暮れ黒い影が辺りを包み込み始める。
そんな中、カミールは未だ戻って来てはいなかった。
まさか今日は戻って来ないとか……?
う~ん、明日は仕事があるのかしらねぇ……?
とりあえず……あってもいいように、いつも通りに準備しておいたほうがいいわよね。

そんな事を考えならがに、シナンと一緒に晩御飯の準備をしている、バタンと大きな音と共に、カミールが帰宅した。
彼はリビングに入って来るや否や、明日早朝から仕事だ、と一言そう言い放つと、すぐに2階へと消えていく。
いつもと同じ不愛想な彼の様子に、私は軽く息を吐きだすと、振り返ることなくシナンと夕食の準備を進めて行った。



そうして夕食を終え、湯あみをすませると、私たちは二階へと上がっていく。
向かいにあるカミールの部屋からは物音一つしない。
もう寝てしまったのかしら……。
カミール部屋の扉を横目に、私は自分の部屋の扉を開けると、シナンがそそくさと寝支度を始めている。
そんなシナンの傍へ寄ると、私は彼を引き留めるようにそっと肩に手を添えた。

「シナン、今まで子供扱いしてしまっていたけれど……もし私と一緒に寝ることに、抵抗があるのなら言ってね。私がソファーで眠るから」

そうニッコリ笑みを浮かべて見せると、シナンはとんでもないというように激しく首を横に振った。

「僕は全然大丈夫です!!!でも……お姉さんが嫌なら、僕がソファーで寝ます!そこは絶対に譲れませんから!」

シナンは勢いよく顔を上げると、布団を手にしたままに、パタパタとソファーへと一目散に走っていく。
その姿に自然と笑みが零れ落ちると、私は逃げていくシナンの体を優しく抱き留めた。

「私は全然構わないわ。シナンと寝るとね……とっても落ち着くの」

「ぼっ、僕も……です。お姉さんと寝ると……いぇ……何でもないです」

顔を真っ赤に俯くシナンの姿に、私は軽く彼の手を引っ張ると、ベッドへと誘っていく。
そうしていつもと同じように二人でベッドへ並ぶと、私はすぐにまどろみの世界へとおちていった。


ポツ、ポツ、ポツと何かが落ちる音が聞こえる。

それは水面に落ちる水滴のようで……規則正しく鳴り響く。

次第に音が大きくなり、ぼんやりとする意識の中、そっと目を開けた瞬間……覚えのある感覚に襲われた。

脳が激しく揺れ、体ごと何か強い力に引っ張られていく。

抗う事も出来ぬほどの激しい揺れ、そして浮遊感。

なに……?これ……!?

この揺れ……きっ……気持ち悪い……。

そう頭をよぎると、最初にこの世界へ召喚された時の自分の姿が甦った。

違う……これは……。

そう思った瞬間に大きく目を開くと……目の前が真っ白に染まっていった。


ふと気が付くと、見覚えのある広場が目の前に広がっていた。
今日シナンと訪れた……あの大きな広場。
そっと自分を見下ろすと、私はローブ姿に、青いベンチに一人で腰かけている。
徐に顔を上げると、いつも人が賑わう大通りには……誰の姿はない。
シーン静まり、動くものが何もないその風景は……まるで写真のようだ。
私は周辺へ意識を向けてみると、風もなければ虫の音すらも聞こえない……。
そんな不自然な光景に、腕を強く抓ってみる。
すると痛みは全く感じなかった。
……あぁ……これは夢なのね……。

私はゆっくりとベンチから立ち上がり、土を踏みしめてみると、芝生の感触はなく、音も何も聞こえない。
徐に天を見上げると、辺りは明るいはすなのに……空には太陽ではなく、大きな満月が浮かび、私を強く照らしていた。
そんな不自然で幻想的な空を見上げ呆然と立ち尽くしていると、突然足元が光始めた。

そこに膨大な魔力を感じ、私は慌ててその場から逃げようとするが、なぜか体が動かない。
光は次第に大きくなり、私自身を包んでいく中、思わず目を閉じ蹲ると、あったかい何かが微かに肌に触れた。
私は身構え小さく体を震わせている中、しばらくすると魔力が次第に弱まっていくのを感じる。
恐る恐る瞼を持ち上げてみると、そこに薄っすらと人影が浮かび上がった。
足元の光が徐々に弱くなり、人影が映し出されると、私は必死に目を凝らしていった。
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