[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章4:名の売れた魔法使い

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はぁ……、何とか乗り切ったわね……。
最初はどうなることかと思っていたけれど……何とか勝つことが出来た。
これで金貨1枚か……。
う~ん……こんな見世物みたいに戦うのは、もう懲り懲りだわ……。
大森上利の歓声が轟く中、ピリピリと痛む肩を押さえながらに外へ出ると、そこにカミールの姿があった。

「おつかれ、よくやったな。肩……見せてみろ?」

カミールは強引に私を引き寄せると、赤く滲む腕を覗き込んだ。

「大丈夫、そんなに深い傷じゃないわ。それよりもそうやって心配してくれるのなら、初めから戦わせないでよね。……本当に大変だったんだから。はぁ……もう今後一切こういった場で試合なんてしないわよ!」

私は壮大にため息をつくと、カミールの腕を振り払り、パックリと割れた傷へ魔力を流す。
体が魔力を弾いてしまう為治療することはできないが……血を軽く魔法で洗い流し止血すると、私はカミールを鋭く睨みつけた。
すると彼は珍しく……なぜか楽しそうに笑ってみせる。
その姿はまるで完成された絵画のように美しく、思わず見惚れてしまった。
口を半開きのままに彼を見つめ続けていると……優しい眼差しと視線が絡む。

「あっ、なっ、どうしたの……!?」

「ははっ、いや……、お前本当に面白いな。よしっ、もうここには用はない、行くぞ」

そう言いながらに彼は私から体を離すと、出口へと向かっていく。
その姿に慌てて追いかけると、遠くから鳴り響く歓声が小さくなっていった。


そうして会場を出ると、カミールはそのまま大通りへと進んでいく。
人ごみに紛れるように歩く彼の隣へ並んでみると、どうもご機嫌の様子だ。
こんな穏やかな雰囲気をした彼、初めて見るわね……。
いつもと違う彼の様子に戸惑う中、私は小さく口を開くと、彼へ視線を投げた。

「ねぇ、どこへ行くのかしら?」

「うん、そうだな……、今日はこれで終わりだ。目標の金額も集まった事だし、飯でも食いにいくか?」

突然の誘いに目が点になると、彼はニヤリと口角を上げながらに私を見下ろした。
なにっ……!?
どうしたのかしら……食事の誘いなんて珍しい。
いえ、こんなこと一緒に行動して初めてね……。
何か企んでいるのとか……。
チラチラと様子を覗うように視線を向けていると、また彼は楽しそうに笑って見せる。
何とも言えないむず痒い雰囲気が漂う中、私たちは商店街へ到着すると、カミールは迷うことなく進んでいった。

人が賑わう商店街には、精肉店、八百屋、魚屋、雑貨屋など様々な店が連なっている。
キョロキョロと辺りを見渡しながらに進んでいると、以前シナンと訪れた子供服店が目に映った。
ショーケースにはフリフリとした可愛らしい子供服が展示されている。

そのまま通りを歩いていくと、彼はこじんまりとしたお店の前で立ち止まったかと思うと、中へ入っていった。
外観はオシャレなカフェのようで、入口には木製の看板が置かれ、そこには【今日のオススメ・ヤイ&トゥンダ】と大きな文字と書かれている。

看板を横目にカランカランと音と共に入店すると、中は人でにぎわっていた。
レトロな雰囲気の装飾に、壁には絵画がいくつも飾られている。
ガヤガヤと騒がしい店内の中、空いている席を見つけると、カミールはそこへ腰かけた。
その姿に続くように向かいの席へ座ってみると、エメラルドの瞳と視線が絡んだ。
揺れるその澄んだ瞳から逃れるように思わず視線を落とすと、カミールは歩いている店員を捕まえた。

店員が傍へやってくると、テーブルに置かれていたメニュー表らしきものを開き、注文していく。
聞いたことがない言葉をぼうっと聞き流していると、彼がこちらへ視線を向けた。

「……で、これとこれ~~、あんたはどうする?」

エメラルドの瞳と視線が絡み小さく肩を揺らすと、彼は私の前にメニュー表を広げて見せる。
慌てて覗き込むと、そこにはカラフルな見たこともない料理のイラストが描かれ、聞いたことがない料理名がズラリと並んでいた。
……さっぱりわからないわね……。
とりあえずここは……。

「おっ、同じので……お願いします」

おずおずとそう呟くと店員は、はいと笑みを浮かべながらに去っていった。


そうして料理を待つこと数十分……ようやく料理がやってきたかと思うと、次々にテーブルへ並べられていく。
香ばしい香りの真っ赤な肉っぽいものや、水色のソースがかかった魚っぽいもの。
餃子のような半月型で、オレンジの皮に包まれた食べ物に、甘い香りが漂う正方形のデザート……?
次々に並べられていく料理の数々に唖然とする中、テーブルが料理で埋め尽くされると、ようやく店員が去っていった。

「えっ、……こんなに!?」

「なんだ、俺の注文を聞かずに同じのといったのか?」

コクリと気まずげに頷いて見せると、カミールはあきれた様子を浮かべてみせる。
うぅ……とりあえず食べられるだけ頑張りましょう。
私はサイドに置かれていたフォークとナイフを持つと、目の前に並べられた鮮やかな緑の魚っぽい物を切り分けていく。
切った感じ鯛のようにふわっとしており、水色のソースを少しつけて口へと運ぶと、香ばしい香りが鼻をくすぐった。
淡泊な味わいは私の知る白身魚と同じ。
程よい酸味に、ワインの香りが口の中で広がると、心がほっと温かくなっていった。

「美味しいわ」

そうニッコリと顔を上げてみると、彼それはよかったと小さく笑みを浮かべていた。






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★お知らせ★
いつもご愛読頂きありがとうございます。
またまた玉子様(@tamagokikaku)よりイラストを頂くことが出来ましたので使用させて頂きました(*'ω'*)
『新章5:ランギの街で』へ挿絵を追加しております。
また登場人物紹介更新及び、挿絵を追加しておりますので、見て頂けると嬉しいです(*'▽')

本当にいつもありがとうございます( *´艸`)
感謝の気持ちでいっぱいです!
PS.まさかチビキャラになると、カミールが可愛く見えるようになるとは思っておりませんでした(笑)
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